【コレ知ってた?】馬の血液型

「O型の人はおおらか」「A型男子とO型女子は相性がいい」なんて血液型占い、耳にすることも多いのでは。
「性格が4パターンに分類されるなんて、信じられない。」「血液型と性格の関係に科学的根拠なんてないよ。」と考える方もいらっしゃるかもしれませんね。
性格との関連はともかく、輸血を行う場合にABO式血液型はとても重要になります。では、馬も人と同じなのでしょうか。
今回の記事では、馬の血液型や、馬も輸血ができるのかなどについて、ご説明します。

血液型はどうやって調べるの?

人の血液型

人では「ABO式血液型」が一番馴染み深いと思いますが、これは赤血球の表面にある抗原の違いによってA型・B型・O型・AB型の4種類に分類するものです。

引用元:『性格診断よりも気になる!?血液型で違う病気のリスク』()サワイ健康推進課

ABO式血液型が特に重要なのは輸血をする場合で、赤血球の抗原と血しょう(血液の液体成分)の抗体が合致してしまうと、赤血球が固まる反応が起きてしまいます。
上の表では、オレンジ色の「抗原A」と同じ色の抗体「抗A」が、緑色の「抗原B」と同じ色の抗体「抗B」が揃った時に赤血球が固まります。
例)
・A型の人にA型の血液を輸血→「抗原A」と抗体「抗B」は合致しないので固まらない
・A型の人にB型の血液を輸血→「抗原A」と抗体「抗A」が合致するので固まる

人ではABO式血液型以外にもたくさんの分類方法があり、現在およそ300種類ほどと言われています。

馬の血液型

馬の血液型の分類方法も人と同じようにたくさんありますが、国際基準となっているのは15種類です。このうち、7種類が人のABO式血液型に似た「赤血球抗原型」、8種類が赤血球などの蛋白質で分類する「血液蛋白質型」です。
15種類の検査が国際基準になっているのは、複数の検査を行うことで判定の精度を高めるためです。15種類の検査の組み合わせで分類される血液型の数は、おおよそ3兆個になるとか。
これは馬の血液型が特に多いということではなく、人でも複数の検査を行えば、検査の組み合わせによって分類される血液型は多くなります。

あの馬はA型?O型?

人は国や地域によってABO型式血液型の割合が違うそうです。
日本人はA型40%、O型30%、B型20%、AB型10%と言われていますが、お隣の韓国はA型・O型・B型が各30%、AB型10%。中南米諸国はO型が圧倒的に多く、インドはB型が40%と多め。

では、馬はどうでしょうか。
ABO型式血液型で調べてみると、ほとんどの馬がB型で、少しだけAB型がいるそうです。
A型とO型はいないようですね。真面目で几帳面な馬もいれば、おおらかな馬もいるのに、やっぱり血液型と性格はあまり関係しないのかも?

馬の血液型検査が重要なのはなぜ?

以前は競走馬のサラブレッドの親子鑑定に使われていた

現在、サラブレッドの親子鑑定はDNA型によって確認しますが、DNA型検査が一般的になる以前の2001年までは血液型検査で確認していました。

「競走馬として登録されるサラブレッドは、両親も必ずサラブレッドでなければならない」、これは世界共通のルールです。その馬がサラブレッドであり、血統が正しいことを確認するために親子鑑定が行われます。親子鑑定できて初めて血統登録書が発行され、競走馬としてのサラブレッドが誕生するのです。

以前は国際基準となっている15種類の血液型検査を行い、「親子であること」が否定されないことを繰り返し確認しなければならなかったのですが、その判定精度は約97%。
一方、現在行われているDNA型検査は自動化されている工程が多く、あまり手間もかかりませんが、99.999%以上の高い精度です。検査技術は大きく進歩していますね。

子馬の病気を予防するため

血液型が大きく影響する、子馬の「新生子黄疸」という病気があります。
子馬の血液型と母馬の初乳(分娩後数日間分泌される、抗体を多く含む母乳)に含まれる抗体が不適合の場合、子馬が初乳を飲むと赤血球が抗体によって破壊され、黄疸を発症するという病気です。
この病気の発症率はそれほど高くありませんが、母馬の血液を事前に調べて抗体を持っていることを把握しておけば、初乳を子馬に飲ませないようにして病気を予防することができます。

馬は輸血ができるの?

大量に出血してしまった時や、子馬が新生子黄疸などの病気を発症してしまった場合など、馬も輸血が必要になることがありますが、どの馬の血液を使っても大丈夫というわけではありません。
人と同じように、輸血によって赤血球の抗原に抗体が結合し、赤血球が破壊されることがあります。

激しい反応を起こす赤血球の抗原を持たない馬は「ユニバーサルドナー」(輸血する血液を提供できる馬)と定義されています。
馬の品種ごとにユニバーサルドナーの適性を調査したところ、最も割合が高いのはハフリンガー種でした。
また、重種馬(ペルシュロン種、ブルトン種などの体の大きな馬)の割合も比較的高く、中でも日本輓系種(通称「ばんば」。ペルシュロン種、ブルトン種、ベルジャン種などの重種馬を交雑してより大きく強く改良した馬。)も適性がある馬が多いということが分かりました。

なお、検査してユニバーサルドナーの適性があると確認された馬でも、絶対に輸血による事故が起きないということではありません。また、検査後に妊娠・分娩、輸血を受けたことなどによって抗体が出現することもあります。
(公財)競走馬理化学研究所では、有料でユニバーサルドナー検査を行っています。

まとめ

今回は、馬の血液型や検査の重要性、輸血などについてご説明しました。
以前はサラブレッドの親子鑑定のために行われていた血液型検査。現在はDNA型検査に変わりましたが、病気の予防や輸血をする場合の血液型検査の重要性は変わりません。
検査技術や獣医療がますます進んで、馬の健康寿命が延びていくと良いですね。

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