<金口木舌>宝を掘り起こす

 パドルの着水音だけが静寂の中に響く。上ったばかりの月が川を照らしている。周りは生い茂ったマングローブ。時折聞こえる鳥の鳴き声が心強い

▼先日、名護市大浦の東海岸にある「わんさか大浦パーク」のプログラムでシーカヤックに挑戦した。夜間のツアーで不安もあったが、慣れると、滑るように進む独特の感覚が心地いい

▼4月末にマングローブの観察路が完成したことで、マングローブ林の奥までシーカヤックで行けるようになった。暗闇の中、頭部の懐中電灯だけでマングローブの根っこをよけながら進むスリルも味なものだ

▼途中ではタナガー(テナガエビ)捕りも。場所は「沈下橋」。渡れるのは干潮だけ、満潮には水の中に沈む。流れをせき止めないように水は通しながらも、人が渡れるように昔の住民が工夫して造ったという

▼約2時間の“冒険”。派手ではないが、わずかな時間で新たな発見や高揚感を味わった。昔からあるマングローブ林に焦点を当てたシーカヤック体験や観察路の整備は、地域の魅力を掘り起こしたものだ

▼「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」が新たなテーマパーク計画を見送った。北部地域では観光の起爆剤になると期待されていたし、残念だ。ただ、やんばるは掘り起こしがいのある地域の魅力がそれこそ、「わんさか」ある。USJにも決して引けを取らない。

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