紫外線で見た火星の姿 打ち上げ10周年のNASA火星探査機「MAVEN」が観測

こちらはアメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査機「MAVEN」(メイブン、Mars Atmosphere and Volatile EvolutioNの略)に搭載されている紫外線分光器「IUVS」で取得したデータをもとに作成された火星の画像です。IUVSは人には見えない紫外線の波長域(110~340nm)で観測を行うため、画像の色は波長に応じて着色されています。

【▲ NASAの火星探査機「MAVEN」の紫外線分光器「IUVS」で2022年7月に取得したデータをもとに作成された火星の南半球の画像(Credit: NASA/LASP/CU Boulder)】

NASAによると、画像の作成に使われたデータは火星の南半球が夏だった2022年7月に取得されたもので、白く写っている南極の極冠は面積が縮小しています。左上の雲に満たされた長大なマリネリス峡谷は黄褐色に、左下のヘイズ(もや)に覆われたアルギレ盆地はピンク色に見えています。火星の南半球では暖かさと砂嵐によって水蒸気が高い高度まで運ばれやすい夏の時期、水素が宇宙空間へと流出しやすいことをMAVENの観測データが示しているといいます。

【▲ NASAの火星探査機「MAVEN」の紫外線分光器「IUVS」で2023年1月に取得したデータをもとに作成された火星の北半球の画像(Credit: NASA/LASP/CU Boulder)】

次の画像もMAVENのIUVSで取得したデータから作成されたもので、2023年1月の北半球の様子が捉えられています。NASAによれば、目を引く紫色はオゾンの分布を示しています。火星の北極域では寒い極夜の間にオゾンが蓄積されていき、春の訪れとともに水蒸気と化学反応することで破壊されていくのだといいます。左下にはマリネリス峡谷の一部が見えています。

【▲ NASAの火星探査機「MAVEN」の想像図(Credit: NASA)】

MAVENは火星の上層大気と電離層、それに太陽や太陽風と大気の相互作用を調べるために、10年前の2013年11月に打ち上げられました。2024年9月には火星到着10周年を迎えます。宇宙空間へと失われていく火星の大気を調べることで、火星の大気と気候、かつて火星の表面にあったとされる液体の水、火星の生命居住可能性といった歴史についての知見を得ることがMAVENのミッションの狙いとされています。

Source

  • Image Credit: NASA/LASP/CU Boulder
  • NASA \- NASA’s MAVEN Spacecraft Stuns with Ultraviolet Views of Red Planet

文/sorae編集部

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