「誰がカネを払ってまで入るものか」北朝鮮国民、公園有料化に反発

都市に緑とうるおいを与え、市民の憩いの場となる公園。庭園、遊具などが備えられているケースを除けば、無料で立ち入れるのが一般的だ。北朝鮮でもそうだった。

当局も国営メディアも、公園造成の実績を自慢気に語っている。例えばこの記事だ。

敬愛する最高領導者金正恩同志は次のようにおっしゃった。

《遊戯場と公園、遊園地を立派に整備して、そこにバスケットボールやバレーボールのコート、ローラースケート場などを作って、勤労者や青年学生がいつでも運動をして体を鍛えられるようにしなければなりません。》

景色の秀麗な普通江の岸にこじんまりとしつつも爽やかに造成された普通江公園には、いつも多くの人々が訪れ、様々なスポーツで休息のひとときを送っている。
(中略)
真冬の寒さにもわれわれの公園には喜悦と浪漫にあふれる各種階層の勤労者と青年学生の明るく朗らかな笑い声がとどまることを知らない。

(ウェブサイト「朝鮮の今日」2020年2月9日付)

しかし、明るく朗らかな笑い声はいつしか消えてしまった。公園が先月から有料化されたからだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、朝鮮労働党の指示に基づき造成された公園で、入場料が徴収されるようになったと伝えた。

清津(チョンジン)市内の各区域の公園は、先月から入場料を取るようになった。松坪(ソンピョン)区域の公園の入口には、管理員が立って、入場者の名前をリスト化して、1カ月分の入場料として2000北朝鮮ウォン(約32円)を徴収している。公園の周囲にはいつのまにか鉄柵が設置された。

利用回数には制限がなく、国を挙げての祝日には無料入場が可能だが、公園の入場料が徴収されたことは過去にはなかったことだという。さらに、農村動員の期間には、60歳以上の老人と幼稚園以下の子どもを除いて、入場そのものが許されない。公園内で糾察隊(取り締まり班)に見つかった場合、強制的に農場に送られる。

人民班(町内会)の会議では、「老人は家にばかりいずに、公園に行ってうたったり踊ったり楽しく暮らせ」と布置(布告)が出されたが、ほとんどの人は「誰がカネを払って公園に行くものか」と反発しているという。

朝鮮労働党が恩着せがましく宣伝するこれらの公園だが、その造成費は、実は住民から「税金外の負担」として徴収したものだ。住民はおカネを取られただけでなく、建設工事にも動員された。

両江道(リャンガンド)の情報筋も、現地の公園で先月から入場料の徴収が始まったと伝えた。額は清津と同じ2000北朝鮮ウォン。一般的な労働者の月給の3分の2、コメ数百グラムに相当する。住民は反発している。

「毎日飢えているのに、誰が歌ったり踊ったりしに公園に行くものか。さらに入場料まで取るようになった公園を、誰が人民のための休息空間と思うのか」(市民の声)

労働党は、そんな不満を意識してか、人民班の会議を通じて「現在行われている国家対象建設の資金を集めるための一連の措置だ」と弁明した。しかし、自分たちの出したカネと労働力で作った公園に、入場料を出して入れというやり方に理解を示す人はいないという。

北朝鮮当局は何らかの事業を行うに当たって、当たり前のように住民を現場に駆り出す。そして、建設費用として金品まで徴収するのだが、これに対する不満は非常に大きい。生きていくためには市場で商売をして現金収入を得なければならないのに、そのための時間も、せっかく稼いだカネも奪われるからだ。

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