つくばエクスプレス、県内延伸は土浦方面に 茨城県

つくばエクスプレスは東京都の秋葉原駅~茨城県のつくば駅を結んでいます(写真:K.O / PIXTA)

茨城県は23日、つくばエクスプレス(TX)の県内延伸について、土浦方面に決定したと発表しました。JR常磐線との接続駅は土浦駅とし、県内延伸構想の具体化に向けた検討を進めていきます。

つくばエクスプレスの県内延伸については、これまで「水戸方面」「筑波山方面」「茨城空港方面」「土浦方面」の4案が検討されてきました。この中で最も有力視されていたのが土浦方面です。

県は5月1日から30日にかけてパブリックコメントを募集。結果、個人262名/法人・団体21団体の計283名/団体から540件の意見が提出されました。

パブリックコメントを寄せた人・団体のうち、県内延伸への賛成は82%。延伸方面については土浦方面が最多(31%)で、茨城空港方面(19%)、水戸方面(6%)、筑波山方面(5%)と続きました。

県はこうした延伸方面に対する意見や延伸の進め方、また採算性やB/Cの面で実現可能性の低さを指摘する反対意見などを踏まえ、次のように判断したといいます。

「土浦以外に茨城空港を延伸方面とする意見も含め、延伸に賛成する意見や今後の進め方について多くの意見が寄せられたことから、今後の県勢発展に必要な事業として大きな期待が確認できた」

「延伸を実現させていくためには、もっとも実現可能性のある延伸先を選定し、その実現可能性を高めていくことが県として最善の方針である」

また、茨城空港方面への県民の期待の高さも考慮し、土浦延伸実現後は空港の着陸制限の緩和などで空港を取りまく状況が変化した場合、改めて茨城空港延伸について議論するとしています。

県は今後、県内延伸の実現に向け、採算性確保に向けた方策の調査・検討(フェーズ1)、関係者との調整や素案のブラッシュアップ(フェーズ2)を経て、具体的な計画内容の決定(フェーズ3)へと3段階に分け進めていきます。

パブリックコメントとして寄せられた主な意見

茨城県の発表資料から、寄せられたパブリックコメントを抜粋します。全体の傾向としては先に述べた通り県内延伸賛成が多数派ですが、採算性に課題が残ることを疑問視される方も散見される状況です。また、延伸先については土浦が圧倒的というわけではなく、観光客やインバウンド需要の取り込みなどから「茨城空港方面」を推す声も目立ちます。

パブリックコメントの結果(画像:茨城県)
パブリックコメントの結果(画像:茨城県)

県内延伸方面に対する意見

◆土浦方面とする意見

・4方面の中で、費用がかからず実現可能性が高い。
・公共交通のサービスレベル向上に繋がる。
・事故・災害時のリダンダンシー(代替性)の確保に繋がる。
・土浦を中心に新たな沿線開発が期待でき、地域活性化に寄与する。
・将来的には茨城空港延伸にも繋がる。

◆茨城空港方面とする意見

・茨城空港、TX双方の利用促進に繋がる。
・県全体にTX延伸効果が波及する。
・国内外の観光客、特にインバウンド需要の取り込みが期待できる。
・茨城空港の今後の機能拡張に繋がる。

◆水戸方面とする意見

・県全体の発展に繋がる。
・つくばと水戸の交流拡大に繋がる。
・茨城空港延伸とセットで考える必要がある。
・リダンダンシー(代替性)確保に繋がる。

◆筑波山方面とする意見

・更なる観光発展に繋がる。
・通勤通学エリアが広がり、移住促進にも繋がる。

県内延伸の今後の進め方に対する意見

◆議論すべき内容

・将来につながるルート・駅の設定が必要である。
・B/C(費用対効果)、採算性の再シミュレーションが必要である。
・利便性の向上のため、相互乗り入れの検討が必要である。
・コスト削減策の検討が必要である。
・TX、JRの賛同に向けた取組が必要である。

◆議論の進め方

・多様なメンバー(沿線自治体、国、関連事業者、専門家等)での協議を進めるべきである。
・住民全体による盛り上がりが必要である。

県内延伸に反対する意見

◆延伸自体への反対意見

・採算性に乏しく赤字となる延伸は必要ない。
・利便性向上が見られず、需要が拡大しない。
・今後の沿線開発が期待できない。
・B/C(費用対効果)が1以下でもあることから、事業として不適格である

◆東京方面を優先する意見

・全国各地への大幅な利便性向上に繋がる。
・現在の契機を逃さず東京延伸を実現することが必要。

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