2022年度の教員勤務実態調査結果から見えてくること~業務時間が短縮されたらやりたいことは?~

2023年4月28日、2022年度の教員勤務実態調査の速報値が公表されました。
本調査は、教員の勤務の実態や働き方改革への取り組みに関する進み具合を把握するために行われたものです。

教員勤務実態調査の目的と対象

教員勤務実態調査の目的

2019年1月の中央教育審議会答申にて、文部科学省では働き方改革の取組の進展を把握すべく、教員勤務実態調査を実施すると決定されました。
また、2019年の給特法案に対する附帯決議においても、3年後を目途に教育職員の勤務実態調査を行ったうえで、給特法の抜本的な見直しに向けた検討を加え、その結果に基づき所要の措置を講ずることが求められました。
こうした経緯を踏まえ、教師の勤務実態や働き方改革の進捗状況等を把握・分析することを目的として実施されたのが、「教員勤務実態調査」です。
なお、本調査結果の数値は速報値であり、令和5年度末頃に確定値に更新される予定とのことです。

公立学校教員の給与

前述の「給特法」とは、正式名称「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」といい、日本における公立学校の教員の給与や労働条件を定めた法律です。
教員は、一般の労働者とは異なり、残業手当が支給されない代わりに「月給の4%に相当する額」が基本給に上乗せされることになっています。
昨今、教員が時間外勤務をしているのにもかかわらず、正当な対価を受け取れていないことが問題になっています。
教員の仕事は、創造性が必要とされ、正解や上限がない仕事といわれています。
しかし本来、良い待遇となるために定められた法律が待遇を悪化させている要因の一つとして挙げられ、見直しをしていく動きが起こっています。

教員勤務実態調査の対象

教員勤務実態調査の対象は、小学校1,200校、中学校1,200校、高等学校300校に勤務するフルタイムの常勤教員です。
常勤教員は、校長、副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、講師、養護教諭、栄養教諭などを指します。

長時間勤務の教師が依然として多い

2022年度の教員勤務実態調査結果(速報値)では平日と土日の比較、8月と10、11月の比較など、さまざまな視点での結果が出ています。
経年での比較でみると、2016年度にくらべて、すべての職種において在校時間が減少傾向にあるものの、依然として長時間勤務の教師が多い状況にあります。
1日の在校時間および持ち帰り時間の結果を見てみると、持ち帰り時間が増加傾向にあるようです。
また、30歳以下の在校時間が長く、授業時間以外も多様な業務に時間が割かれている印象があります。
土日の在校時間については、中学校において「部活動・クラブ活動の時間」が他とくらべても長い傾向にあるようです。
もちろん小学校から部活やクラブ活動がある学校も多いですが、中学校から部活動が盛んになるに伴い、顧問として指導者になる教師も多いのではないでしょうか。
さらに「必要な技能を備えていない」と思う顧問の割合は80%を越えており、この数値は2016年度からもあまり変動がありません。
必要な業務に対して人手不足である印象が強いです。

学校における働き方改革の実施

2022年度の教員勤務実態調査結果(速報値)によると、学校閉庁日を実施する学校の割合は大きく増加し、ほとんどすべての学校で実施されていることがわかります。
加えて、ノー残業デーを実施する学校の割合はやや増加しているようです。
しかしながら、朝の勤務開始時刻が設定されていても登校時間の早い生徒がいたり、保護者から欠席などの連絡が入ったりするなど、「就業時間前だから関係ない」ということはありません。
開店時間が決まっているような施設とは異なり、学校ではイレギュラーな対応も多くある印象です。
また、働き方改革に関する意識調査では、「仮に今よりも業務時間が短縮された場合、空いた時間をどのように使いたいですか」との問いに対しては、「業務外のプライベートの時間を充実させたい」と回答した者が小学校において約49%、中学校において約56%いる一方で、「更なる授業準備や教材研究等に充てたい」など、業務の質向上に関する回答が小学校において約48%、中学校において約41%存在しています。
プライベートの時間の充実ももちろんですが、教材研究に多くの時間を当てたいと考える方もいることから、今後の未来のためにも小さなことから一歩ずつ取り組むことが重要ではないでしょうか。
一般的な会社とくらべても働き方が異なる教育現場では「過去に当たり前だったことを変えていく意識」が大切であると考えます。

<参考>
文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)【速報値】について」

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