カロリー0の人工甘味料が危ない!糖尿病や重大疾患を招く可能性をWHO指摘

人工甘味料で健康被害の可能性が(写真:アフロ)

“カロリーゼロ”や“低カロリー”のダイエット食品に使われる人工甘味料に、長期的なダイエット効果は期待できないーー。

5月15日にWHO(世界保健機関)が発表したガイドラインが波紋を呼んでいる。WHOは283件の研究報告を分析。人工甘味料を含む非糖質系甘味料は、3カ月など短期間の使用では体重や体格指数(BMI)を下げる効果があるが、6〜18カ月の長期間だと減量効果が見られないという。

非糖質系甘味料とは何か。日本糖尿病学会専門医で銀座泰江内科クリニック院長の泰江慎太郎先生に聞いた。

「甘味料といえば砂糖が代表格ですが、ほかにもでんぷん由来のブドウ糖や果糖などの糖質系甘味料と、それ以外の非糖質系甘味料があります。非糖質系にはアスパルテームやスクラロースなどの人工甘味料と、天然由来のステビアや甘草などがあり、どちらも砂糖の数百倍の甘みを持つのが特徴です」

【非糖質系甘味料】

〈人工甘味料〉/〈砂糖と比べた甘さ〉/〈おもに含まれる食品〉

アスパルテーム/200倍/ダイエット食品、砂糖代替食品、清涼飲料水、菓子
アセスルファムK/200倍/砂糖代替食品、菓子、清涼飲料水、漬物、つくだ煮
スクラロース/600倍/飲料、デザート、ドレッシング
ネオテーム/7000〜1万3000倍/ヨーグルト、菓子、コーヒー飲料、清涼飲料水

〈天然甘味料〉/〈砂糖と比べた甘さ〉/〈おもに含まれる食品〉

ステビア/200〜300倍/低カロリー食品、スポーツ飲料、菓子、漬物
甘草/200〜300倍/しょうゆ、みそ、漬物、つくだ煮、清涼飲料水
羅漢果/300〜400倍/砂糖代替食品、健康食品、菓子

人工甘味料が中心の非糖質系甘味料は強力な甘さを持つため、ごくわずかな使用量で甘みづけが可能で、その分カロリーが低く抑えられる。非糖質系甘味料があるおかげで、低カロリーのダイエット食品が生まれたのだ。

日本に住む女性の約8割が「自分の体形を気にする」、男女合わせて約6割がダイエット経験者という調査もある(’20年・マイボイスコム)。商品棚に、カロリーゼロと通常カロリーの炭酸飲料が並んでいたら、カロリーゼロを選ぶという人も多いだろう。

「人工甘味料については以前から注意を促す調査研究も多く、WHOの勧告はもっともだと思います」

そう話すのは『糖尿病専門医だから知っているアルツハイマー病にならない習慣』(フォレスト出版)の著者でAGE牧田クリニック院長の牧田善二先生だ。

牧田先生によると、糖質をたくさん取っていると、脳が甘いものが欲しくてたまらない“糖質中毒”になるのだそう。そうなると、ご飯を食べずにスイーツなど甘いものを大量に摂取し空腹を満たすような食生活に陥る人も。

泰江先生も脳の働きを指摘する。

「舌が甘さを認識すると、脳内報酬系と呼ばれる部分が刺激され、ドーパミンが出て、人は快感を覚えます。だから甘いものや糖質は、もっともっと食べたくなる依存性があるのですが、人工甘味料などでも同じことが起こります」(泰江先生)

つまり、カロリーゼロなのに人工甘味料などの長期使用で太ってしまうメカニズムは、まず脳が甘いものを欲する糖質中毒を起こし、そうなると歯止めが利かなくなってカロリーを気にせず甘いものを食べ続けてしまうというものだと考えられる。

さらにWHOの勧告は続く。

長年人工甘味料などを使い続けていると、健康被害を引き起こす危険性があるという。特に、糖尿病発症のリスクは20〜30%、脳卒中のリスクは19%、心血管疾患全体のリスクは32%上昇する。

なんとも恐ろしい警告だが、類似した研究が金沢医科大学にあった。

同大学の櫻井勝先生は糖尿病でない35〜55歳の約2000人について、ダイエット飲料の習慣的な摂取量と糖尿病発症との関連を追跡調査。7年後のデータでは、ダイエット飲料を週に1杯(237ミリリットル)以上飲む人は、飲まない人と比べて糖尿病発症リスクが1.7倍高かったという(’17年発表)。

■食品選びはパッケージの裏を見て

「ほかにも、人工甘味料を摂取し続けたマウスは不安症候群の発症リスクが上がるなどさまざまな研究がありますが、どれも長期間摂取し続けた場合の危険性です。『今日だけ飲む』といった単発的な摂取なら心配はいりません。問題は、水代わりにカロリーゼロ飲料を毎日大量に飲む人や、料理の甘みづけに砂糖を使わず、人工甘味料でできた砂糖代替食品ばかりを利用する人などです。WHOの勧告に従い、長期間の使用は避けたほうがいいでしょう」(泰江先生)

これまで“ダイエットの味方”だと思ってきたカロリーゼロ食品に頼ってはいけないとは!

WHOはダイエットのために、子どものころから甘い味付けを減らし、糖質や甘いものが欲しくなる脳を作らないようにすることを推奨している。

私たち中高年女性はどうしたらいいのだろう。

「糖を欲しがる糖質中毒脳を改善するには、糖質を取らないことが近道です。特にご飯やパンなどを減らしましょう。タンパク質や野菜などでしっかりと栄養を取ってください」(牧田先生)

「中高年女性は更年期以降、女性ホルモンが減少することで、内臓脂肪の増加、血圧の上昇、筋肉量の低下など好ましくない状況に陥りがちです。タンパク質と食物繊維をたくさん取りましょう。特に食物繊維は多くの日本人が不足している栄養素です。食物繊維を取って腸内環境を整えると、便通が改善され、ダイエット効果も期待できますよ」(泰江先生)

さらに泰江先生は、一見「体によさそう」と感じる野菜ジュースやフルーツジュース、飲むヨーグルト、スムージー、エナジードリンクなどにも注意が必要だという。

「食品を選ぶ際は必ずパッケージの裏面を確認してください。カロリーや糖質量の数字だけでなく、人工甘味料などが入っているかどうかチェックを」(泰江先生)

リスクの高い人工甘味料を避け、タンパク質と野菜多めの食生活で健康的なダイエットに挑戦しよう。

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