まだバケーションじゃない選手たちもいる…/原ゆみこのマドリッド

[写真:©︎RFEF]

「行けなくて残念だったわ」そんな風に私が羨んでいたのは日曜日、前夜、2部最短Uターンを決めたマドリッド南部衛星都市の弟分、アルコルコンが盛大に昇格を祝っているビデオをツィッターで眺めていた時のことでした。いやあ、同じRFEF1部仲間とはいえ、バルデベバス(バラハス空港の近く)のレアル・マドリー練習場施設内にある、かなり広いプレスエリアや会見場を備えたRMカスティージャのホーム、エスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノとは違い、確かにサント・ドミンゴはプレス席の数も控えめ。キャパオーバーであっさりアクレジの申し込みをはねられてしまった時はちょっと凹んだものでしたけどね。

おまけに試合自体も有料ネットTVのみでしか中継されなかったため、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でも見ることができず、スポーツ紙のサイトで速報を追うしかなかったんですが、まあ、スペインもいよいよ猛暑に突入。外にいるにはかなり辛い気温でしたからね。ちなみに準決勝でレアル・ソシエダBを総合スコア3-2で破り、決勝に進出したアルコルコンは1週間前の1stレグではカステジョンのホームで0-0と引分け。この2ndレグでも分ければ、グループ順位が2位と高い彼らが昇格できるのが仇となったか、前半13分にはデ・ミゲールのゴールでカステジョンに先制されてしまうことに。

でも大丈夫。後半頭から投入されたアダルが11分、エリア外からのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めて同点にしたかと思えば、17分にはCKからCBのカストロがヘッドで勝ち越し点をゲット。そのまま、2-1で勝利して昇格したため、スタジアムを満員にした5000人のファンが試合終了の笛と共にピッチに雪崩込んできて、凄い状態になっていましたが、もちろん1年ぶりの2部復帰のお祝いはフラン・フェルナンデス監督とスタッフが記者会見するプレスルームでも続行。更にチームはバスで大勢のファンが待つアルコルコン市内のロス・カンタロス噴水広場に駆けつけ、夜を徹して騒いでいたようですが、これでまず1つ、来季のレガネスにダービー相手ができたのは何よりだったかと。

え、それにしたって、ネーションズリーグ・ファイナルフォーがスペイン初優勝で幕を閉じた後はもう、私も見る試合がなくなってヒマしているんじゃないかって?そうですね、先週は折よく、U21のユーロが始まり、しかもRTVE(スペイン国営放送)系列の中継を家で見られるため、一応、スペイン代表だけは追っているんですが、こちらも大人の代表と同じで、あまり華のある選手がいないのが欠点でねえ。ルーマニアと共に開催国であるジョージアなど、GKママルダシビリ(バレンシア)がユーロ2024予選スコットランド戦の翌日にU21に合流。その夜のポルトガル戦こそ、ベンチ見学だったものの、グループ2節目のベルギー戦ではゴールを守り、2-2と引分けたなんてこともあったんですが、スペインは年齢的にOKでも、A代表とU21を梯子する選手はいないんですよ。

そう、ペドリこそ、シーズン終盤の負傷でオランダには行けなかったものの、その同僚のガビ、アンス・ファティ(バルサ)、ジェレミー・ピノ(ビジャレアル)らはサンティ・デニア監督に呼ばれても不思議はなかったんですが、3人ともすでにバケーション入り。でも今回のU21ユーロの核となるメンバーが、同監督とU17、U19ユーロを制した2000年生まれのアベル・ルイス、ビクトル・ゴメス(ブラガ)、ギジャモン(バレンシア)、ミランダ(ベティス)、セルヒオ・ゴメス(マンチェスター・シティ)、アントニオ・ブランコ(アラベス)の6人って、もしや彼らの年齢では、このユーロで来年のパリ五輪の出場権を勝ち取っても参加資格がなさそうな気がしなくない?

その辺はともかくとして、水曜にグループリーグをブカレストでのルーマニア戦でスタートした彼らの出足は順調で、いえ、最初はCFのアベル・ルイスが外しまくって、どうなることかと心配だったんですけどね。後半9分にはビクトル・ゴメス、ロドリ(ベティス)が繋ぎ、アレックス・バエナ(ビジャレアル)が先制点を挙げると、16分にも今度はセルヒオ・ゴメスのラストパスからミランダが2点目をゲット。更にロスタイムには敵の壁に当たって軌道の変わったセルヒオ・ゴメスのFKがゴールを割り、ステアウア・スタジアムに2万1000人の観客が駆けつけた試合で0-3と完勝したんですが、これでスペインの後輩たちが得点に不自由しないチームかと思ったら、とんでもない。

