変わる「憩い」の形 奈良市役所西側の歩道上の桜並木伐採へ

奈良市役所西側の歩道上の桜並木=21年3月29日、同市二条大路南1

 奈良市庁舎北棟等改修工事の実施に伴い、庁舎西側の市道の歩道に植えられている桜13本が伐採される予定であることが、29日までに、市への取材で分かった。市は同時に、使われなくなった噴水施設が残る庁舎南側の前庭に、新たに芝生広場を整備するなど「憩いの空間づくり」を進める計画。一方で、長く市民らの目を楽しませてきた桜並木が姿を消すことになり、「憩い」の形が時代とともに変わりそうだ。

 桜並木は、市庁舎が東寺林町から現在の二条大路南1丁目に移転した1977(昭和52)年に「市民の憩いになれば」と、前庭部分や、西の歩道上にも等間隔で植栽された。当時を知る市ОBからは、市役所移転前にあった旧三笠中学の校舎が風流なヤナギの木に囲まれ、「その名残を残したかったのでは」との声も聞かれる。桜は植えて間もなく花を付け始めたといい、特に歩道側の桜は春風に散る花吹雪が圧巻。桜の開花の様子は横に建つ議会棟の議員控室から間近に見ることができ、道行く市民や、職員からもその姿が愛(め)でられていた。

 しかし、幅1メートルもない歩道上は、桜の根が張り所々隆起。高齢者やベビーカーを引く人など足元の危険性を指摘する声もあった。

 市によると今回の道路拡幅は市役所敷地内に歩道を広げ、約2メートルを確保。片側1車線の道路は時間によって混雑するため、南行き車線について大宮通りとの交差点に右左折レーンを設ける計画という。このため、市は「桜並木は伐採するしかない」と説明する。

 市担当課は「桜の木は内側が空洞化するなどもろくなっていて、台風シーズンなど折れた大きな枝が道路をふさぐなど危険なこともあった。みんなに愛された桜並木の伐採は正直しのびなく残念だが、やむを得ない」と話している。

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