ロゴでわかるワインの生産方法とは!?ワインのラベルを読み解き方を紹介【一生に一冊はもっておきたいワインの教科書】

ワインのラベルを読み解く

ラベルはいわばワインの履歴書。これを読み解くことができれば、そのワインの概要がわかる。法的記載事項、任意の記載事項のほか、どのような規制があるのか、頭に入れておこう。ここではフランスワインを例に見ていこう。

ワインラベルの法的記載事項

すべてのラベルには、法律により義務づけられた項目が記載されている。

ロット番号:同じ条件下で生産された製品を「ロット」と呼ぶ。ロット番号はLからはじまり、番号やアルファベットが続く。

ワインカテゴリー:原産地呼称保護ワインはAOCのあとに、地理的表示保護ワインはIGPやヴァン・ド・ペイのあとに産地名が続く。たとえばAOCフロンサック、IGPペイ・ドックなど。

健康への影響:サークルのなかに妊婦が描かれた図や、「妊娠中のアルコール飲料の摂取は、たとえ少量でも、胎児の健康に重大な影響が出ることがあります」などの文言が記される。

ワインのアルコール度:アルコール計で測定した値。

アレルゲンや亜硫酸:「亜硫酸*を含む」という記載がもっとも一般的。残留物が分析で検知される量であれば、ろ過や清澄(せいちょう)に使用した乳や卵ベースの物質も記載しなければならない。

*日本で販売されるワインには亜硫酸塩と書かれている。ワイン生産者やワインスクールでは亜硫酸塩を亜硫酸と呼ぶことから、本書では亜硫酸で統一している。

生産地:「フランスワイン」「EUワイン」のほか、「フランス(またはイタリア、チリなど)製品」といった文言が記載される場合がある。

甘辛度:スパークリングワインでは記載しなければならないが、そのほかでは義務づけられていない。スパークリングワインは糖度により、極辛口(ブリュット・ナチュールやドザージュ・ゼロ)、辛口(ブリュット)、中辛口(エクストラ・セック)、中甘口(セック)、極甘口(ドゥー)などに分かれる。

容量:たいていのワインボトルは750㎖。

びん詰め情報:びん詰めした人の名前や住所。フランスワインの場合、「embouteilleur(アンブテイユール/びん詰めした会社)」や「mis en bouteillepar(ミザン ブテイユ パール/~によりびん詰め)」の文言のあとに、これらの情報が続く。

ワインのカテゴリー

フランスワインは2つのカテゴリーに分類される。

地理的表示のないワイン(VSIG):かつては「Vin de table(ヴァン ド ターブル/テーブルワイン)」と呼ばれていたが、現在では「Vin de France(ヴァン ド フランス/フランスワイン)」と呼ばれる。

地理的表示(IG)のあるワイン:これはさらに地理的表示保護ワイン(IGP)と原産地呼称保護ワイン(AOC)の2つのグループに分かれる。

地理的表示の定義

AOC:ワインの個性を形づくるエリアで、広く認められた伝統的な手法に準じて醸造されるワイン。

IGP:地域の特徴と品質が評判に結びついていて、その限定された地域で醸造されるワイン。

生産者はIGPとAOCを並行して醸造するなど、複数のワインカテゴリーを手がけることができる。AOCに比べると、IGPはハードルが低くより自由度が高いので、ブドウ品種、栽培法、醸造法の選択の余地が広い。

そのほかのワインの記載事項

ブランド名:生産者がワインを特色づけるために、ブランドを立ちあげるパターンが主流。ブランドは購買意欲を刺激するようなネーミングのこともあれば、一族の名前のこともある。シャトーやドメーヌの名称がブランド名になるケースも多い。

ブドウ品種:EUの規制では、ブドウ品種が記載されている場合、その品種が最低85%つかわれていることと定められている。ただし、AOCでは100%。

オーガニックワイン:ブドウ栽培がオーガニックであることを保証するロゴ。公式には認証されていないが、環境に配慮したワインであることを示す、次のようなロゴもある。ビオディナミ製法なら「DEMETER(デメター)」や「BIODYVIN(ビオディヴァン)」、減農薬農法なら「Terra Vitis(テラ ヴィティス)」など。

ワインのスタイル:伝統製法。

キュヴェ:仕込みの違う特別なワインで、キュヴェ・プレスティージュ、キュヴェ・ヴィエイユ・ヴィーニュなど、畑や区画、生産者の名前、技法、品質レベルなどを指す名称がつけられている。特別なワインを指すが、必ずしも品質を保証するものではない。