だってえ、ルーマニア戦の後半頭から入ったビクトル・ゴメス以外、まったく同じスタメンで始めた土曜のクロアチア戦では開始20秒、ミランダのセンターからのスルーパスをセルヒオ・ゴメスがエリア内に送り、アベル・ルイスがとうとう決めて先制点を奪ったんですが、それからはなしのつぶてなんですよお。いやまあ、先日、大人の代表がネーションズリーグ・ファイナルフォー決勝で対戦した際には、まあ、その時にはスペインが上下共に赤、クロアチアは上下共に紺、スペインの後輩たちは上が赤、下が紺、モドリッチの後輩たちは上が紺、下が白という些細なユニの違いはあったんですけどね。デ・ラ・フエンテ監督のチームが延長戦を終えても0-0で、最後はPK戦で片がついたことを考えれば、最初のビックリゴールがあっただけ、マシだったかもしれませんが、このU21スペイン、果たして優勝を狙えるチームかどうかなのは疑問。

結局、終盤にはルーマニア戦に続いて、カメージョ(今季はアトレティコBからラージョにレンタル移籍してプレー)も入ったものの、追加点が取れなかったため、何とか1-0で逃げ切れて良かったという感じになってしまいましたからね。ただ、期待できそうな人材もいなかった訳ではなく、2試合連続MVPに選ばれた、奇遇というか、ネーションズリーグ・ファイナルフォー2試合連続MVPをもらったのもロドリ(マンチェスター・シティ)だったんですが、U21のロドリは、後半にシュートをゴールポストに当てた、2022年コパ・デル・レイ決勝PK戦で優勝を決める最後のPKキッカーだったミランダと共にベティスで活躍する選手。そう思うとちょっと羨ましくもなるんですが、いやはや、このU21にはレアル・マドリー、バルサ、アトレティコ、スペイン・ビッグ3のトップチーム選手が1人もいないとは一体、どうなっている?

それだけに見慣れない選手が多いのも仕方ないんですが、幸いこの2連勝でスペインU21は、同グループのクロアチアとルーマニアが2連敗で早期敗退したおかげもあって、3戦目を待たずに準々決勝進出が決定。同じ勝ち点6のウクライナと、再びガラガラであろうギルレスティ・スタジアムで火曜に対決して、グループ首位を争うことになりますが、準々決勝の日付が1位突破だと7月1日(土)、2位だと2日(日)に。サンティ・デニア監督も「Con un partido cada tres días es difícil recuperar/コン・ウン・パルティードー・カーダ・トレス・ディアス・エス・ディフィシル・レクペラル(3日おきに試合があると、選手が回復するのが難しい)」と言っていたこともありますし、この3節ではローテーションの可能性もなきにしろあらず。

そうなれば今季、アトレティコからレンタル修行に出ていたカメージョやリケルメ(ジローナ)らにも7月中旬の恒例、ロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)での真夏の地獄キャンプ参加前にシメオネ監督にアピールするいい機会になる?ちなみに先週は、火曜にホセル(エスパニョールからレンタル移籍)の入団プレゼン、水曜にはクロース、木曜にはナチョのそれぞれ、1年契約延長発表があった後、金曜にはセバージョスとも2027年までの契約延長が決まるなど、残るはまだ、ネーションズリーグ・ファイナルフォーで優勝できず、失意のバケーション入りをしたモドリッチ(週明け月曜に1年延長発表)だけと、結構、忙しくしていたお隣さんとは対照的に、アトレティコにはこれといった動きはなかったんですけどね。

ええ、移籍確実と言われているコンドグビアどころか、補強計画に大きく関わるジョアン・フェリックスもポルトガル代表のユーロ予選でもパッとしなかったのが影響しているんですかね。未だにオファーも来てないようですし、バルサが1900万ユーロ(約30億円)の買取オプションを持っているカラスコもベルギー代表2試合目のエストニア戦の後、CL決勝で負傷したデ・ブライネ(マンチェスター・シティ)の代わりに、その前のオーストリア戦でキャプテンに選ばれたのがルカク(今季はチェルシーからのレンタル移籍でインテルでプレー)だったことを不満に思い、ヒザの痛みを理由に代表離脱してしまったGKクルトワを批判。「リーダー、キャプテンであることは自分の性格で示さないといけない。彼は去ることを選んだ。ケガしていたのかどうかは知らないけど、その理由にキャプテンマークの問題もあった」と言い放ってバケーション入りしたきりで、バルサからも何の音沙汰もないんですよ。

よって収入の見込みが立たないため、ベラッティ(PSG)だの、ケシエ(バルサ)だの、名前は挙がっても補強はスタンドバイ状態で、今、お伝えできるのは水曜にあったラ・リーガ来季の日程組み合わせ抽選により、アトレティコが8月13日の週末の開幕戦で2部から最短Uターンしてきたグラナタを゛シビタス・メトロポリターノに迎え、続く8月中のベティス、ラージョとの2試合をどちらもアウェイでプレーすることが決まったぐらい。まあ、サンティアゴ・ベルナベウの大改修工事が始まってから、最初の3試合はアウェイでプレーすることが恒例となっているレアル・マドリーも12月末のリニューアルオープンに向けて、追い込みをかけているため、この夏もアスレティック、アルメリア、セルタとアウェイゲームが続くんですけどね。ベルナベウには弟分のヘタフェが4節、来季初のビジターチームとして訪れることになるんですが、そうそう、この金曜には彼らにもとうとうボルダラス監督続投決定という朗報が。

