【第2回WUBS】高麗大學校、KBLスターをコーチングスタッフに加え快進撃継続中

昨夏初めて開催され、今年の8月に第2回を迎えるWUBS(Sun Chlorella presents World University Basketball Series=ワールド・ユニバーシティー・バスケットボール・シリーズ)に、韓国から初出場する高麗大學校は、同国を代表する名門大学の一つだ。スポーツチームにはタイガースというニックネームがあり、バスケットボールチームのユニフォームにも虎の絵柄があしらわれている。WUBSへの出場権は、韓国の大学リーグであるUリーグで昨年優勝したことで手にした。また今年のUリーグでも、高麗大は直近の6月15日に行われたシーズン13試合目まで負けなしの快進撃で首位を走っている。

WUBSでの高麗大の初戦は8月11日(金=DAY1)の第2試合で、山﨑一渉が所属するラドフォード大(アメリカ)が相手。日本にとって東アジアのライバル国の強豪チームが、アメリカ大学界の新進気鋭のチームにどのような戦い方をするか、非常に興味深い。それに加えてチーム全体とは別に、山﨑との縁という観点からもこの一戦は見どころを提供する。というのも、高麗大にはU19日本代表の一員としてFIBA U19ワールドカップ2021で対戦したU19韓国代表のメンバー——190cmのフォワード、キム テフンと200cmのセンター、シン ジュヨン——が在籍しているからだ。

あの試合で日本は92-95で敗れたが、山﨑自身は3Pショット10本中5本成功を含む32得点、9リバウンドと爆発した。この成績はいずれも山﨑にとってトーナメントハイにあたる数字。大会を通じて平均14.6得点、3P成功率43.9%(大会全体の3位)を記録した山﨑だが、韓国戦のパフォーマンスはそのポテンシャルの高さを決定的に世界に知らしめるものだった。その後の渡米とラドフォード大入りにつながる大きなステップの一つとなったことは間違いない。その一戦でキムとシンは同じコートに立っていた。

同大会で韓国には、今秋から八村 塁の母校ゴンザガ大に加わる203cmのフォワード、ヨン ジュンソクという大黒柱がいた。しかしキムも、チーム3位の8.0得点に同2位タイの3.6リバウンド、同単独2位の2.4アシストを記録して存在感を放っていた。日本との一戦でも3Pショット3本を決めて9得点に8リバウンドという数字を残している。シンもキムに続くチーム4位の平均6.1得点。日本と対戦した試合ではフリースロー5本を決めて5得点、3リバウンド、1アシストで勝利に貢献した。

Sun Chlorella presents World University Basketball Series大会公式サイト

FIBA U19ワールドカップ2021でのキム テフン(写真/©FIBA.U19WC2021)

こちらは同大会でのシン ジュヨン。現在は高麗大のセンターとして活躍している(写真/©FIBA.U19WC2021)

なお、6月24日からハンガリーで開催されているFIBA U19ワールドカップ2023のU19韓国代表にも、高麗大からムン ヨヒョン、ユ ミンス、ユン キチャンと3人が選出されている。

日韓大学王者同士の激突もありうる第2回WUBS

日本の隣国である韓国と日本のバスケットボールにおける関係は、その他のさまざまなスポーツと同じく激しいライバル関係にあり、どんな大会でもお互いがお互いに勝てるようにプレーし、勝てるように応援する文化が長年にわたって醸成されている。交流の歴史はFIBAが開催する国際試合の舞台だけでなく、「李相佰盃(りそうはく はい)」として知られる学生選抜チーム同士の対抗戦が今年第46回目を迎えたことからもわかるように長く、深い。

高麗大には、単独チームとして日本の大学との定期戦を長年行ってきた歴史もある。日本との関係性は親密だが、WUBS出場で日本のバスケットボールファンにとっていっそう親しみの湧くチームになることだろう。今回は1回戦の結果いかんで大会2試合目で東海大かチャイニーズ・タイペイの国立政治大のいずれかと対戦することになる。もしも東海大との対戦が実現すれば、プライズがかかるビッグイベントで日韓の大学王者同士が激突するという大きな意味合いを持つ一戦となるのだ。

仮に高麗大と国立政治大の対戦となった場合にも、これまで日本では比較的機会が少なかった東アジアのライバル国の学生同士の対戦を、国立競技場代々木第二体育館のコートで見られることになる。白鷗大はブラケット(勝ち上がり表)の中では高麗大と逆の山に入っているが、試合経過しだいで決勝戦での対戦もありうる形だ。大会の動向がどんなものになるかはまったく予想がつかないが、いずれにしても、日本の男子バスケットボール界にとってプラスの刺激になることは間違いない。

