昆虫の擬態と植物の擬態、どちらがすごい?植物が擬態する理由とは?【図解 植物の話】

子孫を残すために擬態する植物もなかなか

自然界では動物、特に昆虫が擬態することはよく知られています。花に擬態するハナカマキリ、木の皮に擬態するキノカワガ、枝に擬態するシャクガの幼虫などたくさんいます。鳥などの敵から身を隠すためか、かくれて獲物を狙うためです。植物も負けてはいません。フェイク昆虫ともいうべき植物は、ランのなかまにたくさんあります。ラン科の植物は、2万6000種もの野生種があり、南極を除く大陸や島々のどこにでも見つかる、世界で一番大きい植物のファミリーです。また植物の進化上、最後に登場したのがランです。研究によれば、ランは8400万年〜7600万年前の白亜紀後期に現れ、6500万年前の恐竜絶滅時代を華奢な体で生き延びた植物ですので、子孫を残すさまざまテクニックを持っていたに違いありません。花を咲かせるランなど、虫媒花(ちゅうばいか)といわれる植物は、花の色や香りで花粉を運ぶ昆虫(送粉昆虫)をおびき寄せ、報酬として花の蜜や花粉を差し出します。しかしランの中には、花粉を運ばせるだけで、報酬を出さないランもあります。

これは自分の花粉を自分のめしべにつける自家受粉を避け、確実に他の個体の花に受粉する他家受粉をするためといわれています。他家受粉は種が弱体化しないためには必要だからです。ランの唇しん弁べんがメスバチそっくりで、しかもメスバチが出すフェロモンまで出すランが何種類かあります。これを見つけたオスバチはフェイクメスに交尾しようとしますが、できずに花粉をつけて飛び去るという仕組みです。一度だまされたオスバチは戻ってこないで、ほかのフェイクメスバチを見つけると、交尾を試みます。こうして、確実な受粉が行われます。ランの擬態は子孫繁栄のためなのです。

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植物にも血液型があるってホント?

わたしたちの体を流れる血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンを調べると、分子が植物の葉緑素、クロロフィルとそっくりです。違うのは、真ん中にある元素がヘモグロビンは鉄、クロロフィルはマグネシウム、たったそれだけの差です。それなら植物には、人間と同じような血液型があるのでしょうか。じつは、血液型をもつ植物はけっこうあります。人間の血液中は血中の「糖たんぱく」の種類で決まります。1割くらいの植物は、人間と似た糖たんぱくをもっていることが知られています。植物の血液検査の結果、O型やAB型が多く、たとえばダイコンやキャベツはO型、ソバはAB型となるそうです。植物を切っても動物のように出血しませんが、動物と植物の基本的な生き方には似たところがあります。マメ科植物には、ヘモグロビンに似たクロロフィルのほかに、レグヘモグロビンがあります。名前からわかるように、レグヘモグロビンはヘモグロビンに似た働きをします。それは両者ともに酸素を運ぶ役割をしていることです。

では、レグヘモグロビンはいつ酸素を運ぶのか。まず、マメ科植物には根に丸い「根粒」とよばれるコブがたくさんあります。この中に「根粒菌」というバクテリアがいて、空気中から窒素をマメ科植物に供給します。代わりにマメ科植物は、根粒菌にすみかと栄養分提供しますから、マメ科植物と根粒菌は「共生」という互いに利益を得る関係です。しかし、根粒菌が窒素固定をするときにジレンマが生じます。根粒菌は窒素固定に必要なエネルギーを確保するために酸素呼吸をしますが、窒素固定に必要な酵素は、酸素があると活性を失うのです。そこで、マメ科植物はレグヘモグロビンを根粒菌に送って、素早く余分な酸素を運んで取り除きます。

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執筆者プロフィール
植物学者・静岡大学教授。1993年、岡山大学大学院農学研究科(当時)修了。農学博士。専攻は雑草生態学。1993年農林水産省入省。1995年静岡県入庁、農林技術研究所などを経て、2013年より静岡大学大学院教授。研究分野は農業生態学、雑草科学。

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