バイト「無断欠勤」“罰金5000円”は労働基準法違反? 「会社の“規則” VS 従業員の“言い分” 」正しいのはどちらか

バイト先から突然送られてきたLINEメッセージ(画像提供:ゆーた(@yu_tan999)さん)

バイト先から従業員らに対し「無断欠勤は罰金制度にします」とLINEメッセージが送られてきたというSNS投稿が注目を集めた。

突然の無断欠勤に対する“制裁”宣言はもちろん、この連絡に対する従業員の切り返しが話題となった理由だ。

労働基準法は、使用者は労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならないと定めています(労働基準法16条)。ですから、無断欠勤を理由とする罰金制度は無効であり、仮に無断欠勤をしても、罰金を支払う義務はありません。

しかし、自身も多くのアルバイト経験を持つ伊﨑竜也弁護士は「“制裁”自体は、労働基準法16条に違反するものではありません」と指摘する。

「労働基準法」で“制裁”は認められている

労働基準法(以下、労基法)第16条は、労働者の自由意思を不当に拘束して“労働関係の継続を強要すること”を禁止するものであり、労働者の退職の自由を保護するための条文だ。

具体的には、『退職する際は〇〇円を支払わせる』、『退職する場合は研修にかかった費用を全額返還させる』など、労働者の退職の自由を奪うような制限が禁止されている。

伊﨑弁護士によれば、『罰金』とは刑事罰のことを指す言葉であり、労働契約という民事の世界に『罰金』という概念はないというが、「無断欠勤の場合に“制裁”として減給することは、実は労基法で認められております」と説明する。

労基法第91条は、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」と規定しており、一定の条件のもと、減給の制裁を科すことを認めているのだ。

“制裁”を突然言い渡すのはNG

ただし、減給の制裁は、突然、労働者に言い渡せるものではない。

「規則に定めてもいないのに、いきなり『無断欠勤をしたから5000円減給』という処分をすることはできません。事業者側がいきなり規則を作成・適用して実際に減給をした場合には、いわゆる『給与全額払いの原則』(労基法第24条1項)に反し、30万円以下の罰金を科せられる可能性があります(労基法第120条1号)。

事前に就業規則に定めておくことと、あくまで“制裁”なので、「無断欠勤」など労働者に非がある場合に限られることには注意すべきです」(伊﨑弁護士)

知っておくべき“無断欠勤”のリスク

少し古いデータだが、アルバイト情報誌「フロム・エー」が2016年に行った調査によれば、バイト経験のある学生のうち5人に1人が無断欠勤をしてしまった経験があるという。

しかし“無断欠勤”は、他のスタッフを手配する手間が生じ、場合によっては店が開けられないなど経営に打撃を与えるトラブルも起こり得る。経営者・企業を悩ませる行為であることは想像にたやすい。

また、同じ職場で働く人にとっても、迷惑な行為と言えるだろう。都内のアパレル店で働くMさん(30)は、同店で働いていた大学生アルバイトが無断欠勤の後出社しなくなったといい、穴埋めのために自身のシフトも変更せざるを得なくなった経験があると話す。

伊﨑弁護士によれば、就業規則に“制裁”が定められていない場合であっても、たび重なる注意・指導を繰り返しても労働者の無断欠勤が改善しない際には、証拠をもとに解雇することができるという。

無断欠勤を続けたために労働者が刑事罰を受けることはないが、「就業規則に定めがある場合は減給されたり、場合によっては解雇されてしまう場合があります。また、入社時に緊急連絡先などを会社に伝えている場合には、親族などに連絡が行く場合もあります」として、無断欠勤するリスクについて説明する。

「寝坊など、うっかり無断欠勤してしまう可能性は誰にでもあります。その場合は、速やかに会社に連絡し、正直に事情を話しましょう。ウソをつきたくなる心理も分かりますが、ウソによって会社に損害が生じた場合には、会社から損害賠償を請求される可能性がありますので、正直に話した方が結果的にトラブルを防ぐことができますよ」(伊﨑弁護士)

© 弁護士JP株式会社