M&A金額が上期で5兆円を突破、昨年より4カ月早いハイペース

2兆円規模の買収提案を受け入れ、株式を非公開化する東芝

2023年は上期を終えて間もなく折り返しを迎えるが、M&Aの取引金額(適時開示ベース)が早くも5兆円を突破した。前年より4カ月早いペースで、単純計算だと2020年以来3年ぶりに年間10兆円の大台を突破する勢いだ。

JSR買収で一気に5兆円台に

2023年のM&A金額が5兆円を超えたのは6月26日(1月からの累計は5兆1678億円)。同日、半導体材料大手のJSRが官民ファンドの産業革新投資機構(JIC、東京都港区)による買収提案を受け入れることを発表した。JICは12月下旬をめどにJSRに対してTOB(株式公開買い付け)を始め、全株式の取得を目指す。その買付金額は9039億円。

M&A金額は5月末時点で4兆706億円だったが、1兆円近い超大型案件が加わったことで、一気に5兆円台に乗せた。2022年のM&A金額は前年比21%減の6兆8678億円。5兆円を突破したのは10月31日で、今年は昨年よりペースが4カ月に早い。

昨年は6月時点で金額トップは米ゲーム開発会社のバンジーを約5100億円で買収するソニーグループの案件だった。

これに対し、今年は3月、東芝が国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP、東京都千代田区)陣営による2兆円規模の買収提案を受け入れ、非公開化すると発表。5月にはアステラス製薬が米バイオ医薬品企業のアイベリック・バイオを約8040億円で買収することを決めた。さらに今回、JSRをめぐって今年2番目となる大型M&Aが続いたのだ。

適時開示ベース、2023年は6月26日時点

3年ぶりに10兆円を超えるか

M&A金額が上期時点で5兆円を超えるのは2018年(9兆6419億円)、2021年(5兆3834億円)に次ぐ。2018年は武田薬品工業がアイルランド製薬大手のシャイアーを約6兆2000億円で買収するメガ案件が金額を押し上げ、年間トータルでも過去最高の13兆8187億円に達した。

2023年はこのままのペースで下期も推移すれば、年間10兆円の大台に乗せる計算となる。10兆円突破となれば、2020年(11兆1646億円)以来となる。

2020年は上期時点で1兆5000億円台にとどまっていたが、下期にソフトバンクグループ(SBG)、セブン&アイ・ホールディングス、日本ペイントホールディングスがかかわる大型M&Aが集中し、10兆円に乗せた(ただし、SBGによる半導設計の英国子会社アームの売却は2022年に中止が発表された)。

文:M&A Online

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