生産年:ブドウを収穫した年。

もっとワインのラベルを読み解こう

減農薬農法やオーガニック農法、ビオディナミ農法などのさまざまな製法と、それらの農法でつくられるワインを知ろう。

ロゴでわかるワインの生産方法

減農薬農法

ブドウ栽培の環境負荷を制限するのが目的。化学物質を必要最小限におさえ、必要な場合のみブドウ樹に処理を施す。2002年に正式に認められた農法で、テラ・ヴィティスという認証制度がある。

オーガニックワイン

オーガニック(有機栽培)認定されるには、次の条件を満たす必要がある。

【1】除草剤、殺虫剤などの化学薬品をつかわない。
【2】化学農薬をつかわない。
【3】化学肥料をつかわない。

ビオディナミワイン

ビオディナミワインとして認証されるには、オーガニック農法が大前提となる。ビオディナミ農法ではオーガニック農法よりさらに踏み込んで、次の4つの作業を行う。

【1】ブドウ畑の有機物をさらに増やす。
【2】月のサイクルや天体の位置を考慮する。
【3】土壌やブドウ樹の品質を、ホメオパシー剤散布などの自然な方法で改良する。
【4】ブドウ畑を耕して、土を空気に触れさせる。

ナチュラルワインまたはS.A.I.N.S

公式にはナチュラルワイン(自然派ワイン)は存在しない。EUでも法的に公認されておらず、ロゴもない。亜硫酸を最小限またはまったくつかっていないかどうかが、ナチュラルワインの唯一の基準だ。フランスでは、ナチュラルワインの唯一の枠組みが、自然派ワイン協会(AVN)が策定した仕様で、2つの厳格なルールが定められている。

【1】オーガニック農法またはビオディナミ農法でブドウ樹を栽培している。
【2】醸造時には、以下のようなごく少量の亜硫酸をのぞき、一切の添加を認めない。
赤ワインとスパークリングワイン:1ℓあたり0~30 mg(EUでは150mg)。
白ワイン:1ℓあたり0~40mg(EUでは200~400mg)。

S.A.I.N.S.(Sans Aucun Intrant Ni Sulfite)は、添加や亜硫酸が一切ないというワイン。このワインの基準はさらに厳しい。

亜硫酸

亜硫酸は、ワイン醸造や農産物加工に広くつかわれている食品添加剤で、硫い 黄おう、二酸化硫黄(SO2)などいろいろな名称で呼ばれる。食品を保護して保存する効果があるが、強力なアレルゲンでもあり、大量摂取は危険なため、利用は厳しく規制されている。

そのほかのワインのラベル記載事項

品質等級

地方によっては、独自の公式の格づけ(品質等級)を設けているところがある。フランスのボルドー地方では、シャトーの所有者(プロプリエテ)が、ブルゴーニュ地方ではブドウ畑(土地)が品質等級の対象だ。

受賞歴

公式なワインコンクールの受賞歴がボトルに記載されることもある。

裏ラベルをチェック

かつては、ワインボトルのラベルは1枚だけ、たまにネックラベルがついているくらいだった。今やボトルの後ろ側にもラベルが貼られることが多くなり、ラベル2枚が主流になりつつある。

情報いろいろ

ブドウ品種、ブドウ品種のブレンド比率、ワインについての説明、飲みかたの提案など、ワインにまつわるさまざまな情報が記載されている。

法的記載

表ラベルはごくシンプルにするのが最近のトレンド。そのため、裏ラベルに法的事項を記載する生産者が増えている。表ラベルを美しいビジュアルにする手段でもある。

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気になる中身を少しだけご紹介!ワインのスタイルによってブドウの収穫タイミングが変わる!手摘みと機械の収穫ではどう違うのか?

収穫に適した最良のタイミングって?夜間収穫もある?

ブドウが熟したら、収穫のはじまりだ。収穫は手摘み、または機械で行う。開花してから100日ほどで収穫に入るが、ブドウの成熟度と目標とするワインのスタイルによって、収穫のタイミングを決める。収穫日の決定は難しく、責任重大だ。はやすぎると、実が酸っぱく、糖分の含有量も低い。遅すぎれば、過度に成熟して酸味が足りず、糖度がごく高くなるほか、灰色カビ病に感染するリスクもある。栽培者は時間をかけて天気予報をチェックし、ベストなタイミングを見きわめる。

手作業で収穫するのは負担が重く、時間もかかるが、格の高いアペラシオンや、アクセスしにくいブドウ畑や丘陵、特殊な醸造法を必要とするブドウでは手摘みがふつうだ。たとえば、極甘口ワインに用いる貴腐菌ボトリティス・シネレアのついたブドウは、手摘みと決まっている。シャンパーニュなど一部のアペラシオンの規定でも、収穫は手摘みとされている。手摘みには、摘む人と運ぶ人のチームワークが重要だ。摘む人は剪定ばさみで注意深く房を切り、ケースなどに入れる。運ぶ人は背負いカゴにブドウを入れて列の端まで運び、ケースなどに入れる。ケースならそのままトレーラーに乗せて、醸造所まで運んでいける。

新鮮さを保つため、月と星の明かりのもとライトをつけながら収穫することを夜間収穫という。冷気がブドウの酸化を防ぎ、実に含まれるフレッシュさやフローラルなアロマをあますところなく守ってくれるのだ。

機械収穫は手摘み収穫となにが違う?

