スプリント3位、決勝は転倒リタイア。クアルタラロ、明暗分かれたアッセンのレース/第8戦オランダGP

 MotoGP第8戦オランダGPのスプリントレースで、ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が3位を獲得した。クアルタラロにとっては、2023年シーズンから始まったスプリントレースでの初めてのトップ3だった。しかし日曜日の決勝レースでは、転倒リタイアに終わる。クアルタラロのオランダGPは明暗が入り混じったものだった。

 クアルタラロはオランダGPの初日を総合6番手で終え、Q2から予選に挑むと、Q2では4番手を獲得した。今季、第8戦までにクアルタラロがQ2に進出したのは、8戦中5戦。Q2に進出しても、3列目(9、10、11番グリッド)を獲得することがほとんどで、オランダGPまでは第3戦アメリカズGPの7番グリッドがベスト、という状況だった。予選順位の低迷は、今季のクアルタラロのレースを難しくしていたひとつの原因だと考えていいだろう。

 オランダGPの予選で獲得した2列目4番グリッドは、クアルタラロにとって2023年シーズンの自己ベストグリッドだ。オランダGPを迎える前にジョギング中に転び、左足親指を骨折している状態だったものの、その結果で怪我による影響を払拭してみせた。

 スプリントレースでは、序盤から4番手を維持。ブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)と3番手争いを展開し、4番目にチェッカーを受けた。ただ、3番手でゴールしたビンダーがトラックリミットを超えたために、3秒加算のペナルティが科され、結果としては5位。このため、クアルタラロが繰り上がって3位になった。クアルタラロにとっては、スプリントレースで初めてトップ3に入ったのだった。

 怪我をした足については、レースでは痛み止めを使っていたため、痛みは安定していたという。

「唯一問題だったのは、左コーナーで左足がかなり揺れてしまうことだった。今日のスプリントレースのあとで、明日、ひどくならないといいんだけど。痛みは問題ないと思うんだけど、レース中にどれだけ足が動いてしまうかだね」

 レース中、クアルタラロは自分のペースがビンダーよりもいいと感じていた。しかし、クアルタラロは13周の間、一度もビンダーをオーバーテイクすることはできなかった。それが問題点だと、クアルタラロは感じている。

「基本的にひとりで走ると、もっと速く走れる。自分のライディングスタイルで走れるからだ。だからかなり楽なんだ。でもドゥカティやKTM、アプリリアに比べると、僕たちはまったく違うやり方でレースをする」

「コーナーの中間で止まりすぎると、ウイリーが多くなってしまう。僕たちにはエアロダイナミクスの効果を高めるほどのパワーがない。つまり、ウイリーが多く、パワーが足りない。でも、それも仕事、戦いの一部だ」

「僕はセクター1、セクター2でかなり接近していた。セクター3ではロスし、最終コーナーの立ち上がりでもロス。今日はブラッドよりもペースがよかったけど、オーバーテイクはできなかった。これが難しいところだ。シーズン後半、そして来年に向けて、改善しなければならないところだ」

 今季、自己ベストグリッドである4番グリッドからスタートし、そのままの順位、4番手でゴールしたことについては「これが、基本的に僕たちができることの全てだと思う」と振り返っている。オーバーテイクを難しくしているのは、やはり先に語っていた他と異なるライン取りに原因があるという。

「うまくスタートできれば、少なくともこのサーキットでは、順位をキープできるかもしれない。サーキットによっては前からスタートしてもあまり関係ないところがあるから。でもここでは、特に僕は4番手からスタートして、ブラッドを抜けなくて4番手でフィニッシュした。僕たちはとても苦戦している。ペースはとても素晴らしいのに、レースではそれを発揮できない。自分のラインで走れないからだ。これが最も難しいところだ」

スプリントレースでは初めて3位を獲得した

■決勝は転倒リタイア。左腕を負傷

 翌日の決勝レースはスプリントから一転、転倒リタイアという結果に終わった。スタートで後退したクアルタラロは、12番手走行中の3周目に高速コーナーの7コーナーでスリップダウンを喫したのである。クアルタラロをオーバーテイクしようと接近していたヨハン・ザルコ(プリーマ・プラマック・レーシング)を巻き込み、そろってクラッシュした。

 決勝レース後の囲み取材にやってきたクアルタラロは、すでにあった左足の固定に加え、左腕を吊っていた。「クラッシュして肘をひねった。だからこういう風に腕を固定しないといけないんだ」と言う。

 怪我としては腕よりも足のほうが深刻だったようだ。このときは「足のほうはチェックしないといけない。でも、普通に考えたら足の指の手術をしないといけないだろう。数週間は少し痛みがあると思う」と説明しており、モンスターエナジー・ヤマハMotoGPのリリースでは「メディカルセンターでの検査の結果、(7コーナーのクラッシュによる)骨折はなかった」と発表された。その後、同チームのSNSでは、オランダGP後の6月26日月曜日に左足親指の手術が行われ、成功したことが伝えられている。約5週間のサマーブレイク前の怪我だったことは、不幸中の幸いだった。

 転倒の理由については、「スタートでクラッチを離すのがちょっと速すぎて、ウイリーしちゃったんだ。普通のスタートじゃなく、完ぺきなスタートにしたかったんだけど、パーフェクトに近くしようとしすぎて全くだめなスタートになってしまった。かなりポジションを失ってしまったんだ。それで朝(ウオームアップ)みたいに走ろうとしたんだけど、7コーナーでフロントを失ってしまった」と説明する。現状ではオーバーテイクが難しいからこそ、スタートを決めようという気負いがあったのかもしれない。

 このときクアルタラロとバトル中で、転倒に巻き込まれたザルコは、クアルタラロが苦戦しているのがわかって驚いたという。ザルコは指のあたりに少し痛みがあるものの、幸い、大きな怪我はなかった。

「1コーナーで彼をオーバーテイクしようとしたけど、彼はクロスラインで抜き返してきた。彼のバイクは6コーナーでかなり振られていたから、7コーナーで素早く飛び込み、8コーナーでオーバーテイクする準備をしていたんだ。でもその瞬間に彼のフロントが切れ込み、僕は彼のすぐ側にいた。バイクを避けられず、かなりのスピードでクラッシュしてしまったんだ」

 クアルタラロにとってはスプリントレースの3位と決勝レースの転倒リタイア、明暗が分かれたオランダGPとなったのだった。

決勝レースでは3周目に転倒を喫し、リタイアに終わったクアルタラロ(#20)

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