砂防管理

 ご記憶の方は多くないかもしれない。島原市と南島原市の境にある水無川流域で7年前の梅雨、土石流が発生した。その除石作業は今も営々と続けられている▲かつて火砕流や土石流に何度も見舞われた水無川流域の砂防ダム群を管理する国交省の雲仙砂防管理センターを訪ねた。普賢岳噴火災害のさなかに始まった国直轄の砂防事業は2年前にようやく完了し、同センターが山や流域の監視業務などを引き継いだ▲建設には約2千億円、30年近くを費やしたが、完成すれば終わりではない。山頂部や山肌に大量の岩や土砂がたまり、高さ50メートルの巨岩もある。噴火活動が終わっても土石流は何度も発生し、そのたびに土砂を取り除いてきた▲噴火災害当時と同じ規模の土石流なら砂防ダム群で防げるらしいが、センター長の久保世紀さんが恐れるのは地震や大雨による溶岩ドームの大規模崩壊▲近年もダムをかさ上げしたが、想定される最悪規模の崩壊が起きるとそれでも防ぎきれず、居住地域に被害が及ぶ可能性が高いという▲2016年の熊本地震では島原半島でも震度5強を観測したが異常はなかった。安心と油断とは紙一重でもある。「直下地震もあり得る。『おおかみ少年』になってしまうかもしれないが、震度4を目安に避難を」。久保さんは何度か繰り返した。(真)

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