SF富士公式テストでファンを交えた公開記者会見が開催。野尻、牧野、宮田、笹原がライバルやSFgo、FE東京を語る

 6月24日、全日本スーパーフォーミュラ選手権の2023年第2回目公式テストが開催されている富士スピードウェイにて、サーキットに来場したファンを交えた“公開記者会見”が行われた。会見には野尻智紀(TEAM MUGEN)、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)、笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S)の4名が出席し、ファンやメディアの質問に答えた。

 会見はテストで場内実況を努めたピエール北川さんの進行のもと、“公開記者会見”ということで、会場に訪れたファンやメディアの質問にドライバーが答えるという形式で進められた。4名とも会見が始まった直後は慣れない光景に「どういった感じで答えればいいんですか?」と戸惑っていたものの、会見が進むと緊張もほぐれたのか笑顔で受け答えを行っていた。ここでは、会見で行われたQ&Aや会場内でのやり取りを掲載する。

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Q:2023年で一番ライバルになると思うドライバーは誰ですか?

牧野:やはり同じクルマに乗っていて、自分の身近にいるチームメイトが一番近いライバルだと思います。とはいえ、スーパーフォーミュラは(海外のドライバーも日本人のドライバーも)そもそも速いドライバーでないと走行することができないので、全員がライバルです。

野尻:こういった質問は誰と答えるのがいいのでしょうね。でも、宮田選手は凄いと思いました。前戦のSUGOの決勝で僕は20秒(22.272秒)離されてフィニッシュしました。20秒といえばストレート1本分以上です。

牧野:僕、その20秒からさらに(26.961秒)離されていましたよ。

ピエール:では、今年一番のライバルを上げるとすれば宮田選手ですね?

野尻:いや、笹原右京です。

笹原:そうなると、僕のライバルは野尻選手になりますね。

野尻:オートポリス(欠場した第4戦)のときは一緒にコースサイドで見ていた仲です。

笹原:帯同させてもらっていたときは大体ひとりで見ていたので、そのときは『友だちが増えた!』と思っていました。

ピエール:笹原選手は、ライバルと言っても今シーズンはまだ誰とも戦っていませんが、客観的にレースを見ていて目標にしたい人物や、あるいは、このドライバーにまず追いつきたい、そして追い越せるようになりたいと考えているドライバーはいますか?

笹原:ここにいる3人は速いですし、いつも上位にいるイメージです。TEAM MUGENには負けたくないですね。

宮田:僕は、自分ですかね。僕は嫌だと思ったら嫌のまま帰りたくなるタイプで、やる気がでないときはやる気が出ないので、自分次第なんだと思います。

公開記者会見に出席した宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)

Q:2日間のテストで一番試したかったことはなんですか? また、笹原選手はテストではSF23に乗っていたと思いますが、実際に36号車に乗ってみてどんな違いがあったのか教えてください。

笹原:(違いは)秘密です。今日は順位が下位(セッション3:18位、セッション4:15位)だったので不調でした。一通りマシンをいじってみたんですけど、良い答えが見つからなかったので、途中から悩み始めてしまった感じです。ただ今回はテストなので、いろいろな傾向を見ることができたので良かったなと思っています。

宮田:富士スピードウェイと仲良くなって、富士でも優勝できるようにすることでした。ですけど、準備がダメだったので嫌われてしまいました……。『7月の第6戦で僕に得になる何かをください』と祈ろうと思います。そうすれば僕の思いは届くはずです(笑)。

野尻:今回はロングラン一択で走行していました。

ピエール:ロングランで何か見えたものはありますか?

野尻:見えないんですよ。やはり、なかなか打開策がなく、自分たちの枠から飛び出ることができていないので難しく感じました。ロングランをやり過ぎて、ニュータイヤを装着していないので余らせてしまったと感じるくらい、一発のタイムは気にしない方向でテストしていました。

牧野:僕はいかに富士を楽に走るかを考えていました。どこで力を抜いたら楽に走れるかということです。これだけセッションが長いとレースよりも疲れるので、どこで手を抜くかをずっと考えて走っていました。

ピエール:テストメニューは消化できましたか?

