松村雄基『スクール☆ウォーズ』の思い出「真冬の撮影でリーゼントがシャーベットに」

撮影でもっとも過酷だったのは、寒さとの闘いだったと振り返えった松村雄基

青春時代に夢中になったドラマの裏には私たちの知らない“ドラマ”がいっぱい。出演者ご本人を直撃し、今だから話せるエピソードをこっそりお届け!

【『スクール☆ウォーズ~泣き虫先生の7年戦争~』(TBS系・’84~’85年)】

大映テレビ制作で放送された学園ドラマ。社会問題となっていた校内暴力を背景に、監督の滝沢賢治(山下真司)と、大木大助(松村雄基)、イソップこと奥寺浩(高野浩和)らラグビー部員の熱すぎる青春を描いた。

「’80年代、大映テレビが制作するドラマの特徴といえば、大げさな芝居や荒唐無稽な展開ですが、『スクール☆ウォーズ』は、荒れた高校に赴任した教師がラグビー部を7年で全国制覇に導いたという、実話をベースにした物語。ボクも実在の生徒を演じていたんです」

こう語るのは“川浜(ドラマの舞台)イチのワル”と恐れられた、大木大助を演じた松村雄基さん(59)。

「とはいえ大映テレビは、ないものをあるように、あるものをないように描く特殊な制作会社。7話で登場した僕は入学早々、番長に目をつけられるのですが、渡哲也さんの『東京流れ者』を歌いながら相手を倒していくという“えっ!?”と驚く演出でした」

伊藤かずえの登場シーンも、白馬に乗って「馬上から失礼します」というインパクトのあるもの。

「僕らは始発電車で現場に入って、終電で帰るような毎日でしたから、馬に乗ろうが何に乗ろうが、精いっぱいやるしかなかったんです」

■“大映トリップ”を味わえる不思議な現場

撮影でもっとも過酷だったのは、寒さとの闘いだったと振り返る。

「真冬のグラウンドで、撮影が始まるのは朝7時くらい。着替えも、女性はロケバスですが、男は外。髪の毛を固めるジェルがシャーベットのように凍ってしまうほど寒いなか、一日中半袖、短パンでした」

一方、熱血教師・滝沢賢治を演じた山下真司は、役柄上、長袖長ズボン姿。

「しかも、モモヒキまではいていて。完全装備でしたね(笑)」

山下は、生徒役と打ち解けようと気さくに接してくれたが……。

メークルームで、女子マネージャー役の岩崎良美が椅子に座って出演者と談笑していたときのこと。

「山下さんが良美ちゃんをちょっとくすぐったりしていたんです。最初は『やめてくださいよ』と笑っていたのですが、山下さんは良美ちゃんが椅子から転げ落ちているのに、しつこくくすぐり続けて(笑)。最終的には『本当にやめてって言ってるのに!』と、本気で怒ってしまったんです」

こんな現場の勢いもあり、最高視聴率は21%を超えた。

「電車の中で女子学生がドラマを話題にしていることも。『大木、最近、泣きすぎじゃない』って。たしかに1話に1回は泣いていましたよね。大映ドラマ特有の展開が高揚感につながって、自然と泣けてしまうんです。そんな“大映トリップ”を味わえる、不思議な現場でした」

【PROFILE】

松村雄基

’63年、東京都生まれ。高校在学中にドラマデビューし、’80年代は大映ドラマ常連俳優として活躍。6~8月は『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』にジドラー役として出演

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