にぎわい回復へ ソフト支援強化 西日本豪雨5年、伊東市長に聞く

西日本豪雨5年を前に、共同インタビューに答える伊東市長

 2018年7月の西日本豪雨から5年の節目を前に、倉敷市の伊東香織市長は29日、報道各社の共同インタビューに応じた。大規模な浸水被害が生じた同市真備町地区で堤防強化や橋といったハード整備が着実に進んでいるとしつつも「にぎわいの回復は遅れている」と述べ、ソフト面の支援を強化する考えを示した。

 市が策定した同地区の復興計画は23年度が最終年度となり、国や岡山県の担当分も含め主要なハード整備がおおむね完了する。「(計画遂行に向け)一つずつ懸命に取り組んできた。5年は長い期間ではあるが、短かったようにも感じる」と振り返った。

 ハード面では、小田川と高梁川の合流点付け替えや堤防拡幅の治水事業が着実に進んでいる現状を説明。就農や創業といった産業再生の動きにも触れ「真備を離れた皆さんが『帰れる』と感じていただける状況になっている」と強調した。

 地域の交流が停滞している要因は「新型コロナウイルス禍が重なり、人とのつながりが難しい状況が続いた」と説明。ただ、コロナの5類移行でイベントなどを開催しやすい環境になったとし「触れ合いが広がっていくよう、にぎわい創出を力強く進めていく」と語った。

 新たな交流拠点として、本年度内の完成を目指して真備町地区で整備を進める「まびふれあい公園」を活用する考えを表明。「防災学習や被災地視察の受け入れに加え、地元の特産品をアピールするフェアなども行いたい」とした。

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった精神的な苦しみを抱える被災者が少なくない状況も踏まえ「住民の心の回復が進まないと真備の復興は完了しない。一人一人の状況に合わせた支援を継続していく」と述べた。

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