旬を食べよう〜東海地方の伝統野菜〜【十六ささげ(じゅうろくささげ)】愛知県北西部・岐阜県南西部

日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。

そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として、親しまれています。

新連載「旬を食べよう〜東海地方の伝統野菜〜」第1回は、「あいちの伝統野菜」と「飛騨・美濃伝統野菜」に認定されている「十六ささげ(じゅうろくささげ)」(写真)をフカボリします。

十六ささげの名前の由来は?

細長い「十六ささげ」(上)と、同じサヤマメで旬の時期が重複するサヤインゲン(下)(定規の単位はミリ)

アフリカ原産とされる「ササゲ」は、マメ科ササゲ属の一年草。平安時代の東大寺の記録にその名があることから、それ以前に中国を経由して渡来したとされています。

同じく夏が旬で、見た目も混同されやすいサヤインゲンとは、原産地も属性も、渡来時期も違います。※サヤインゲンは中南米原産、インゲンマメ属、江戸時代に渡来。

ササゲの仲間には、アズキ(小豆)やリョクトウ(緑豆=もやしの原料)などがありますが、一般に「ササゲ」といえば、未熟な若いサヤを食べる、夏が旬の緑黄色野菜のこと。

長いもので50センチ以上になる「十六ささげ」は、沖縄県や福島県など、各地で作られていますが、特に、愛知県北西部(愛西市・稲沢市)や岐阜県南西部(羽島市、本巣市)で多く作られており、それぞれ「あいちの伝統野菜」「飛騨・美濃伝統野菜」に認定されています。三重県にも、十六ささげを具材に使った「盆汁(ぼんじる)」という郷土料理があります。

「十六ささげ」の名前の由来は、サヤの中にマメが16個前後入っていることからといわれています。

ヘタ近くを輪ゴムで束ねて売られている「十六ささげ」

サヤが細長いので、扱いやすいよう、店頭に並ぶときは輪ゴムで束ねられた状態で袋に入れられて売られています。

夏に重宝する「十六ささげ」おすすめの食べ方は?

細いため火の通りがはやく、短時間で調理できる「十六ささげ」は、栄養価も高く、さらに彩りの良い食材として夏に重宝する食材です。栄養素としては、カロテンや食物繊維が豊富で、タンパク質やビタミン類、ミネラルなどもバランスよく含みます。さっとゆでてサラダや和え物の具材にしたり、煮物の仕上げに加えると、彩りや栄養のバランスが良くなります。油との相性も良いので、かき揚げに入れたり、肉などと炒めてもおいしいです。

「十六ささげのお浸し」短時間で調理できて栄養価も高い一品

中でも、最も手軽にできるのが「お浸し」です。輪ゴムで束ねたまま、さっと洗って、さっとゆで、3〜4センチ幅ほどに切って、お好みのつけ汁(※)で合えるだけ。最後にすりごまをパラリとかければ、香ばしさと栄養もプラスできます。

※しょうが醤油、さとう醤油、だし醤油、味噌だれなど

ゆでるときは、輪ゴムをつけたままがおすすめ。鍋の中でバラバラになってしまって扱いにくくなるのを防げます。ゆで上がった後は冷めるのもはやいため、すぐに切って、和えてと、手早く調理できます。一度にたくさんゆでて適当な長さに切ったものを冷凍保存しておけば、解凍も比較的はやいので、使いたいときにすぐ使えてとても便利です。

暑さや湿度、エアコンの冷えなどにさらされ、体調管理が難しい時期ですが、栄養豊富で彩りの良い旬の「十六ささげ」を食べて、厳しい東海地方の夏をおいしく健康に過ごしてみてはいかがでしょうか。

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