チェルシーの動きが発端、UEFAが選手との長期契約による費用の分散を制限…最長5年の分割まで

[写真:Getty Images]

欧州サッカー連盟(UEFA)は、7月1日より選手の契約に関する規定を変更することを決定した。

今回の規定の変更は、トッド・ベーリー氏がオーナーに就任してからのチェルシーの動きに起因している。

チェルシーは今シーズンの2度の移籍市場で6億ポンド(約1100億円)以上を費やし大型補強を敢行した。

選手を大量に補強すること自体、ファイナンシャル・フェア・プレー(FFP)に抵触しなければ問題ないが、チェルシーは選手と長期契約を結ぶことで費用を分散。例えば、冬の移籍の目玉となったウクライナ代表FWミハイロ・ムドリクやアルゼンチン代表MFエンソ・フェルナンデスは8年契約という異例の長期契約。これは選手との契約を長くすること以上に、獲得にかかった費用を分散させる意図がある。

実際には8000万ポンド(約146億円)を超える契約だったが、今年の会計ではたったの730万ポンド(約13億3000万円)となっていた。

UEFAに加え、他クラブもこのやり口を問題視。UEFAはこの手法を取れないように動き、新シーズンに向けて新たな規定を策定した。

新たな規定では、選手の契約に関しては各協会の規定に合わせて長期に結ぶことは可能に。しかし、移籍金に関しては5年で償却しなければいけないこととなり、今回チェルシーが取った手法は不可能となる。なお、7月1日以前の契約であれば、この新規定は適用されない。

UEFAは今回の規定変更について「全てのクラブの平等な扱いを確保し、財政的持続可能性を向上させる」ためだとし、会計目的でのスワップ取引の悪用を制限することも期待されているとした。

「UEFA執行委員会は、2023年7月1日に施行させるUEFAクラブライセンスおよび財務持続可能性規則に対するいくつかの重要な修正を承認した」

「新しい規則は、選手登録の償却および選手交換取引(いわゆる「スワップ」)の場合に従うべき、会計処理を定義している」

「全てのクラブの平等な扱いを確保し、財政的持続可能性を向上させるため、選手登録の償却は5年に制限される。契約延長の場合、償却は延長された契約期間にわたって分割できるが、最大5年までとなる」

「このような変更は、クラブの運営方法を制限するものではない(つまり、各国の統括団体によって5年を超える期間の選手契約を締結することを許可されているクラブは、引き続き契約を締結することができる)。すでに行われた移籍に遡って適用されることはない」

「選手の取引に関しては、移籍オペレーションがスワップとして認定されるべきかどうかを評価するのはクラブの責任であり、その場合は国際会計基準に沿って会計処理しなければならないと規定されている」

「このアプローチは、スポーツ目的ではなく、人為的に移籍利益を膨らませることのみを目的として、移籍オペレーションが行われることを阻止することを目的としている」

「現在、クラブの監査役は、説明されている会計要件が正しく適用されていることを確認し、そうでない場合は矛盾を報告することが義務付けられている」

契約年数に関しては、そのクラブが属する協会などの規定に従って長期に結ぶことは可能。ただ、会計上は最長5年に制限されるため、ムドリクなどの形は今夏の移籍から取ることができないこととなる。

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