【コラム】現実的防衛等理由に憲法9条なし崩し許されない

 反撃能力という「敵基地攻撃能力」の保有を実現させた自民党の小野寺五典元防衛大臣ら自民有志の議員連盟が20日、今度は「わが国防衛産業維持のためにも防衛装備移転3原則の運用を見直すよう」岸田文雄総理に求めた。岸田総理は「認識を共有」と応じたとの報道がある。

 防衛装備品の輸出を緩和することで日本の防衛産業という「軍事産業」育成が平和憲法の精神、軍備に頼らず外交努力により平和維持に最大努力を払ってきた「平和国家」としての立ち位置から外れないか、憲法9条(戦争の放棄)軌道から外れていくリスクが高いと言わざるを得ない。

 安倍政権下で憲法9条の解釈を変更し、集団的自衛権行使を一部容認して以来、我が国の外交安全保障の在り方が「防衛装備の強化」という名の「武器」「実力行使できる背景(武力)」に頼る傾向が強い。岸田総理は防衛力強化が外交交渉上も発言力強化につながるなどとする誤った考えをこれまでの発言でもうかがわせている。発想自身に問題があると言わなければならない。

 ロシアによるウクライナ侵略以来、岸田総理は「同じことが東アジアでも起こり得る」と繰り返し発信し、台湾有事は日本の有事とも。結果、敵基地攻撃能力保有を是とし、防衛力の抜本的強化へ5年間で43兆円を投じるとしている。

 防衛装備品メーカーが倒産や廃業の場合、一端、国が製造施設を買上げ、運営を民間企業に委託することも防衛産業支援法を成立させて可能にした。さらに、今回の小野寺氏らの要請は防衛装備品の移転3原則の運用を見直し「日本の安全保障に資するかどうか」で輸出を認めるよう緩和せよとの内容。加えて、国際共同開発した装備品を第3国に輸出する際には開発国間で指針を決め積極輸出できるようになどとしている。

 2014年4月1日の閣議で決定された「防衛装備移転3原則の運用指針」で規定している移転可能なケースは国際共同開発を除けば「我が国との間で安全保障面での協力関係がある国に対する救難、輸送、警戒、監視及び掃海に係る協力に関する防衛装備」に厳格に限っている。

 かつ「海外移転の厳格審査の視点」も運用指針で決めている。(1)仕向先の適切性について「仕向国・地域が国際的な平和及び安全並びに我が国の安全保障にどのような影響を与えているか等を踏まえて検討し(2)最終需要者の適切性については「最終需要者による防衛装備の使用状況及び適正管理の確実性等を考慮して検討する。

 (3)安全保障上の懸念の程度については「移転される防衛装備の性質、技術的機微性、用途(目的)、数量、形態(完成品又は部品か、貨物又は技術かを含む)並びに目的外使用及び第三国移転の可能性等を考慮して検討する」。

 そのうえで、最終的な移転を認めるか否かについては「国際輸出管理レジームのガイドラインも踏まえ、移転時点において利用可能な情報に基づいて、上述の要素を含む視点から総合的に判断する」とかなり厳格な規定にしている。

 ただ運用指針の改正は運用指針規定によると「三原則が外為法の運用基準であることを踏まえ、経済産業省が内閣官房、外務省及び防衛省と協議し案を作成して、国家安全保障会議で決定する」。

 岸田総理が今回、小野寺氏らの要請を受けて「認識を共有」するなどと応じたことは運用の在り方を変える可能性が高い。変えるには「情報公開の徹底」や「運用変更の妥当性」、「必要とする事実」など国民への説明とともに、憲法との整合性を明確に示す責任を果たすことがまず必要だ。(編集担当:森高龍二)

岸田総理が今回、小野寺氏らの要請を受けて「認識を共有」するなどと応じたことは運用の在り方を変える可能性が高い

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