涼しげ「撫川うちわ」制作ピーク 岡山の工房 花鳥風月を描く

うちわの出来栄えを確かめる平松会長(左)と石原さん

 岡山県郷土伝統的工芸品「撫川うちわ」の制作が最盛期を迎え、岡山市北区の石原文雄さん(85)の工房では、花鳥風月を描いた涼しげなうちわが並んでいる。

 江戸時代に三河(現愛知県)から伝わったとされ、岡山市西部の庭瀬、撫川地区で盛んに作られた。光にかざすとアジサイやホタルの絵柄が浮き上がる「すかし」や、一筆書きした松尾芭蕉らの俳句の文字を雲の形に見立てる「歌つぎ」などの技法を特長とする。

 現在の職人は保存会「三杉堂」の平松龍四郎(たつしろう)会長(82)=岡山市北区=と石原さんのみ。絵付けした紙を和紙で挟み、竹の骨組みに貼って透かしを施す最終工程の「紙貼り」作業を続けている。

 岡山県内の特産品を扱う「晴れの国おかやま館」(同表町)で1本1万円前後で販売。新型コロナウイルスによる観光客の減少でこの3年は受注が低迷していたが、今夏はほぼ倍増したという。石原さんは「ファンを増やし、地元の工芸品を後世に残したい」と話す。

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