夏の行事食「夏越(なごし)ごはん」がじわり浸透し、洋風アレンジやご当地食材を活用した新商品が登場している。米の一大消費イベントに育てようと米穀機構が企画して、今年で9年目。百貨店やスーパーなど全国500店舗余りで提供される見通し。給食や社食にも広がりを見せている。
「江戸っ子カフェーマスマス」の洋風アレンジ夏越ごはん(同機構提供)
夏越ごはんは、6月30日に残り半年の無病息災を祈る神事「夏越の祓(はらえ)」にちなんだ行事食。神事に使う茅(ち)の輪をイメージして夏野菜を丸く調理したものを、雑穀ご飯に載せる。
当初は夏野菜のかき揚げを使ったものが中心だったが、洋風やエスニック風にアレンジする動きも出てきた。
東京都千代田区の神田明神に隣接する「江戸っ子カフェ-マスマス」は、イカのフライにタルタルソースなどをトッピングした夏越ごはんを販売する。たっぷりの夏野菜の上に、茅の輪に見立てたイカリングを、縁起の良い数字の3にちなんで三段に重ねた。
社食や給食を提供するニッコクトラスト(東京都中央区)は、北信越地方の6カ所の食堂で夏越ごはんを提供。タイ料理のガパオライス風や、キーマカレー風に仕上げた。
そごう・西武(東京都豊島区)は全国8店舗で、ご当地食材を使った夏越かき揚げ丼を販売する。広島店(広島市)では安芸津町産のジャガイモ、大宮店(さいたま市)では埼玉県産の長ネギを使うなど、全国に店舗を持つ立地を生かした提案で売り込みを強める。
そごう広島店では安芸津町のジャガイモを使う(同機構提供)
同機構は「夏越ごはんはメニューの自由度が高く、アレンジもしやすい」と特徴を説明。全国の神社で神事の一般参加が再開される今年、さらなる浸透へ期待が高まる。