料理にあわせてワインを選ぶ時とワインにあわせて料理を選ぶ時の違いとは!?【一生に一冊はもっておきたいワインの教科書】

料理とワインを組みあわせる

ワインと料理はいわばパートナー。相互に作用しあい、舌の上で融合する。だからこそ、ワイン愛好者なら、ごく自然に料理とワインの組みあわせに注目する。きっと、ワクワクするようなたくさんの体験をもたらしてくれるだろう。

バランスを大切に

酸味、甘味、塩味、ミネラル感など、ワインや食べものには香味がたっぷりと含まれていて、舌の上で融合する。ソムリエがよく口にする「バランス、またはアンバランス」という概念もここからきている。重視されるのはこうしたバランス、言いかえればハーモニーだ。軽い料理には軽いワイン、どっしりとした料理には重みのあるワインが基本。そのためには、料理とワインの両方に目を向けて、この2つを組みあわせたらどうなるかを想像することがポイントだ。

組みあわせのポイントは香味

ワインも料理も選択肢は無数にあるので、あまり気にすることはない。ただし、特定の香味には要注意なので、次の3つのポイントを参考にしよう。

【1】タンニンの強いワインには、脂肪分の多い料理をあわせる。タンニン独特の乾いた感覚がやわらぐ。

【2】酸が生き生きしているワインには、リッチな料理をあわせる。料理の酸味があまり強くならないようにするといい。

【3】甘口のワインに甘味に乏しい料理をあわせると、貧弱な印象になるので要注意。

香味の相互作用

おのずと調和し、補いあう香味がある。たとえば、甘味と酸味はとても相性がいい。高脂肪、クリーミー、とろりとした香味には、酸が生き生きとした力強い白ワインがあう。その反面、拮抗する香味もある。塩はワインと友好関係にあり、あらゆる食物やワインの味わいを増幅させる。ワインでネガティブな相互作用を引き起こすのは、酸味とタンニンだけだ。そのほかの香味、とくにフルーティーさはどんな食材をも引き立てる。

ワインを飲む順番

いくつかのワインを続けて飲む場合、飲む順番が重要。それぞれのよさを印象づけられるようにしたい。そのためには、いくつかの例外は別として、次を参考に順序よくサービスしよう。

【1】白とロゼの各ワインは赤ワインの前に。
【2】若いワインは熟成したワインの前に。
【3】冷たいワインは室温のワインの前に。
【4】軽いワインは力強いワインの前に。
【5】辛口ワインは甘口ワインの前に。

料理にあわせてワインを選ぶなら…

ビネガーのきいたサラダ、アジア料理、フルーツや野菜などの酸っぱい料理には、サンセール(フランス/ロワール渓谷地方)、ソーヴィニョン・ブラン(ニュージーランド)など、鮮烈で軽くてフルーティーなワイン。

緑色野菜やスパイスなどの苦い料理には、フルーティーかつ軽やかなワイン。タンニンはあくまでひかえめに。生産地は問わず、メルロやピノ・ノワールがベースのワインを。白ならシャルドネやヴィオニエが最適。

デザート、甘酸っぱい料理などの甘い料理には、タンニンと酸味に要注意。白やロゼのスパークリングワイン。デザートには甘口ワイン。ヴァン・ドゥー・ナチュレルもおすすめ。

ワインにあわせて料理を選ぶなら…

リースリング、ソーヴィニョンなどの酸っぱいワインには、さほどリッチではなく、あくまで軽い料理。魚介類、サラダ、グリルした魚。

マディランやカオール(フランス/南西地方)、メドック(フランス/ボルドー地方)、カベルネ・ソーヴィニョンなどのタンニンが効いたワインには、力強く重厚な料理。赤身肉やジビエ、リッチなソースのひと皿。長期熟成したハードタイプのチーズ。

生産地やブドウ品種は問わない、すでに熟成したワインの円熟アロマには、意外にも、繊細で上品な料理。白身肉や家禽類(かきんるい)のひと皿。熟成チーズ。

社会や文化の影響から選ぶ

ワインの好みはさまざまな社会的かつ文化的要素に左右される。とくに次の3つは重要な鍵となる。

年齢

私たちと親世代などでは食べものだけでなく、いろいろな面で嗜好が異なる。世代ごとに独自の嗜好があり、若者はフルーティーなワインを、大人はやわらかで熟したワインを好む。ロゼの爆発的流行の一因も、若い消費者世代の台頭にある。

ジェンダー

ワインを「女性向け」「男性向け」と分類するのは難しい。だが、女性のほうが男性よりも好みの幅が広いことは知られていて、白、赤、ロゼ、スパークリングなどあらゆるワインに興味がある。オープンマインドで冒険にもひるまないのが女性の特徴だ。

