茨城・日立市の支援制度 奨学金返還の利用倍増 転入者7割、定住に効果

日立市役所=同市助川町1丁目

大学などを卒業後の市内居住を条件に奨学金返還を支援する茨城県日立市の補助制度の利用者が、2022年度は前年度比約2倍の138人に上ったことが市のまとめで分かった。利用者の約7割はIターンやUターンなど市外からの転入者だった。市は若者の定住促進や市内事業所の人材確保に一定の効果が生まれているとみている。

奨学金返還支援事業は若者の流出を防ごうと17年度にスタート。大学や専門学校などを卒業後、市内定住などの要件を満たした人を対象に返還額の50%相当額を限度に補助する。さらに19年度からは医療と介護、福祉職として市内で働く人には返還金50%を上乗せ補助する仕組みを導入、二つ合わせて最大全額の補助となる。

当初は市が無利子で貸し付ける市奨学金のみが対象だったが、21年度からは日本学生支援機構の第1種奨学金と、県の奨学資金の利用者も対象に追加。市によると、補助金の交付実績は対象拡大前の20年度は25人(うち新規6人)だったが、拡大後の21年度は74人(同52人)、22年度は138人(同72人)と大幅に増えた。

22年度の138人の内訳を見ると、進学から卒業後まで住所の移動がない市民が44人だった一方、転入はUターンが44人、Iターンが50人で、市外からの転入者は全体の68%を占めた。 こうした状況を踏まえ市は本年度、奨学金返還支援事業の予算額を前年度比約1.8倍に増額した。さらに、補助対象者向けのアンケート調査を実施し、同事業が、転入や移住・定住のきっかけにどの程度影響を与えたかなどを調査する方針だ。

20日の定例市議会一般質問では、堀江紀和氏(民主クラブ)が返還支援の対象となる奨学金の拡充についてただした。同機構の奨学金のうち、利用者数が多く有利子の第2種も対象とすることについて、松本正生教育部長は「魅力ある制度となるよう、国・県の制度や他都市の動向を注視しつつ、第2種を対象とすることも視野に検討していく」と述べた。

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