いやあ、アンヘル・トーレス会長の予告からすでに1週間も経過していたため、ファンもやきもきしていたかと思いますが、どうやら監督が期待していた「もっと野心的な目標を持つクラブ」のオファーもなかったようで、もしやマドリー移籍を噂されていた絶対守護神ダビド・ソリアの残留が濃厚になったおかげもあったりする?ボルダラス監督との2年契約が決まったことにより、これから補強の方も本格化してくるはずですが、レアル・ソシエダからレンタル移籍をしていたポルトゥについては、すでに水曜に買取オプションを行使していて、あと3年、ヘタフェでプレーすることに。といってもシーズン終盤にヒザの靭帯を断裂したエースのエネス・ウナルは契約を延長して、今年いっぱいかかるリハビリをヘタフェですることになったため、前線の補強は必須ですかね。

そしてラージョは、今季限りで退団したイラオラ監督がボーンマスの新指揮官となった報が月曜にあったものの、肝心の新監督がまだ発表されず。一応、昨年10月までエルチェを率いていたフランシスコ監督に内定しているという話は聞くんですけどね。これもセルタの新監督に決まったベニテス監督の正式就任が7月になるのと同様、クラブの会計年度の問題?選手の方はカテナ(オサスナに入団)、フラン・ガルシア(マドリーに移籍)、ルジューヌ(レンタル契約が終わり1部に復帰したアラベスに戻る)、コメサニャ(契約満了)ら、退団した人たちの名前ばかり聞くんですが、まあ、彼らの補強の主戦場は8月後半ですからね。今は焦らず、ゆったりプレシーズン練習が始まるのを待つことにしましょうか。

え、それで日曜夜にリーガ2部昇格プレーオフ決勝エルデンセ戦2ndレグに挑んだRMカスティージャはどうなったのかって?いやあ、こちらはビッグクラブの強みというか、自前のレアル・マドリーTVで生中継してくれたため、私もダイレクトに試合を追うことができたんですが、それが物凄いドラマだったんです!そう、1stレグを1-1で引分けていたラウール監督のチームが昇格するには、何が何でもグループ順位が上のエルデンセに勝たないといけなかったんですが、マドリッド以上に暑そだったエルダ(アリカンテ)では前半から、根性のマドリーが発現。26分にはアリバスのFKをラファ・マリンがヘッドで決めて先制すると、35分にもアルバロ・ロドリゲスの折り返しをドトールがゴールにして、あっさり2点リードしてしまったから、感心したの何のって。

とはいえ、地元民の応援を受けたエルデンセもその程度ではへこたれず、前半ロスタイムにはニエトがエリア内からヘッドして1点を返すと、後半23分にもカルロス・エルナンデスがシュートを決めて、追いつかれてしまったから、さあ大変!その後はカスティージャのGKルイス・ロペスがparadon(パラドン/スーパーセーブ)を連発して、2-2のまま、試合は延長戦に入ったんですが、うーん、その後半4分にアリバスが敵エリア内で倒されてPKをゲット。当人がソツなく決めて、ラウール監督のチームが再びリードを奪った時には私も「出たな、奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)体質」と、プレーオフ準決勝バルサ・アトレテイック戦2ndレグのリピートを確信したものでしたが…。

まさかその4分後、自陣エリア前で敵を切り返そうとしたアランダがボールを奪われ、そこからスルーパスを受けたオルトゥーニョに同点ゴールを挙げられてしまうとは!ディ・ステファノで見た時もしぶといチームという感じがしたエルデンセに対し、やはり選手層が若すぎるカスティージャだからでしょうか。兄貴分のように終了間際の更なる奇跡は起こすことができず、試合は3-3で終了。エルデンセの3年連続昇格が決定して、2022-23シーズン国内クラブ戦の幕が閉じられることに。

もちろん、こちらのピッチにも速攻、スタンドのファンが集団で乱入してお祭り騒ぎが始まったんですが、え?来季2部のマドリー弟分ダービーはレガネスvsアルコルコンの1カードだけになったけど、RFEF1部ではカスティージャvsアトレティコBの本家マドリーダービー弟版が復活するじゃないかって?そうですね、このカテゴリーには他にも1年前、アルコルコンと一緒に落ちたフエンラブラダやラージョ・マハダオンダもいて、ダービー頻度自体高いんですが、マドリッドには1部チームも4つあるだけに、なかなか試合観戦のスケジュールが合わないのが難点でしょうか。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ

南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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