キャシディがフォーミュラEポートランド戦で今季3勝目。10番手からトップ争いを制して逆転優勝を飾る

 6月25日、2022/2023年ABB FIAフォーミュラE世界選手権シーズン9第12戦ポートランドE-Prixがアメリカで開催され、ニック・キャシディ(エンビジョン・レーシング)が優勝を飾った。2位はジェイク・デニス(アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE)、3位はアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)という表彰台になっている。

 1月の開幕から12戦目を迎え、ランキング争いも僅差のまま終盤戦へと突入しているフォーミュラEシーズン9。今回の舞台はフォーミュラE初開催の地となるアメリカ西部オレゴン州に位置するポートランド・インターナショナル・レースウェイ。インディカー・シリーズのレースが行われていることで知られるこのサーキットは、全長3.221km、12のコーナーで構成される高速コースだ。

 午前中に行われた予選では、ジェイク・デニス(アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE)がデュエル形式の予選を勝ち上がり、ポールポジションを獲得。2番手、3番手にはニッサン・フォーミュラEチームのサッシャ・フェネストラズとノルマン・ナトが続いた。

2022/23年フォーミュラE第12戦ポートランドE-Prix ポールポジションを獲得したジェイク・デニス(アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE)

 なおDSペンスキーは、FP2においてピットレーンの入り口に、電波を使用して無線でデータを収集することができるRFIDスキャナを設置して通過したマシンのデータを収集したとして、ストフェル・バンドーンとジャン-エリック・ベルニュにピットレーンスタートのペナルティと2万5000ユーロ(約390万円)の罰金が科されている。

 迎えた決勝スタートでは、ポールポジションのデニスがトップで1コーナーに入って隊列をリードしていく。2番手にはポジションをキープしたフェネストラズ、その背後には4番手から順位を上げたレネ・ラスト(ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム)が続く。後方では10番手スタートのキャシディが抜群のスタートを決め、1コーナーで2台をパスし、勢いそのままに次々と前のマシンをオーバーテイクすると、1周目を終えた段階で5番手までポジションを上げる走りを披露した。

2022/23年フォーミュラE第12戦ポートランドE-Prix 決勝レーススタートの様子

 2周目には、スタートで順位を下げたナトがラストをとらえて3番手に返り咲くと、そのままチームメイトのフェネストラズをパスして2番手に浮上してくる。4周目には、5番手で力走を続けるキャシディがストレートでフェネストラズとダ・コスタを2台まとめてオーバーテイクし、さらに1コーナーでトップ争いを繰り広げるデニスとナトのインに飛び込み、4台をオーバーテイクしてトップに立つ。

 その直後、キャシディが先頭集団でただひとり一度目のアタックモードを使用して5番手に順位を下げるなか、14番手を走行していたロベルト・メリ(マヒンドラ・レーシング)がターン6の立ち上がりで突如としてスローダウン。マシンはパワーを失ってコース上にストップしてしまい、セーフティーカー(SC)が導入された。

2022/23年フォーミュラE第12戦ポートランドE-Prix セーフティーカーランの様子

 レースは8周目に再開となり、この周にナトを先頭とするトップ7台が一斉にアタックモードを使用してレースが動こうとするなか、18番手を走行していたニコ・ミューラー(ABTクプラフォーミュラEチーム)のマシンにトラブルが発生し、ターン9でコントロールを失ってクラッシュを喫してしまう。このアクシデントで二度目のSCが導入され、高速でガードレールに接触したミュラーが心配されたものの、無事にマシンを降りている。

 17周目からレース再開となり、隊列はナトを先頭に1コーナーへ。そのままナトがアタックモードを使用したためキャシディがトップへ再浮上し、その背後にはダ・コスタ、サム・バード(ジャガーTCSレーシング)が続く。その後は毎周のように隊列の各所で激しいバトルが繰り広げられ、各ドライバーの順位が目まぐるしく入れ替わる展開に。そして22周目には、2番手のダ・コスタが1コーナーで首位のキャシディをオーバーテイクし、隊列の先頭に出る。

2022/23年フォーミュラE第12戦ポートランドE-Prix レース終盤トップに立ったアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)

 両者のバトルはその後も繰り広げられ、26周目にはキャシディがトップを奪い返すも、29周目にはダ・コスタが再度キャシディをオーバーテイクするという一進一退の攻防が続く。しかし30周目、2番手に下がったキャシディが再びトップの座を奪い返すと、残る3周を守り切ってトップチェッカーを受けた。2位にはキャシディとのバトルでエネルギー残量を消耗してしまったダ・コスタをファイナルラップにかわしたデニスが入り、ダ・コスタは3位フィニッシュとなった。

 第12戦ポートランドE-Prixを終えた段階で、ポイントランキングのトップはポールポジションの3点と2位フィニッシュで21点を獲得したデニスとなった。ポートランド戦を制して今季3勝目を挙げたキャシディは、今回の優勝で25ポイントを獲得し、デニスと1ポイント差のランキング2位となっている。フォーミュラEシーズン9の次戦は、7月15~16日に第10戦、第11戦ローマE-Prixが開催される予定だ。

2022/23年フォーミュラE第12戦ポートランドE-Prix 終盤にトップを守るニック・キャシディ(エンビジョン・レーシング)
2022/23年フォーミュラE第12戦ポートランドE-Prix 表彰式の様子
2022/23年フォーミュラE第12戦ポートランドE-Prix 優勝を喜ぶニック・キャシディとエンビジョン・レーシングのメンバー

■2022/23年フォーミュラE第12戦ポートランドE-Prix 順位結果

2022/23年フォーミュラE第12戦ポートランドE-Prix 順位結果

Pos. No. Driver Team Lap/Gap Grid

1 37 N.キャシディ エンビジョン・レーシング 32Laps 10

2 27 J.デニス アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE 0.294 1

3 13 A.F.ダ・コスタ タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム 1.140 7

4 9 M.エバンス ジャガーTCSレーシング 1.758 20

5 16 S.ブエミ エンビジョン・レーシング 2.220 16

6 7 M.ギュンター マセラティMSGレーシング 2.307 5

7 11 L.ディ・グラッシ マヒンドラ・レーシング 2.982 13

8 94 P.ウェーレイン タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム 3.684 18

9 17 N.ナト ニッサン・フォーミュラEチーム 3.961 3

10 4 R.フラインス ABTクプラフォーミュラEチーム 4.300 9

11 25 J-E.ベルニュ DSペンスキー 4.718 21

12 1 S.バンドーン DSペンスキー 4.982 22

13 33 D.ティクトゥム NIO333レーシング・フォーミュラEチーム 5.470 14

14 58 R.ラスト ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム 6.115 4

15 23 S.フェネストラズ ニッサン・フォーミュラEチーム 6.699 2

16 3 S.セッテ・カマラ NIO333レーシング・フォーミュラEチーム 7.167 19

17 10 S.バード ジャガーTCSレーシング 7.638 15

18 5 J.ヒューズ ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム 12.977 6

19 36 A.ロッテラー アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE 16.051 8

NC 8 R.メリ マヒンドラ・レーシング DNF 17

NC 48 E.モルタラ マセラティMSGレーシング DNF 11

NC 51 N.ミューラー ABTクプラフォーミュラEチーム DNF 12

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