食文化

私たちの嗜好は教育や食生活の影響を多大に受けている。日本人の嗜好とヨーロッパの人々の嗜好が違うのも、食文化が大きく異なるためだ。

季節で選ぶ

太陽にさんさんと照らされたテラスで重厚なカオールワインを飲みたいと思うだろうか?暖をとりながらロゼワインを飲む気になるだろうか? 嗜好は人によりさまざまだが、フルーツや野菜と同じく、ワインでも季節は重要な概念だ。さわやかで鮮烈で、夏に好まれるワインもあれば、力強くまろやかで、真冬にまったりと飲みたいワインもある。

夏のワイン

白ワインと赤ワインのおすすめは次の2つ。もちろんロゼとスパークリングの各ワインもお忘れなく。

白ワイン:リースリング、ソーヴィニョン、シュナン・ブラン、シャルドネなど。

赤ワイン:フルーティーで軽いもの。フランスワインでは、カベルネ・フランからつくられるシノン(ロワール渓谷地方)、ボージョレ地区や一部のブルゴーニュ地方のものなど。

冬のワイン

白ワイン:樽発酵したもの、樽で熟成したもの。赤ワイン:タンニンが豊かで、力強く、熟成したもの。

そのほか、ヴィオニエ、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリのワイン。

シーンで選ぶ

ワインをたのしむシーンを考えて選ぶことも重要だ。

食前酒として

酸味と豊かな香味で味覚を目覚めさせてくれるワインは、絶好の食前酒。白やロゼのスパークリングワインなら、さらにおすすめだ。泡が舌を刺激すると同時に、独特の繊細さを優雅にたのしめる。夏ならロゼワイン。フルーツのデリケートな味わいがうれしい。赤ワインなら、軽くて、あまりタンニンが強くなく、やや酸味があるものを選ぼう。生産地は問わず、ピノ・ノワールを試したい。暑いときには、甘口ワインやヴァン・ドゥー・ナチュレルは避けよう。甘味が邪魔をして、食欲がわかなくなってしまう。ソーテルヌやミュスカは、もう少しあとで飲むために冷やしておこう。

カジュアルな食事に

友達との集まりなら、テラスでの食前酒だけであっという間に時間が過ぎてしまう。シンプルに一品料理で、またはいろいろなタパスでと食事スタイルもカジュアルだろう。そんなときこそ、個性豊かなワインをいくつかテイスティングしてみよう。こうした食事は風味のオンパレードだ。フルーティーで若々しく、樽熟成期間の短い軽めのワインを選びたい。ポイントはさわやかさとフルーティーさ。オーストラリア、カリフォルニア、南アフリカなど、ふだんはしり込みしそうなワインを思い切って試すのもいいだろう。果実味の豊かさが、風味のオンパレードにぴったりだ。好みは千差万別なので、色や味わいの異なる2~3種類のワインを出してみては? きっとそれぞれが好みのワインを見つけられるはずだ。

食事を通してワインは1種類だけのことも

今やワインの飲みかたも変化している。料理ごとにワインをかえるのは、よりフォーマルな食事の場合で、食事のはじまりからおわりまで同じワインを飲むのが今の傾向だ。それでも、料理とワインの組みあわせという概念はかわらない。まずは、メインの料理を見きわめよう。赤身肉のグリルなら、タンニンが豊かな赤ワインを。キッシュとサラダには、白ワインや軽めの赤ワインをあわせよう。

甘口ワイン

食事に登場しなかった甘口ワインは、どこで活躍するのだろう。ずばり、デザートだ。デザートとワインの甘味が絶妙なハーモニーを生む。また、甘酸っぱい料理やフルーツをつかった料理とも相性がよい。カモのオレンジソースにはソーテルヌを。スパイシーな料理にもあう。カレーにはフルーティーな甘口タイプがおすすめだ。

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気になる中身を少しだけご紹介!ワインのスタイルによってブドウの収穫タイミングが変わる!手摘みと機械の収穫ではどう違うのか?

収穫に適した最良のタイミングって?夜間収穫もある?

ブドウが熟したら、収穫のはじまりだ。収穫は手摘み、または機械で行う。開花してから100日ほどで収穫に入るが、ブドウの成熟度と目標とするワインのスタイルによって、収穫のタイミングを決める。収穫日の決定は難しく、責任重大だ。はやすぎると、実が酸っぱく、糖分の含有量も低い。遅すぎれば、過度に成熟して酸味が足りず、糖度がごく高くなるほか、灰色カビ病に感染するリスクもある。栽培者は時間をかけて天気予報をチェックし、ベストなタイミングを見きわめる。

手作業で収穫するのは負担が重く、時間もかかるが、格の高いアペラシオンや、アクセスしにくいブドウ畑や丘陵、特殊な醸造法を必要とするブドウでは手摘みがふつうだ。たとえば、極甘口ワインに用いる貴腐菌ボトリティス・シネレアのついたブドウは、手摘みと決まっている。シャンパーニュなど一部のアペラシオンの規定でも、収穫は手摘みとされている。手摘みには、摘む人と運ぶ人のチームワークが重要だ。摘む人は剪定ばさみで注意深く房を切り、ケースなどに入れる。運ぶ人は背負いカゴにブドウを入れて列の端まで運び、ケースなどに入れる。ケースならそのままトレーラーに乗せて、醸造所まで運んでいける。

新鮮さを保つため、月と星の明かりのもとライトをつけながら収穫することを夜間収穫という。冷気がブドウの酸化を防ぎ、実に含まれるフレッシュさやフローラルなアロマをあますところなく守ってくれるのだ。

機械収穫は手摘み収穫となにが違う?