牧野:何をやって何が良かったかが分からないので、整理し直さないといけません。ここからが長いと思います。

公開記者会見に出席した牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

■SFgoのオンボード映像で注目すべきポイントと、フォーミュラE東京に対する思い

Q:今シーズンからSFgoが一般配信されていて、選手のオンボード映像を見ることができますが、視聴者に見てほしいところはありますか?

牧野:まず、なぜ今回のテストはオンボード映像がないんですか? せっかくテストでたくさん走っている一番大事な場面のオンボード映像がなぜ配信されないのかと思います。セッション4では(山本)尚貴さんがトップだったので、走行が終了したら尚貴さんの走りを見ようと思ったらみることができないんですよ。『こういったときこそオンボードが必要でしょ!』と思ってしまいました。

 見てほしい部分は、自分に限らず、特にアウトラップを見てほしいです。ピットアウト直後のアウトラップはかなりタイム差が発生するポイントですし、クルマによって結構違っていたりしています。そのことで言うと、前戦のSUGOは野尻選手が凄かったので、そういった違う視点で見るのも面白いですね。

野尻:僕は基本的に何も起こさずに走っていたいタイプなんです。ですので、外から見たらすごくつまらない走りをしている思います。みなさんクラッシュとかコースアウトしているオンボード映像を見るほうが好きですよね? 僕は意外とそのタイプなんです(笑)。見る側の気持ちも分かるので、質問に対する答えが難しいですね。速くなさそうに速く走りたいと常に思っているので『あの走りで一番速かったの?』と思ってもらえると立派なマニアになることができると思います。

宮田:ピットに早く入るか遅く入るかで、“表の1位”と“裏の1位”というもの生まれてきます。そのギャップがいつ逆転するかを、レース中継に加えてオンボード映像を見ると面白いんじゃないかなと思います。SFgoでは無線も聞くことができるので、ギャップが逆転した瞬間にチームとドライバーは何を話しているかということも聞けば、結構面白いと思います。

笹原:今回、サインボードの名前が勝手に『UKYOMAN(右京マン)』になっていて、搬入日のネームステッカーも『UKYOMAN』になっていたんです。そういった小ネタもちょくちょくあるかもしれないです。あとは、できる限り僕のオンボード映像を見てアドバイスを下さい(笑)。率直なコメントも欲しいです。

公開記者会見に出席した笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S)
スーパーフォーミュラ富士公式テストで笹原右京用にVANTELIN TEAM TOM’Sが用意した『UKYOMAN』のサインボード

Q:先日東京でのフォーミュラE開催が発表されましたが、そのことに対する素直な感想と、今後もしスーパーフォーミュラの公道レースが開催されるとしたら、どう感じますか?

牧野:フォーミュラEは東京ビッグサイト周辺で開催するということで、僕は渋滞が心配です。でも、どういったレースになるかかが分からないので、楽しみと言えば楽しみです。スーパーフォーミュラの公道レースは……、どうなんですかね?

野尻:危ねぇよ(笑)。

牧野:(笑)。う〜ん、現実的には厳しいのではないかなと思います。イベントとしてそういったレースがあればもちろん楽しいですけど、スーパーフォーミュラくらい大きさマシンだと結構大変だと思います。

野尻:僕はすぐに会場に行くことができるので、家の前で開催してほしいですね。実際に東京ビッグサイトの周辺に住んでいるかどうかは別の話ですけど、家の前がホームストレートになってくれると助かります。スーパーフォーミュラでの公道レースは、なかなか大変だと思うので、(ギヤを)3速までにしてほしいです(笑)。

