6月初めの大雨で越水した茨城県龍ケ崎市の牛久沼(谷田川)を巡り、国が管理する水位計表示に不具合が生じていたことが25日、分かった。市が越水に気付く約8時間前、数値がマイナスとなるトラブルがあった。河川管理者の県も市に水位情報などを積極的に提供していなかったことも判明。市は「災害対応には国、県の情報に頼る部分が大きい」として、連携のさらなる強化を求めている。
牛久沼は谷田川の一部で全域が同市内に入り、県が河川管理者になっている。同川を含む三つの河川が流入し、県の「八間堰(はっけんぜき)」や国の牛久沼水門を経て小貝川へ続く。
市によると、3日午前10時過ぎ、市民から「牛久沼から越水した。住宅に入ってきている」などと連絡があり、市職員らが2カ所で越水を確認した。市内では床上浸水2件、床下浸水が20件あった。牛久沼の越水は1938年以来85年ぶりだった。
国土交通省利根川下流河川事務所と県河川課によると、水位計は国が同堰近くに1カ所、県は上流部2カ所にそれぞれ置き、インターネットで発信している。市は2日からモニタリングをしていた。
国の水位計は、3日午前2時から数値がマイナスを表示。同日午後1時には「閉局」との表示が出て水位が分からなくなっていた。同事務所は「作動していたが、表示に不具合があった」としている。観測できる水位を超えたり、点検したりしたことが原因とみており、県も国の水位計の不具合を認識していたという。
市によると、こうした状況について、国と県からは十分な情報提供がなかった。市担当者は「自前で水位計を設けておらず、どれぐらいの水位が危険か判断する基準も持ち合わせていない」と不満を語った。
県は水防法に基づき、過去に水害が発生し洪水で大きな被害を及ぼす可能性のある河川を「水位周知河川」と「洪水予報河川」に指定。水位をレベル分けし、水防団の活動や住民避難のため流域市町村に通知しているが、牛久沼はいずれにも指定されていない。
県は今後、越水被害を検証する方針。県担当者は「水位周知の在り方を含め検討する」、同事務所は「国の水位計は少なくとも防災用ではないが、申し出があれば、県の検証への協力を検討する」としている。
萩原勇市長は「越水の原因究明は県がこれからする。国、県と連携してしっかり対応する」と述べるにとどめた。