14年前の駿河湾の地震で警報クラスの津波が…進む「海底地すべり」の研究【わたしの防災】

地震による大きな揺れで駿河湾の海底では「地すべり」が発生し、津波の高さが増すといわれています。今から14年前の「駿河湾の地震」では観測所の記録を大きく超える津波が襲っていたことが最新の研究で分かってきました。

2009年8月11日の早朝に発生した駿河湾の地震。東名高速道路でのり面が崩落するなど各地で被害がありました。最大震度は6弱で静岡市中心部でも震度5強を観測。静岡県内で1人が死亡、300人以上が、けがをしました。

<気象庁の会見(当時)>

「津波発生の恐れがあり、午前5時10分に静岡県、伊豆諸島に津波注意報を発表しました」

観測された津波は焼津で62cm(引き波)、御前崎で36cmでした。しかし、場所によっては津波警報クラスのもっと大きな津波が押し寄せていたことが最新の研究で分かってきました。

<常葉大学 阿部郁男教授>

「複数の箇所で地震の揺れによって海底で地すべり現象が発生したと推定されます」

海底地すべりとは、地震の揺れで海の中の急斜面が崩れる現象です。その衝撃で盛り上がった海面が津波となって押し寄せます。

地震から約4か月後に撮影された駿河湾の海底の映像からは、焼津の沖合で地すべりの痕跡が確認されています。

常葉大学と東北学院大学などの研究チームは同時多発的に海底地すべりが起きたと突き止め、津波の再現シミュレーションに成功しました。

<常葉大学 阿部郁男教授>

「赤色と青色で(津波の)高い所と低い所が繰り返し交互に焼津港に向かっている。地震が起きてから2分後には焼津港の正面にある防波堤に津波が到達したことが確認できる」

焼津を襲った津波は港の外側にある防波堤でブロックされ、港の中に直接入ることはありませんでした。しかし、防波堤の外側には高い津波がそのまま押し寄せていました。

<常葉大学 阿部郁男教授>

「防波堤が切れている北側には最大2.1mの津波が来ている様子が分かりますし、地震発生から4分後には浜当目地区の海岸に注意報レベルより高い1mを超えるような津波が到達したんじゃないかと推察されます」

それでも津波の影響は海岸付近に留まり、人や建物への影響はありませんでした。

ただ、海外では海底地すべりが原因で予期せぬ巨大津波に襲われた例があります。2018年9月、インドネシアのスラウェシ島には10mを超える津波が突然押し寄せ、2000人以上が犠牲になりました。

<岩崎大輔記者(2019年)>

「津波の被害を受けたパルという街です。海沿いの住宅やホテルが並んでいた場所で多くの人が亡くなりました。津波は恐ろしい。改めてそう感じます」

海底地すべりを正確に予測することができず、警報を解除した後に大津波がやって来ました。湾の奥に住宅地が広がる静岡と似たような地形で海底の複数の場所で地すべりが発生していました。

駿河湾の地震を共同で研究する専門家は、地すべりを考慮した上で津波の予測精度を高めることだ大事だと考えています。

<東北学院大学 柳澤英明准教授>

「これまで地すべりの津波というのが想定に生かされていなかったことで、発生現象もまだ分かっていないことが多くある。南海トラフ地震など巨大地震が心配されている所で、どのように地すべりの津波が併発していくのか。また、今後そのような地すべりをどのように想定していくのかという研究に今後つなげていければと思っています」

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