アビガン「希少疾病用」指定 厚労省、マダニ感染症効果 富山化学開発

 厚生労働省は27日までに、富士フイルム富山化学(東京)の開発した抗ウイルス薬「アビガン」を希少疾病用医薬品に指定した。アビガンは、マダニが媒介する致死率の高いウイルス感染症への効果が期待されている。指定により国の助成や薬事承認審査の優遇措置を受けることができ、同社は実用化に向けて試験開発を進める。

 希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)は、国内の対象患者数が5万人未満で、医療上、特に必要性が高いなどの条件を満たした医薬品。アビガンは5月29日の厚労省薬事・食品衛生審議会医薬品第2部会で指定が認められ、今月22日付で厚労相から指定を受けた。

 指定されると、薬事承認、販売に向けて▽開発にかかる経費負担軽減のための助成金交付▽医薬品医療機器総合機構の職員による指導・助言▽試験研究費の税控除▽薬事承認審査の優先措置・手数料減額▽再審査期間の延長―といった国の支援を受けられる。

 アビガンは、マダニにかまれて感染するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)に効果がある医薬品として注目されている。SFTSは重症化すると死亡することがあり、致死率31%とする研究もある。過去の臨床研究ではアビガンを投与した患者の致死率が17.4%まで低下した。

 

 ★アビガン 一般名はファビピラビル。ウイルスの複製を阻害し、増殖を防ぐインフルエンザ治療薬。富士フイルム富山化学が開発し、新型コロナウイルス治療薬としての承認を目指していたが、有効性を確認できず、2022年10月に承認申請を取り下げた。臨床試験以外では観察研究と呼ばれる方法で患者に投与された。

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