本間さん作品、米美術館に 茨城・常陸大宮の漆工芸作家 世界で披露、夢実現に喜び

本間健司さんと出品した「Contours of Past2022」(手前)=ニューヨーク・ノグチ美術館(本間さん提供)

茨城県常陸大宮市盛金の漆工芸作家、本間健司さん(48)の漆の古木を再利用して作り上げた作品が、米国で開かれた展覧会「クラフトプライズ2023」で、特に優れた30人だけが作品展示できる「ファイナリスト」に選ばれた。本間さんは、「世界の舞台で披露し挑戦してみたいと思い続けていた。夢が一つかなった」と喜びを語った。

世界的な日系人彫刻家、故イサム・ノグチの作品を収蔵する米ニューヨークのノグチ美術館で開かれた展覧会は、世界の若手工芸家を顕彰する最も権威のある展覧会とされる。世界各地の伝統継承活動などに取り組むロエベ財団(スペイン)が主催し、6回目の開催となる今回は、世界117の国と地域から、2700点超の応募があり、デザイン、建築などの専門家委員会が30作品を選出した。

本間さんの作品は、漆をかき終え、伐採された古木そのものを再利用した器。幹をおので割り、中をくりぬいて、高さ63.3センチ、幅42.5センチ、奥行き29センチ大の作品を創作した。

あえて樹皮の表情を生かし、厳しい冬に耐えた跡も残しつつ、表面には昨夏から秋にかけて手作業で採取した漆を塗るなどして仕上げた。審査員からは「日本古来の伝統と新しい独学の技を融合させたユニークな器」などと高い評価を受けた。

本間さんは、東京・荻窪に漆工芸の工房を構える作家の父親、幸夫氏の背中を見て育ち、良質な奥久慈漆の産地である同市に、26歳で住宅兼工房を構えた。以来、植樹から漆かき、漆工芸品などの加工に取り組んでいる。

同展覧会の選考会は3度目の挑戦。2020年の「国際漆展・石川」で最高賞の大賞を獲得したのをはじめ、「国際展覧会で賞を受賞するなど、評価をいただけるようになってきたのが自信につながった」と振り返る。「大きな作品だったが、表面の色合いや木の表情にさらに工夫を凝らした」と胸を張った。

今回の展覧会では、各国の作品やグランプリに輝いた香川県の陶器作家らとも出会い、本間さんは「自分よりいい作品にすごく刺激を受けた。作家共通の悩みや制作や過程についての話が聞けて、また次回作への意欲が湧いてきた」と話している。

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