第45回「風俗って、利用する女性も働く女性も後ろめたい?」

風俗、性風俗── みなさんはどんなイメージを持っていますか? この言葉から連想するイメージは一人ひとり違うし、時代によっても変わると思います。特に最近は、SNSでいろんな意見が飛び交っている影響もあるのか、変化が目まぐるしいですね。 私はいまとなっては、性風俗を「すごいお仕事だ!」と思っています。 現在はキャストにも、レズ風俗という業種やレズっ娘グループというお店があると最初から知っていて、「ここで働きたい!」という前向きな意志をもって入店してくるキャストが増えています。他店で働いた経験のあるキャストもいて、「こんなふうにお客様に喜んでもらいたい」「こんなキャストになりたい」という明確なビジョンを持っていると感じます。 そう考えると、私と「性風俗」の出会いはそれほどポジティブなものではありませんでした。 これまで何度か書いていますが、レズっ娘グループに在籍する前の私は、本当にお金に困っていました。当時は20代前半、まだお金の遣い方というものをよくわかっておらず、数々の失敗もしました(苦笑)。そのくせ、親に頼りつづけるのはダサイんじゃないかと思ってもいました。 自分の好きなことをするんだから自分でがんばらないと! という気持ちからいろんな仕事をしたけれど、夢のために動く時間もほしい、だからできるだけ短時間で高額を稼ぎたい……と考えると、いきつく答えは「風俗店になるんやろなぁ」だったのです。 そこでまずは男性にサービスする風俗店に、面接にいきました。でも、縁がなかったんですね。面接の最中にもう「私にはあかんわ〜」と思っていました。この世界と相性がよく活躍されている方もたくさんおられるので、私には合わなかった、という意味です。面接後すぐに、お断りしました。 「風俗店」という選択肢を捨てることはできず、なんとなくネットをふらふらして、たまたま見つけたのが「デート専門店ティアラ」(私が現在、在籍しているレズ風俗ティアラの前身)。これこそが、縁なのだなと思います。 そうして働きはじめて、「あっ、風俗って、それもレズ風俗ってこんな感じなんだ〜!」と思いました。それまで私のなかにも、性風俗=怖いというイメージが多少なりともあったのが、みるみるうちに溶けていったのです。 なんといっても、お客様がみなさんめちゃくちゃよい方ばかりだった、というのが大きいです。打ち明けると、料金を払ってくれないとか、ストレスのはけ口に罵声を浴びせられるとか、ひょっとすると暴力的なこともされるんじゃないかとか……働く前はそんなことも想像していました。 実際のお客様は、私を気遣ってくれる方や私以上にルールを気にしてくださる方がほとんどで、恵まれすぎてるんじゃないかと思うほどです。 私は容姿に自信があるわけではないし、絶対に稼げるという確信はありませんでした。明るくて話好きな性格なので、接客業に向いているとは思っていましたが、女性をエスコートするとなると話は別です。当初は予約がさっぱり入りませんでした。 それでもお店とお客様がたくさんの経験を積ませてくれて、少しずつ予約が入るようになり、自分のなかでも「もっとこうしてみよう」「こうするともっと喜んでもらえるかな」と向上心を刺激されるようになりました。それを実践するとお客様が心身ともに気持ちよくなって、笑顔で帰ってくれる……そんな女性の変化を見るのがうれしくてたまらなくなっていきました。 現在は、性風俗── といっても私はレズ風俗、もっと言うとレズっ娘グループのことしか知らないので一般的ではないかもしれませんが、ここにかぎっていうと「怖い」「怪しい」「危ない」といったイメージは一切ないです。 ご利用されるお客様のなかには、「自分はキャストを搾取しているのだろうか」と悩まれる方もいると聞きます。これも私は全否定したいですね。むしろ、お互いに向上している感覚です。私から与えるだけでなく、お客様から与えられてもいます。きっと、ほかのキャストも同じように感じていると思います。 そして私たちは、性的な気持ちよさだけを求められているわけでないことも知っています。私がこの15年間見てきたお客様のほぼ100%が、エッチだけが目的ではなかったです。 性風俗をめぐる議論はとかく、「是か、非か」になりがちです。 でもその前に、なぜ風俗を必要とする人がいるのか、その人たちは風俗に何を求めているのかを考えてみたほうがいいのではないかと思います。 人は人と、触れ合いたいし、つながりたい。 友だちや家族ではないからこそ、その場かぎりの関係だからこそ、安心して触れ合えるし、つながれる。自分の身の安全が保障された場で、その欲求を満たせる。 私が逢ってきた女性たちも、そのためにご利用されたのだと感じています。自分のなかで欠如している何かを探し、その部分を埋めたいと本気で思っている。だから勇気を出して最初の一歩を踏み出してくれた。 私たちキャストは、そのお手伝いをしているだけです。 ここ数年間、世界はパンデミックで揺れました。社会も大きく変わりました。人と人が接する=危険だとされた時期が長くつづいたのに、性風俗はこの世からなくなりませんでした。レズっ娘グループもなくなっていません。経営的には厳しいこともあったと思います。でも、レズっ娘グループを求めてくれる人が多かったからこそ、お店をなくしてはいけないという思いも強くなりました。 そのくらい、触れ合いやときめき、快感、そしてそこから生じる癒やしを、切実に求める人がいるということだと思います。 レズっ娘グループをご利用されるお客様のなかには、「風俗店を利用している」という意識があまりない方が多いようです。気になる女の子に会いにいくような、エステサロンに行くような、もっと言うとカウンセリングを受けるような感覚で逢いにきてくださっている、なんて話も聞きます。 「風俗」とは違う意識でもってお客様をご案内しているキャストもいるかもしれません。 私は、風俗店だという認識は常に持っています。残念なことに、いまのところ誰にでも話せる気軽な仕事ではありません。他人の言うことは気にしない、と言い切れればいいのですが、現実問題として自分の身近な人にも影響が及ぶ可能性を考えると、堂々と顔と名前を出したい気持ちはあっても、やはりできないという判断になります。 その選択を尊重してもらいながら働けるのが、レズっ娘グループです。 だから言えるのですが、「性風俗店を利用してみたい」という人がいるとしたら、「安全なお店」を選んでください。 女性の多くは、腕力で男性に勝てません。それに、悪質店に騙されてもきっと誰にも相談できず、「風俗を利用しようとしたのが悪いんだ」と自分を責めますよね。そんなことはなくて騙した側が100%悪いのですが、そうならないためにも利用する女性の不安、恐怖を拭い去る努力をしているお店を選ぶのが大事だと思います。 信頼できるオーナーがいて、ルールがしっかりしているお店。 利用の仕方がわかりやすく、ていねいに説明してくれているお店。 お客様の利用バレをしっかり防いでくれるお店。 性風俗店は繊細で豊かな感情がやり取りされる場です。 だからこそ、安心安全が一番だと思います。

【ゆう プロフィール】

永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025

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