夏の暑い日に、建物の日陰を通る時よりも、木陰の方がヒンヤリするワケとは?【図解 植物の話】

水蒸気を吐き出す、葉の蒸散作用の効果

夏の暑い日に、木陰の下を通ると、建物の日陰を通る時よりもずいぶん涼しく感じます。これは葉の蒸散作用という、水蒸気を吐き出す働きによります。水蒸気はおもに葉の裏に多くある気孔という目に見えない穴から出ています。恒温動物のほ乳類や鳥類は、気温が高いときは発汗や呼吸を盛んにして放熱し、逆に低いときは体表の血管を収縮させて放熱を防ぐなど、体温をいつもほぼ一定に調節しています。ところが植物にはそういう仕組みがありませんので、夏は盛んに蒸散して葉の温度を下げ、冬の寒さには細胞の質を変えることで対応しています。では、蒸散はどのように行われるのでしょうか。たとえば、水分を多く含んだ洗濯物は、晴れた日には数時間で乾きます。これは周りの水蒸気濃度が洗濯物の水分濃度より低いからです。濃度の高いところから低いところへと水分が移動して乾くわけです。

これと同じ理屈で、植物の蒸散は、水分濃度の高い葉の中から濃度の低い外に向かい、気孔から水蒸気として出ていくのです。すると日光に照らされて温度が高くなっている葉の全体の温度が低くなり、木陰にいると涼しく感じることになります。蒸散によって植物は水分を失いますが、失った分はどのように補給しているのでしょうか。植物は水分を根から吸収し、「導管」という水分の通り道を使って体全体に水分を供給しています。導管は葉の中にも張りめぐらされていて、葉脈の中にあります。気孔はいわば水道の蛇口のようなもので、これが開くと蒸散し、閉じると蒸散しません。砂漠のサボテンなどは、暑い日中は、水分を失わないように気孔を閉じて、蒸散を防いでいます。

『図解 植物の話』はこんな人におすすめ!

・光合成はなぜ必要なのか? ・葉と花はどんな関係にあるの? ・今こそもっと植物の世界を知りたい!
と感じている方には大変おすすめな本です。

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図解シリーズは、文章と分かりやすい図で解説という形で構成されているので、本が苦手な人にも理解しやすい内容です。

図解シリーズには、健康・実用だけではなく大人の学びなおしにピッタリな教養のテーマも満載。さくっと読めてしまうのに、しっかりとした専門家の知識を身につけることができるのが最大の魅力です!

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植物にも血液型があるってホント?

わたしたちの体を流れる血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンを調べると、分子が植物の葉緑素、クロロフィルとそっくりです。違うのは、真ん中にある元素がヘモグロビンは鉄、クロロフィルはマグネシウム、たったそれだけの差です。それなら植物には、人間と同じような血液型があるのでしょうか。じつは、血液型をもつ植物はけっこうあります。人間の血液中は血中の「糖たんぱく」の種類で決まります。1割くらいの植物は、人間と似た糖たんぱくをもっていることが知られています。植物の血液検査の結果、O型やAB型が多く、たとえばダイコンやキャベツはO型、ソバはAB型となるそうです。植物を切っても動物のように出血しませんが、動物と植物の基本的な生き方には似たところがあります。マメ科植物には、ヘモグロビンに似たクロロフィルのほかに、レグヘモグロビンがあります。名前からわかるように、レグヘモグロビンはヘモグロビンに似た働きをします。それは両者ともに酸素を運ぶ役割をしていることです。

では、レグヘモグロビンはいつ酸素を運ぶのか。まず、マメ科植物には根に丸い「根粒」とよばれるコブがたくさんあります。この中に「根粒菌」というバクテリアがいて、空気中から窒素をマメ科植物に供給します。代わりにマメ科植物は、根粒菌にすみかと栄養分提供しますから、マメ科植物と根粒菌は「共生」という互いに利益を得る関係です。しかし、根粒菌が窒素固定をするときにジレンマが生じます。根粒菌は窒素固定に必要なエネルギーを確保するために酸素呼吸をしますが、窒素固定に必要な酵素は、酸素があると活性を失うのです。そこで、マメ科植物はレグヘモグロビンを根粒菌に送って、素早く余分な酸素を運んで取り除きます。

★葉っぱの形が植物によって違うのはなぜ? ★なぜ春先に花粉症になるのか ★植物はどうやってあちこちに子孫を増やすの? ★光合成をしない植物も存在する?
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執筆者プロフィール
植物学者・静岡大学教授。1993年、岡山大学大学院農学研究科(当時)修了。農学博士。専攻は雑草生態学。1993年農林水産省入省。1995年静岡県入庁、農林技術研究所などを経て、2013年より静岡大学大学院教授。研究分野は農業生態学、雑草科学。

【書誌情報】 『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』 稲垣 栄洋

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