コウノトリひな誕生 茨城・行方で初営巣 3羽生存 識別足環装着

足環を着けられ巣に帰される直前の3羽のひな=行方市内

国の特別天然記念物であるコウノトリのつがいが、茨城県行方市内で営巣している。専門家チームは26日、鉄塔の上の巣でひな3羽の生存を確認し、個体識別のための足環をひなに取り付けるなどの作業を行った。行方市内での営巣が確認されたのは2005年に兵庫県で放鳥が始まって以降、初めて。市の担当者は「今後、ひなの愛称を募集する予定。遠くから静かに見守って」と呼びかけている。

コウノトリは東アジアに生息し、全長約1メートル、羽を広げると約2メートルになる大型の鳥類。日本でもかつては広く分布していたが、乱獲や環境の悪化で激減し、1971年に国内の野生個体群は絶滅した。その後、2005年に兵庫県で5羽が放鳥されたのを皮切りに、千葉県野田市などでも放鳥が行われており、現在は屋外で約300羽が生息しているとみられる。

今回、行方市で営巣したのは、21年に野田市で生まれた雄と、19年に福井県坂井市で生まれた雌のつがい。5月22日に市民からの情報提供があり、その後、4羽のひなが確認された。

この日の作業には、兵庫県立コウノトリの郷公園の船越稔主任飼育員(59)をはじめ、自治体関係者や獣医ら約40人が参加。巣がある高さ約40メートルの電波塔最上部までラフタークレーン車のゴンドラを伸ばし、ひなを捕獲。地上で足環の装着や血液・羽毛などの検体を採取して再び巣へ戻した。ひなが巣に戻った直後、親鳥も巣に飛来し、参加者から拍手が沸き起こる一幕もあった。

足環を装着したひなは3羽で、1羽は死んでいた。性別は今後のDNA検査で明らかになる。船越主任飼育員は「若いペアで3羽が育っているというのは、うまく子育てしているという印象。(魚や両生類、は虫類などの)餌が豊富にあるのだと思う」と、周辺の自然の豊かさを指摘。ひなの生育状況から「あと1カ月程度で巣立つのではないか」との予測を示した。

高さ約40メートルの電波塔最上部の巣でひなを捕獲する作業員=行方市内

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