収穫機はブドウ収穫のために設計された機械で、1回で収穫のすべての作業を行う。ブドウ樹の列をまたいで進み、振動作用を利用して作業する。機械から支柱とブドウ樹に振動を伝えることで、実がふり落とされるというわけだ。ただし、すべての品種が機械収穫に向いているわけではない。

収穫機が登場したのは1970年代。効率的に収穫できるのが強みで、実が樹になったまま腐るなどという事態を防げる。また夜間にもつかえるので、ブドウの鮮度を保ちやすい。経済面でも機械は文句なしに優秀。機械収穫されたブドウはクオリティが劣ると、まことしやかにいわれているが、新世代の機械なら、しっかり調整して準備をしておけば、抜群のはたらきをしてくれる。

世界中のワインをもっと深堀り!プロヴァンス地方のワインの魅力とは?

ロゼワインといえば、明るいピンク色が特徴だが、プロヴァンス地方のロゼワインは、洗練されたニュアンスの繊細な色あいだ。微妙な色調をあらわすのにつかわれるのは、スグリ、モモ、グレープフルーツ、メロン、マンゴー、マンダリンオレンジなどフルーツの名前だ。

南仏バンドールのワインは気候を活かして作られた!ロゼワインのピンク色はどこからくる?

バンドールのブドウ畑は、サント・ボーム山塊から地中海沿岸にかけ、自然がつくり出した石の積まれた段丘のレスタンクに広がっている。生産者たちは何世紀もかけて、丘陵を開墾してブドウ樹を植えた。海に面した南向きの畑は、年間を通してたっぷりと陽光を浴びる。バンドールの赤ワインは、おもにムールヴェードルからつくられている。ゆっくりと熟すムールヴェードルは、このアペラシオンの中心品種で、アサンブラージュの50%以上を占め、グルナッシュとサンソーをあわせてつかう。前者はボリューム感を、後者は繊細さをもたらす。ワインは長期熟成型で力強く、しっかりとした骨格で、ドライハーブやスパイスのアロマを備えている。

ロゼワインの醸造では、黒ブドウの果皮を漬け込むため、色素が果汁に溶けてピンク色になる。つまり、色はタンク内での果皮と浸漬時間、温度、ほぼ無色の果汁と果皮の接触度に左右される。現在のトレンドは淡いピンク色。ロゼワインの色とクオリティに相関関係はないが、ビジュアルは重要で、選択基準の1つにもなる。淡い色のロゼワインは、より酸が生き生きとしてアロマが豊かだ。濃い色のロゼワインには、上質なメイン料理とあう高品質のものもある。

★ワインを観察してみよう ★各種ワインの醸造法とは? ★料理との組み合わせを知ろう ★フランスだけじゃない!世界のワインとは?
などなど気になるタイトルが目白押し!

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【書誌情報】
『エコール・デ・ヴァン・エ・スピリテューの一生に一冊はもっておきたいワインの教科書』
エコール・デ・ヴァン・エ・スピリテュー 著/奥山久美子 監修

エコール・デ・ヴァン・スピリテューはワインの本場、フランス・パリに本拠を置く人気のワイン専門学校。体系的メソッドにもとづくグランド・テイスティングコースから生まれた本書では、パリの授業をまるごと基本からあらゆるワインの紹介までまとめています。さあ、さっそくテイスティングをはじめましょう。実践重視の学校らしい、テイスティングの視点からぜひ試してほしいワインが満載。フランスは圧巻の充実ぶり、ニューワールドもていねいに紹介します。 すぐれたワインはなにが違う?どうやってアロマは生まれる?どうすればアロマを見きわめたり表現したりできる?ワインの特徴や、クオリティが生まれる仕組みも図解だからとってもわかりやすく、簡潔。各章末には、それまで学んだことをベースにトライできるテイスティングレッスンを用意しています。テイスティングのためのワインもしっかり紹介。学んだことが、ワインにどんな違いを生むのかあなたの舌でたのしく復習しましょう。すきま時間にぴったりのテストもあります。この本が、シンプルな「好き」「嫌い」をこえてあなたのテイスティングのアプローチを新たな次元へと導いてくれるはず。

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