わかりやすく解説!異次元の少子化対策にみる「出産・子育て支援の拡充」

想定より急速に進む日本の少子化対策として、政府は2023年に入り「異次元の少子化対策」を打ち出しました。

すでに始まっている支援制度や今後の具体的な支援策の内容と、子育て世帯にどのような恩恵があるのか、分かりやすく解説します。

政府の子ども・子育て政策の概要

政府が打ち出した子ども・子育て政策の中で、子育て世帯に関わる政策は大きく分けて以下の7つです。

1.「こども家庭庁」の創設・こども基本法の施行
2.こども・子育て政策の強化
3.不妊治療の保険適用
4.保育の受け皿整備
5.給付型奨学金等の中間層への拡大、授業料の後払い(いわゆる出世払い)の仕組みの創設
6.子育て世帯による住居取得支援
7.全世代型社会保障構築会議

この中でも「2.こども・子育て政策の強化」として以下の基本理念を掲げています。

・若い世代の所得を増やす
・社会全体の構造・意識を変える
・すべての子育て世帯を切れ目なく支援する

この基本理念を元に政策がしっかり実行されれば、子育て世帯にとって今よりもっと子育てがしやすくなることでしょう。

拡充された出産・子育て支援策

2023年5月末現在で、すでに拡充された出産・子育て支援策について確認しましょう。

出産・子育て応援給付金

2023年1月1日から始まった出産・子育て応援給付金は、妊娠・出産した女性を対象に合計10万円の現金またはクーポンを支給する制度です。

出産応援金として妊婦1人につき5万円、子育て応援金として新生児1人につき5万円が支給されます。

妊娠・子育て家庭への「伴走型相談支援」の一環として、自治体が妊娠時や低年齢の幼児がいる子育て家庭に定期的な面談等による支援と合わせて経済的支援として給付金を支給しています。

核家族が増えた現代社会で、孤立しがちな低年齢児がいる子育て家庭にとって、定期的な面談で心の支援と経済的支援が提供されるのは嬉しいですね。

出産育児一時金の増額

出産一時金とは、健康保険から女性が出産した際に一時金として受け取ることができる制度です。出産費用等の上昇も踏まえて、2023年4月から出産時に受け取れる出産育児一時金が現行の42万円から50万円に増額されました。

筆者が子ども3人を生んだ2012年~2018年の出産による入院でも、産院はすべて違いましたが3回ともに42万円では足りず、退院時に追加で費用を支払いました。

地域差もあるかと思いますが、筆者が利用した病院は神奈川県南部で特に豪華サービスがある産院ではないですが、42万円では入院費用をカバーしきれませんでした。

首都圏に住んでいる出産した複数人の友人に聞いても、一時金だけで入院費用がカバーできた友人はいませんでした。もともと一時金より高額な入院費用に対する一時金増額の意見や、ここ数年のインフレに伴う出産費用の上昇も重なり増額が決定されたのではないでしょうか。

入院費用を気にせず、安心して出産できるのは嬉しい制度拡充ですね。

これから検討されている支援策

少子化対策の財源の在り方について議論されていますが、これから検討されている支援策の目玉が「児童手当の拡充」です。

支給対象を高校生まで拡大し、1人あたり1万円を支給、多子世帯の支援で第3子以降の額も1人3万円と現行の2倍になり、所得制限も撤廃予定です。

また、保育サービスの充実や.育児休業給付など働き方改革で、両親ともに育児休業を取得しやすい制度作りが検討されています。

出産や子育てに対する支援制度が拡充するのは良いことですが、子育てでは特に高等教育における経済的な負担が大きくなっています。制度の拡充で浮いたお金を、子どもが小さいうちは使い過ぎずに将来の教育費のために計画的貯めておくのが良さそうです。

経済的な支援だけで少子化が解決するわけではありませんが、社会全体で子どもを育てる意識や実動的なサポートが広がっていくことを願っています。

【執筆者プロフィール】田端 沙織(たばた さおり)

キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャルプランナー

証券・運用会社で10年以上の勤務経験を活かし、ファイナンシャルプランナー 兼 金融教育講師として「正しく・楽しく・分かりやすく」お金のことや資産運用について伝える講座や相談業務を関東圏中心に開催しています。得意分野は資産運用。小学生2人と保育園児1人の3児を絶賛子育て中。

(ハピママ*/ キッズ・マネー・ステーション)

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