玉鬘をめぐる求婚合戦~巻名:藤袴・真木柱~【図解 源氏物語】

宮仕えを前に悩む玉鬘(藤袴)

尚侍として宮仕えすることになった玉鬘ですが、秋好中宮は源氏の養女、弘徽殿女御は異母姉妹ですから、もし帝の寵愛を争うことになったらと思うと気が重くなります。源氏も、じつの親である内大臣も、相談相手にはなりそうもなく一人思い悩んでいました。そんな中で大宮が亡くなり、夕霧は源氏の使いとして玉鬘のもとへ行きます。大宮の孫として喪に服する玉鬘に、姉ではないと知った夕霧は、藤袴を差し出して恋心を訴える歌を詠みかけると、玉鬘自ら返歌しますが、恋には応じませんでした。夕霧は源氏のもとを訪れ、内大臣が疑っているからと理由をつけ、玉鬘との関係を追及します。

何気ないふりをしてかわした源氏でしたが、玉鬘への思いを断つときだと考えます。同時に、内大臣に自分の潔白を伝えなければと思うのでした。玉鬘の宮仕えが10月と決まり、内大臣の使者として柏木が訪れます。かつて、自分の姉とは知らずに求愛していたことを気恥ずかしく感じる柏木と、玉鬘は他人行儀に取次を介して話すのでした。宮仕えを前にして、玉鬘のもとには、求婚者から多くの文が届きました。その一人、髭黒の大将を、内大臣は「人柄も身分もまずまず」と思っていましたが、余計なことは言うまいと源氏に任せていました。じつは鬚黒の大将には、紫の上の異母姉である正妻がおり、病を患っていました。そんなこともあって、源氏は玉鬘の相手としては難があると考えていたのです。

藤袴・・・キク科の花。花の色が藤色で形が袴に似ていることからこの名があるとも言われる。

貴族の通過儀礼

誕生、成人、結婚・・・・・・、貴族には、人生の節目節目にとり行うべき儀礼があった。

誕生・・・誕生後まもなくの7日間、新生児にお湯を浴びせる「御湯殿(おゆどの)の儀」を行う。誕生から3、5、7、9日目の夜には「産養(うぶやしない)」という祝宴を開き、親戚・知人から祝い品を贈られる。誕生後50日目と100日目には、新生児の口に餅を含ませる儀礼も行う。
成長・・・3~5歳ぐらいに、近親者を集めて、初めて袴を着る「袴着」を行う。
成人・・・男子は11~16歳ぐらいで、「元服」を行う。大人と同じ正装を着て、角髪(みずら 子どもの髪型)を改めて一髻(ひとつもとどり)を結い、初めて冠を被る。女子は12歳~14歳ぐらいで「裳着」を行う。髪を結い上げて初めて裳を着る。
結婚・・・元服・裳着を行った男性・女性は結婚が可能となる。まず、会う前に「恋文」をやり取りし、結婚の意思を示し合う。やがて男性は女性の家に通いはじめ、3日目の夜に婚姻が成立する。このとき、新婦の家で「露顕(ところあらわし)」という宴が催され、新婦の親と新郎が対面。新郎新婦には「三日夜餅(みかよのもち)」が供される。
算賀・・・「算賀」とは、長寿の祝いのことで、長寿の人の一層の健康を祈願して祝宴を催す。40歳の「四十賀(しじゅうのが)」をはじめとし、10年ごとに行う。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』高木 和子

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』
高木 和子 監修

平安時代に紫式部によって著された長編小説、日本古典文学の最高傑作といわれる『源氏物語』は、千年の時を超え、今でも読み継がれる大ベストセラー。光源氏、紫の上、桐壺、末摘花、薫の君、匂宮————古文の授業で興味を持った人も、慣れない古文と全54巻という大長編に途中挫折した人も多いはず。本書は、登場人物、巻ごとのあらすじ、ストーリーと名場面を中心に解説。平安時代当時の風俗や暮らし、衣装やアイテム、ものの考え方も紹介。また、理解を助けるための名シーンの原文と現代語訳も解説。『源氏物語』の魅力をまるごと図解した、初心者でもその内容と全体がすっきり楽しくわかる便利でお得な一冊!2024年NHK大河ドラマも作者・紫式部を描くことに決まり、話題、人気必至の名作を先取りして楽しめる。

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