高齢者でも食べやすい「鹿肉のひつまぶし」 介護施設の厨房責任者が考案 兵庫県のコンテストで最優秀

ひょうごジビエコンテストで最優秀賞に選ばれた「鹿肉のひつまぶし」(提供)

 兵庫県川西市の介護施設で厨房(ちゅうぼう)責任者を務める福島和博さん(36)=西宮市=が考案した「鹿肉のひつまぶし」が、県主催の「ひょうごジビエコンテスト」で最優秀賞に選ばれた。ふるさとの名産・飛騨牛を使った料理を参考に「かむ力やのみ込む力が弱いお年寄りでも食べやすいよう配慮した」といい、新たなメニューづくりにも意欲をみせている。(浮田志保)

 福島さんは岐阜市出身。イタリアンレストランでシェフの経験があり、4年ほど前から川西市を拠点に介護事業などを展開する「プラスワンケアサポート」に勤務する。現在は厨房責任者として、同社が運営する4カ所の特別養護老人ホームに入所する人たち約600人のために、毎日メニューを考えている。

 薄味の和食を中心に料理を作ってきたが、昨年、野生のイノシシや鹿を使うジビエ料理に興味を持った。ジビエ肉を食べるため、専門店に足を運び、「新鮮なまま処理をすれば、獣特有のにおいを感じることなく、誰もが気軽に食べられると分かった」。

 今年1月には日本ジビエ振興協会主催の講演会に参加。食中毒を防ぐため、処理が終わるごとにまな板や包丁を洗浄、消毒することや十分に加熱することを学んだ。コンテストの存在を知り、すぐに応募を決めた。

 メニューを考える際にヒントとなったのが、福島さんの好物で故郷でも人気の料理という「飛騨牛のひつまぶし」。約1カ月かけて、鹿肉に応用させた。肉はにおいを消すため、12時間ほどヨーグルトに漬け込む。だしには特にこだわり、骨から取り、香ばしさが際立つほうじ茶と合わせた。「誰が調理しても対応しやすい工程や味付けにできた」

 今年3月のコンテストでは、書類と実食の審査を経て、応募21点の頂点に立った。調理がしやすく、一般の人へも普及できる点などが評価された。5月に施設のお年寄りらに振る舞うと「肉が軟らかくておいしい」「においを感じず食べやすい」と好評だったという。

 福島さんは、現在230種類ある主菜に加えることも考えており「食に携わる者として、命を無駄にすることなくジビエ肉のおいしさを発信し、よりお年寄りが食べやすい他のメニューも考えていきたい」と話している。

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