【緊急避妊薬のOTC化】試験的運用と実際のOTC化との関連は?

【2023.06.26配信】厚生労働省は6月26日に「第25回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」を開き、緊急避妊薬のOTC化について議論した。

もともと本検討会議はOTC化への可否を決める場ではなく、課題と対策を検討する役割となっている。検討会議のとりまとめを受けて、実際のOTC化は薬事・食品衛生審議会 (薬食審)で議論することになる。

今回、検討会議は検討結果(案)を提示。中でも「総合的意見(総合的な連携対応策など)」を示した。

その中では「試験的運用」の実施に触れている。「多くの課題について対応策を講じるには時間を要するので、まずは、近隣の産婦人科やワンストップ支援センター等と連携が可能な一部地域の薬局における試験的運用を開始し、データ・情報を収集分析し課題・対応策を検討してはどうか」と記載した。加えて、「これに対して、薬剤師の研修、医療機関との連携、土日の開局、薬の在庫等の観点から、対象薬局を検討するとすれば、『一部地域の薬局』ではなく、『すべての地域の一部薬局』における試験的運用とする方が適切ではないかとの意見があった」としている。
試験的運用については別途資料で研修修了済み薬剤師を条件に、2次医療圏~3次医療圏 に1つ程度を目安とした薬局数とするなどの案も提示している。
https://www.dgs-on-line.com/articles/2186

今後の進展はどのようになるのか。

試験的運用と実際の薬食審でのOTC化の議論の関係について、事務局は試験的運用の結果が薬食審での採否の参考となるとの考えを示している。試験的運用が令和6年3月までとなっているため、少なくとも令和6年3月以降の薬食審での議論となるといえる。ただ事務局は試験的運用の結果については速やかに公表するとした。

加えて、事務局は薬剤師の対面販売が担保されるような医薬品販売制度とも関連するとしている。医薬品の販売制度については厚労省で検討会が進んでいる中にあるが、業界では令和6年春の国会審議・成立のタイムスケジュールを指摘する声が多い。

緊急避妊薬については、こうした環境が整った上でのOTC化となることが見込まれる。

一方、試験的運用について実施薬局は広くするべきとの意見も出た。

産経新聞社・論説委員の佐藤好美氏は試験的運用が地域を限定しない方向となったことは評価しつつも、 「2次医療圏」単位で1つの薬局数などではなく、「中学校区」に1つが望ましいといった委員の意見を反映すべきではないかと指摘した。

また日本OTC医薬品協会理事長の礒部総一郎氏は、生活者の多くはOTC医薬品をドラッグストアで購入しているとして、試験的運用に研修済み薬剤師などの条件を付した上でドラッグストアも含めるべきではないかとの考えを示した。

ただ、試験的運用の研究調査を受託する日本薬剤師会からは倫理規定なども必要になるなど、実施薬局を広げることには比較的慎重な意見もみられた。日本医師会からも「安易な手挙げは好ましくない」など、実施薬局は限定した方が望ましいとする意見も出た。

試験的運用とはいえ、実施を見込む夏ごろからは一部の薬局で緊急避妊薬が入手可能となるため“当事者”目線でいえば実施薬局数を増やすべきとの指摘は一理ある。ただ、最終的なOTC化のことを考えると、この調査で実施薬局数は絞って、良い結果を出すことの方が望ましいという見方もできる。

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