<社説>新型コロナ再拡大 場面に応じた感染対策を

 新型コロナウイルス感染症の再拡大の波が押し寄せている。全国的な傾向だが、沖縄は突出している。マスク着用など、個人による感染対策を改めて強化する必要がある。 感染症法上の位置付けが5月8日から5類となって1カ月半が経過した。政府はこれに先だち、3月にはマスク着用ルールを屋内か屋外かを問わず「個人の判断が基本」とする方針に改めた。

 感染の再拡大にルールの緩和が影響しているのは確かだろう。厚生労働省によると全国約5千の定点医療機関から12~18日に報告された1医療機関当たりの新型コロナ感染者の平均は5.60人で、前週比で1.10倍となった。第9波の可能性があるという

 県内はより深刻である。1機関当たり28.74人。これに続くのが鹿児島県の9.60人だから、群を抜いている。病床が逼迫(ひっぱく)しており、県は感染した高齢者らを受け入れるケアステーションの稼働を開始した。

 5類移行によって「全数把握」から「定点把握」に変更されており、実態が正確に反映されていないかもしれない。

 県民対象のPCR無料検査は5類移行で終了している。医療機関の逼迫が伝えられていることもあり、症状があっても受診を控えている方もいよう。実際にはより感染が拡大している可能性が高い。

 毎日新聞が6月に実施した全国世論調査によると「マスクを外す場面を増やした」という人が47%で、5月の前回調査から2ポイント上昇した。「着用を続けている」は48%で、同様の質問を続けている3月以降で初めて5割を切った。コロナとの向き合い方で「個人での判断」が浸透しているのだろう。

 法律の位置付けは引き下げられたが、感染症の脅威が減ったわけではない。さまざまな条件が重なれば、感染者は増える。県内では計10カ所の医療機関で救急診療や一般医療を制限している。入院が必要な人ができなくなる事態が懸念される。

 オミクロン株の変異株である「XBB系統」が主流となっている。乳幼児がかかりやすいウイルス性感染症ヘルパンギーナやRSウイルスが全国的に増加傾向にあることも気になる。コロナ禍にあったことで他の感染症と接する機会が減り、免疫力低下につながっているとの見方もある。

 高齢者や幼児、重症化リスクの高い人たちを守るためにもいま一度、自分でできる対策を取る必要がある。2020年からの3年間は夏にかけて感染が拡大してきた。社会を守っていくため、個人で適切に判断していきたい。

 まずは場面に応じたマスクの着用、手洗い、手指消毒を徹底してほしい。ワクチン接種から半年以上経過することで感染予防や重症化予防の効果が薄れている人も増えている。高齢者や基礎疾患のある人は6回目の接種などで備える必要がある。

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