「生きやすい制度を」 茨城県内性的少数者 第三者「暴露」被害に 法律婚と待遇差不安

同性愛者を公表している河野陽介さん=神栖市内

同性婚を認めない法規定の「違憲」判決や性的少数者への理解増進法施行など、LGBTを巡る動きが活発化している。性的指向の暴露やトイレ利用時などの不安を抱えるLGBT当事者からは「生きやすい制度に」「違いを楽しめる社会を」との声が聞かれる。

同性婚を認めない法規定については、8日判決の福岡地裁をはじめ、全国5地裁で提起された同種訴訟で4地裁が「違憲」か「違憲状態」と判断。また、23日施行のLGBT理解増進法を巡っては、性自認を巡る差別と区別の違いについて議論が交わされた。

こうした動きについて、LGBT当事者たちは複雑な思いを抱えながら、誰もが暮らしやすい社会実現に向けて声を上げる。

茨城県神栖市の河野陽介さん(37)は、当事者への差別について「その気持ちは心の中にとどめてほしい。誰しも、人と違うところを持っているのだから」と訴える。

河野さんは、子どもの頃から性自認について悩み、大学の友人に同性愛者と打ち明けると、別の友人から「ゲイなんでしょ」と言われた経験があるという。性的指向や性自認を第三者に暴露される「アウティング」被害だった。

河野さんは2015年、県内の性的少数者の交流団体「多様な性を考える会 にじいろ神栖」を設立。幅広い世代の悩み相談に乗っている。

河野さんによると、当時者間でよく話題に上がるのは、同性婚者の婚姻や遺産相続に関する権利不足について。河野さんは「生きやすくなるための制度を整えて」と訴える。

同性婚について「誰にも迷惑をかけない。もっと当事者や若い世代の意見を聞いて」と語るのは、トランスジェンダーの西岡命(みこと)さん(22)だ。

西岡さんは体の性が女性、心の性が男性。交際する女性と7月、茨城県のパートナーシップ宣誓制度を利用する予定だが、法律婚と同等の待遇を受けることは難しいため不安があるという。

他にも、日常生活でさまざまな困り事がある。代表的なのは外出先でのトイレ利用だ。

短髪の西岡さんは、「女子トイレに入ると、男性と間違えられ怖がられてしまうことがある」。多目的トイレは子連れなどが使用することが多く、そもそも未設置の所も少なくない。外出中はトイレの不安が常にあるため「多目的トイレを増やしてほしい」と語った。

「今の日本は男と女の2択で『黒か白』という感じ。もっと選択肢を増やしてほしい。『黒でも白でもない色』があってもいいんじゃないか」。西岡さんは、人との違いを楽しめる社会の実現を願っている。

トランスジェンダーの西岡命さん=水戸市笠原町

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