高齢者、9割が合格 運転技能検査導入1年 茨城県内、絶えぬ事故

実車試験後にアドバイスを受ける高齢ドライバー(左)=ひたちなか市市毛

違反歴がある75歳以上の高齢ドライバーに義務付けられた運転免許更新時の技能検査(実車試験)導入から1年が過ぎた。茨城県内では2600人が受験し合格率は9割超。免許の自主返納者は昨年6千人を超えたが、高齢ドライバーの免許保有者は約5年間で5万人増えており、高齢者による事故も後を絶たない。

ひたちなか市市毛のひたちなか自動車学校。今月8日の実車試験で合格した同市の男性(80)は「合格できて安心した」と胸をなで下ろす。マイカーは買い物で使うといい、「できるだけ長く運転したいが、90歳までに免許返納を考えたい」と語った。

試験は、信号無視など11種類の違反が一つでもあった75歳以上の人に義務付けられる。運転免許センターや教習所で運転し、同乗の検査員が指示された速度での走行や一時停止などの課題を採点する。

県警によると、受験者は今年5月末現在で延べ2600人。うち2407人が合格し、合格率は92.57%だった。

75歳以上の免許保有状況を巡っては、昨年の自主返納者が6620人に上る一方、保有者は5月末時点で21万6220人。2018年末は16万6467人で、毎年約1万人増えている。

こうした状況を背景に、高齢ドライバーが絡む事故は後を絶たない。

県警によると、昨年1年間に県内で75歳以上のドライバーが起こした人身事故は677件(死亡事故15件)で全体の1割を占める。65歳以上を含めると1597件(同27件)と全発生件数の4分の1に上る。高齢ドライバーが絡む事故の割合は増加しており、昨年は記録が残る1990年以降で過去最多を更新した。

国土交通省の調査では、県内の道路総延長は全国2位の5万9千キロ。広大な平地に人口が分散し、公共交通機関が行き届かない空白地域は少なくない。高齢者の免許返納率は全国ワーストクラスだ。

免許の返納率向上には、返納に伴うデメリット軽減が鍵を握るとみられ、近年は高萩市の人工知能(AI)を活用したバスや境町の自動運転バス、大子町のAI乗合タクシーも登場している。

高齢ドライバーの問題に詳しい立正大の所正文教授は「家族や地域包括支援センターが高齢者の生活を把握し、どう移動手段を確保するか知恵を絞る必要がある」などと指摘した。

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