収穫機はブドウ収穫のために設計された機械で、1回で収穫のすべての作業を行う。ブドウ樹の列をまたいで進み、振動作用を利用して作業する。機械から支柱とブドウ樹に振動を伝えることで、実がふり落とされるというわけだ。ただし、すべての品種が機械収穫に向いているわけではない。

収穫機が登場したのは1970年代。効率的に収穫できるのが強みで、実が樹になったまま腐るなどという事態を防げる。また夜間にもつかえるので、ブドウの鮮度を保ちやすい。経済面でも機械は文句なしに優秀。機械収穫されたブドウはクオリティが劣ると、まことしやかにいわれているが、新世代の機械なら、しっかり調整して準備をしておけば、抜群のはたらきをしてくれる。

世界中のワインをもっと深堀り!プロヴァンス地方のワインの魅力とは?

ロゼワインといえば、明るいピンク色が特徴だが、プロヴァンス地方のロゼワインは、洗練されたニュアンスの繊細な色あいだ。微妙な色調をあらわすのにつかわれるのは、スグリ、モモ、グレープフルーツ、メロン、マンゴー、マンダリンオレンジなどフルーツの名前だ。

南仏バンドールのワインは気候を活かして作られた!ロゼワインのピンク色はどこからくる?

バンドールのブドウ畑は、サント・ボーム山塊から地中海沿岸にかけ、自然がつくり出した石の積まれた段丘のレスタンクに広がっている。生産者たちは何世紀もかけて、丘陵を開墾してブドウ樹を植えた。海に面した南向きの畑は、年間を通してたっぷりと陽光を浴びる。バンドールの赤ワインは、おもにムールヴェードルからつくられている。ゆっくりと熟すムールヴェードルは、このアペラシオンの中心品種で、アサンブラージュの50%以上を占め、グルナッシュとサンソーをあわせてつかう。前者はボリューム感を、後者は繊細さをもたらす。ワインは長期熟成型で力強く、しっかりとした骨格で、ドライハーブやスパイスのアロマを備えている。

ロゼワインの醸造では、黒ブドウの果皮を漬け込むため、色素が果汁に溶けてピンク色になる。つまり、色はタンク内での果皮と浸漬時間、温度、ほぼ無色の果汁と果皮の接触度に左右される。現在のトレンドは淡いピンク色。ロゼワインの色とクオリティに相関関係はないが、ビジュアルは重要で、選択基準の1つにもなる。淡い色のロゼワインは、より酸が生き生きとしてアロマが豊かだ。濃い色のロゼワインには、上質なメイン料理とあう高品質のものもある。

★ワインを観察してみよう ★各種ワインの醸造法とは? ★料理との組み合わせを知ろう ★フランスだけじゃない!世界のワインとは?
などなど気になるタイトルが目白押し!

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【書誌情報】
『エコール・デ・ヴァン・エ・スピリテューの一生に一冊はもっておきたいワインの教科書』
エコール・デ・ヴァン・エ・スピリテュー 著/奥山久美子 監修

エコール・デ・ヴァン・スピリテューはワインの本場、フランス・パリに本拠を置く人気のワイン専門学校。体系的メソッドにもとづくグランド・テイスティングコースから生まれた本書では、パリの授業をまるごと基本からあらゆるワインの紹介までまとめています。さあ、さっそくテイスティングをはじめましょう。実践重視の学校らしい、テイスティングの視点からぜひ試してほしいワインが満載。フランスは圧巻の充実ぶり、ニューワールドもていねいに紹介します。 すぐれたワインはなにが違う?どうやってアロマは生まれる?どうすればアロマを見きわめたり表現したりできる?ワインの特徴や、クオリティが生まれる仕組みも図解だからとってもわかりやすく、簡潔。各章末には、それまで学んだことをベースにトライできるテイスティングレッスンを用意しています。テイスティングのためのワインもしっかり紹介。学んだことが、ワインにどんな違いを生むのかあなたの舌でたのしく復習しましょう。すきま時間にぴったりのテストもあります。この本が、シンプルな「好き」「嫌い」をこえてあなたのテイスティングのアプローチを新たな次元へと導いてくれるはず。

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