【関連記事】
Sun Chlorella presents World University Basketball Series大会公式サイト

\--{アンダーカテゴリー韓国代表や李相佰盃選抜のタレントをそろえ新時代に突入}--

アンダーカテゴリー韓国代表や李相佰盃選抜のタレントをそろえ新時代に突入

高麗大の攻守の要となっているムン ジョンヒュン。身長194cmのフォワードでU18韓国代表にも名を連ねた実績がある(写真/©️Korea University)

さて、韓国の大学王者、高麗大はどのようなチームなのか、少し情報をまとめてみたい。

まず注視すべきなのは近年の流れだ。Uリーグは昨シーズン高麗大が王座に就くまで、延世大が6連覇していた。この“延世大王朝”が終わったのは、ジョー ヒジュン監督率いる高麗大のコーチングスタッフにキム テホンがアシスタントとして加わった直後にあたる(以下「Aコーチ」と記述するが公式サイトなどでは「コーチ」とされており正式役職ではない)。

キムAコーチは韓国のプロリーグKBLで2021年まで10シーズンに渡ってプレーしたスターであり、キャリア後半の5シーズン在籍した原州DBプロミでは、中村太地(昨シーズンはB1のシーホース三河でプレー)とチームメイトだった人物だ。今年行われた李相佰盃の韓国学生選抜にもコーチングスタッフの一人として名を連ねていた。プロキャリアを終えたばかりでまだ若いキムAコーチの獲得による学生の指導面でのテコ入れは、チームの勢いにつながっているのかもしれない。

今年の李相佰盃と言えば、高麗大からはプレーヤーとしても先に紹介したキム テフン、ガードのパク ムビン、フォワードのムン ジョンヒュン、そしてセンターのヤン ジュンと4人がロスター入りしていた。結果としては韓国学生選抜が日本学生選抜に2勝1敗と勝ち越して大会を終えている。

今シーズンのリーディングスコアラー、パク ムビン。今年延世大で行われた李相佰盃でも得点源として活躍した(写真/©️Korea University)

彼らを含め、現在進行中のUリーグでは現時点までにコートに立ったのは15人。その平均身長は191.5cmと比較的大きく、200cm越えのビッグマンもヤンを含め3人いる。

身長200cmのヤン ジュンも李相佰盃で活躍したメンバーの一人だ(写真/©️Korea University)

韓国のバスケットボールには有能なシューターを育ててきた伝統があるが、現在の高麗大においては、進行中のUリーグで3P成功率46.8%(62本中29本成功)のを記録しているムン ジョンヒュンがそれを受け継ぐ存在と言えそうだ。ほかにもキム テフン、ムン ジョンヒョン、ムン ヨヒョン、ユン キチャンとロングレンジを武器とするペリメーターのプレーヤーがいる。チームとしての3P成功率(33%)と成功数(平均8.8本)はUリーグトップの数字だ。

高麗大のユニフォームを着たキム テフンも紹介しておこう。今シーズンはチーム2位の平均13.6得点を記録している(写真/©️Korea University)

得点面ではムン ジョンヒュン(平均13.6得点)、パク ムビン(平均14.6得点)、ガードのムン ヨヒョン(平均10.9得点)の3人が2桁得点を記録してけん引している。この中でムン ジョンヒュンは平均9.6リバウンドと5.1アシストもチームトップの数字。彼の活躍はWUBSでも高麗大の躍進のカギとなりそうだ。

彼ら15人を擁して高麗大は13連勝中なわけだが、前述の3Pショットの成功数と成功率のほかに1試合当たりの得点(85.9)、フィールドゴール成功数(24.6本)と成功率(57%)、アシスト数(22.4本)とオフェンス面の主要スタッツの多くでリーグ1位の数字をたたき出している。ディフェンス面を見ても11.7スティールと3.9ブロックはどちらもリーグ2位で、相手に許した失点(57.0)、フィールドゴール成功数(14.1本)と成功率(39%)、3Pショットの成功数(5.1本)と成功率(23%)、アシスト数(12.0本)がいずれもリーグで最も少ない。

リバウンドに関しては自チームがリーグ1位の47.0本に対し相手には31.2本しか獲らせていない。この約16本差のアドバンテージと厳しいディフェンスは、ハイスコアリングな高麗大のオフェンスの起爆剤となっていることがうかがえる。

WUBSでは、まずはお手並み拝見という初戦の相手がラドフォード大だが、このデータをどれだけ再現できるだろうか。普段通りのバスケットボールができるとすれば、どのチームにとっても非常に手ごわい存在だろう。
※本文中のスタッツは6月15日までのデータ

Sun Chlorella presents World University Basketball Series大会公式サイト
Sun Chlorella presents World University Basketball Series大会公式チケット販売サイト

© 日本文化出版株式会社