<傾斜かんきつ園> ドローンで防除 愛媛・宇和島市・平石吉三郎さん

ドローンを使ってかんきつの防除をする平石さん(愛媛県宇和島市で)

作業3時間から10分に 樹高に合わせ高度自動調整 浸透性薬剤選び効果アップ

愛媛県宇和島市の平石吉三郎さん(74)は、2ヘクタールのかんきつ園の全てでドローンを使って農薬を散布している。約20アール区画の園地で行った防除では、これまで動力噴霧器で2時間半から3時間ほどかかっていた散布作業が10分に短縮された。果樹で課題とされる葉裏への散布も「浸透性の農薬を使えば、薬剤が直接かからなくても防除できる」と話す。樹高に合わせて高度を自動調節する機体を使うことで、傾斜地でも安定した作業を実現している。

ドローンは平らな田畑を中心に活用が進む。平石さんによると、従来機には樹高に合わせて高度を変えながら飛行する機能がなく、傾斜のきつい園地を動き回りながら手動で操縦しなければならなかったという。

平石さんが昨年導入したドローンは、樹高の高さなどを3D画像で読み込み、高度を自動で調整しながら飛行する。飛行する道順や高さ、速さ、農薬の濃度も設定できる。ドローンの離発着には手動での操作が必要だが、いったん飛行が始まると、事前に設定したルートを自動航行する。

農薬には浸透性の高い剤を選んで使う。ドローンは葉裏へ農薬をかけることが難しく、果樹の防除には不向きとされるが、平石さんは農薬の種類に留意することで「動噴での散布と比べて効果が高く、葉の裏に付いている害虫が大幅に減った。かんきつに多い、黒点病やルビーロウカイガラムシの被害もほとんどみなくなった」という。

薬剤が樹体全体に行き渡るよう、時速6キロほどのゆっくりした速度に設定している。また、葉が密集しないよう剪定(せんてい)にも気を配っている。

助言できる人材不足

果樹でのドローン防除は、水稲などに比べると普及が遅れている。要因の一つが薬剤の少なさだ。4月1日現在でドローンに対応した登録農薬の数は50で、稲の526、野菜類の311を下回る。

ドローンの導入費用は、機体やバッテリー、充電器などを含め200万円ほど。平石さんに使い方を指導したドローンワークス(宇和島市)は「導入にかかる費用も果樹での普及の壁になっている」とみる。

果樹に適した航行ルートの設定方法や機体の特徴などに詳しい人物が少ないことも課題とみられる。平石さんは「うまく活用していくには慣れが必要だ。現場で助言してくれる人が重要になる」と話す。

溝口恵子

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