幼くして老化が進む難病コケイン症候群 懸命に生きる16歳の兄を支える2人の弟

幼くして老化が進む難病を抱える男の子です。2月に医師から告げられたのは、余命2カ月。命と向き合う日々を懸命に生きる男の子を、2人の弟が支えています。

5月、美容院に向かう3兄弟。仙台市に住む高校1年生の須知誉(15歳)さんと弟の蒼心さん(13歳)、柚稀さん(8歳)です。
「6月15日ぐらいまで持つように切ってほしい」「誕生日?」「誕生日!」

須知誉さん

誉さんは、生まれつき難病を抱えています。幼くして老化が進む早老症の1つ、コケイン症候群です。
発症は50万人に1人。4倍から5倍の速さで老化が進むと言われていて、知的障害・歩行障害・視力障害などの症状が現れます。治療法は見つかっておらず、平均寿命は15歳~20歳とされています。

外出の際は、お腹にチューブで流動食を入れる胃ろうで栄養を取ります。それを行うのは2歳下の弟、蒼心さんです。

2017年6月。誉さん10歳の誕生日。
母親富美さん「3人男の子で騒がしいと思いながらも、誉にとっては弟たちが支えになってるっていうか、ワイワイしているのを見て私たちも助かる」
誉さんの誕生日は、家族みんなで祝います。
弟蒼心さん「お兄ちゃん!あん・あん」

幼い頃からお兄ちゃん思いだった蒼心さん。子どもながらに、病気のことを理解していました。
次男の蒼心さん「悲しいことはね、えーと長生きできないこととか。分かんないけど、長生きするかもしれないけど」
誉さんと同じ病気の友達が、19歳で亡くなったと知らされた時には。
次男の蒼心さん「お兄ちゃんはそこまでいくか分からないし、普通の人みたいに80歳とか50歳まで生きるか分かんないし、生きるかもしれないけど」

母親富美さん「いつかお兄ちゃんもっていう思いはいつもあるみたいなので、何か思いながら接してくれてるんだなって。可哀想だけど、早いうちからそういうのを理解させてしまったというか。でも、それでも良いのかな悪いのかなって悩んだ時はあったんですけど、それがうちの家庭としての現実なので。誕生日が来るの、老いていくのは確かに嫌だなって思うんですけど、やっぱり、それ以上に家族と過ごした時間とか私にとっては大きいので、そういう気持ちに変わってきてからこうやって年を壁に貼って時間を積み重ねていくと言うか」

12歳になった誉さん。母親の富美さんは、誉さんが年を重ねるたびに不安が募ります。
母親富美さん「ちょっと弱気なことを言ったんですよね。お兄ちゃんいつまで元気でいられるかなあみたいなことを言った時に、何でお母さん、お兄ちゃんそんな早く死んじゃうと思ってるの。ひどいよ。みたいことを言われた時があってね」
次男の蒼心さん「お兄ちゃんにプレゼント。にぃにがうれしくなりそうな券」
母親富美さん「お兄ちゃん!抱っこしてくれる券とか作ってくれたよ!蒼心」

誉さん13歳の冬。年齢とともに、体力が落ちてきました。富美さんが最も気を付けているのは、体重管理です。
次男の蒼心さん「体重は増えているかな。前は(食べても)変わんなかったけど、急に増え始めたからそれは、食べて肉が付いているから。今まで痩せていたから太ったんじゃないかな。それは良いと思う。ちゃんと体重のことも知っているんだね。お父さんとお母さんが話していて、そこに口を出すと何か言われるけど一応、聞いている」

誉さんは、自力歩行が困難になり、視力をほぼ失いました。
次男の蒼心さん「何か泣いたりしたらそこは心配だけど、何で泣いているのかとか話せないから分かんないから、そこは怖い部分があるけど。泣いたりした時心配って気持ちは増えたけど。どういうのがひどくて、あと何歳まで生きるのかが分からないからそこが知りたい。知っておきたい」

母親富美さん「元気だよね?ね?ほま?」
2月。誉さんは、医師から余命2カ月と宣告されました。両親は話し合った末、蒼心さんと柚稀さんに伝えることに。

兄を支える2人の弟

蒼心さんは黙ってうなずき、柚稀さんは泣きじゃくったと言います。
誉さんと8歳離れている柚稀さん。最近、誉さんの昔の映像を頻繁に見るようになりました。
三男の柚稀さん「柚稀がまだ生まれていない頃だけど、(お兄ちゃんには)しゃべれてたり耳も聞こえてたり、目も見えてた時まで戻ってほしい。今はそんなにしゃべれないし話もできないけど、優しいお兄ちゃん」

16歳の誕生日を祝う

6月15日。誉さん、16歳の誕生日を迎えました。余命宣告を受け、一度は諦めた誉さんの誕生日。今年も家族全員でお祝いすることができました。
柚稀さんは、この日のために、ピアノを練習していました。大好きなお兄ちゃんに届けます。
「ハッピーバースデートゥユーおめでとう!!」「おめでとう16さーい!!」

希少難病のコケイン症候群は、2015年に国の指定難病に認定されましたが、研究はなかなか進んでいません。
須知さんご家族は、この病気を知ってもらい研究に少しでも役立てればという思いで、取材を受けてくださっています。
このような病気があるということを私たちも認識していきたいです。

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