宮田:昨年くらいにサッシャ(フェネストラズ)から東京でフォーミュラEを開催することは聞いていて、実戦がどうなるかは分かりませんけど船の上からレースを観戦することができるというような話も聞きました。ですので、僕はそういった方法でレースを楽しみたいです。

 スーパーフォーミュラの公道レースに関しては、おそらく日本の公道はレースができるような路面になっていないと思います。マカオGPではF3やFIA-GT3車両が走行していますが、そういった環境は日本にはないので、まずそういった環境の整備をしていただき、そこからF3などのレースを開催して『これならいける』となったら検討したいです。公道レースはクラッシュも多いと思うので、僕は3速ではなく1速限定レースがいいです(笑)。

笹原:フォーミュラEが開催されるということは非常にポジティブだと思います。僕は以前にレッドブル・レースデイというイベントに参加させてもらいましたけど、都心部でそういったイベントを行うことで、よりファンの皆さんが簡単に来やすくなると思います。

 スーパーフォーミュラの公道レースは危ないかなとは思いますけど、将来モータースポーツはそういった部分を絶対に乗り越えないといけないですし、多くの人にモータースポーツをもっと知ってもらう必要があります。安全対策をしっかりと行ったうえで、僕個人としてはスーパーフォーミュラも将来はそういったレースを開催してほしいなと思っています。

ピエール:では最後に、次戦の抱負などを語っていただけますでしょうか。

牧野:次戦の第6戦は今回のテストの舞台でもある富士スピードウェイで開催されるので、ぜひレースも見に来てもらえたらと思います。富士戦はいろいろなイベントもあるようなので、レース以外も楽しんでもらえたらと思います。現在のスーパーフォーミュラは変革のときといいますか、少しでも良くなるようにいろいろと取り組んでいるので、ファンの皆さんは現地でレースを見ていただき、レースを知らない人も誘ってサーキットに来てもらえたらなと思います。

野尻:(今回の公開記者会見のような)スーパーフォーミュラがこういった取り組みを行っているなか、ファンの皆さんに来ていただき非常にうれしい思いです。僕はスーパーフォーミュラをもっと盛り上げたいと思っていて、ファンの皆さんも『もっとこうした方がいいんじゃないか?』というような意見を感じているかと思います。その意見の伝えることは難しい部分もあるかと思いますが、(野尻個人の)YouTubeライブを行うのでコメントで教えてください。また、レースにもぜひ来ていただき、応援してもらえたら嬉しいです。

宮田:7月にスーパーフォーミュラ第6戦があり、カテゴリーは違いますが8月にまたスーパーGT第4戦があるということで、富士スピードウェイで連続してビックイベントがあるので、ぜひサーキットに来てレースを体感してほしいですし、僕らドライバーとしても盛り上げていきたいと思っています。

笹原:第6戦は僕にとって久しぶりのスーパーフォーミュラレースとなるので、もちろん結果を求めていきたいですけど、まずは良いパフォーマンスを発揮できればなと思っています。現状は特にプレッシャーなどもなく、純粋に楽しんで走ることができそうな雰囲気なので頑張りたいと思います。あとは、せっかくこの場に来てくださったファンの皆さんも含め、レースウイークのサーキットに来てくれた方が、帰るときに『今回来て楽しかった』『今回はこれを貰えてよかった』など、漠然とですが何か少しでも形に残せるようなものを作りたいと思っているので、ぜひサーキットに足を運んでいただけるとうれしいです。

公開記者会見に参加した牧野任祐/野尻智紀/宮田莉朋/笹原右京
公開記者会見に出席した野尻智紀(TEAM MUGEN)。半袖チームウエアで参加した3人に対して「なんで僕だけレーシングスーツなんですか!?」と語って笑いを誘った
ピエールさんの「質問ある方はいますか?」の問いに手を上げる牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
公開記者会見の進行を努めたピエール北川さん
公開記者会見はファンを交えて行われ、会見場には多くの人が集まった

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