【海・川編】夏のレジャーは危険がいっぱい! リスク回避のために押さえておきたい要注意ポイントとは

梅雨が明けて本格的な夏を迎えると、各地の海水浴場では海開きを迎えます。夏は涼しい川遊びにも惹かれますよね。今年の夏はコロナ5類移行に伴い、海や山へのお出かけを計画している人も多いのでは? しかし、楽しい野外レジャーにはさまざまなリスクがあり、場所によって備えるべきポイントがあります。本記事は、お出かけの前に知っておくべき注意点【海・川編】として、子どもと楽しむ海水浴や川遊びを想定し、注意すべきポイントをまとめました。レジャーシーズンを前に、今一度、確認しておきましょう。

海水浴、川遊び……楽しい水辺に潜む危険!

海水浴をはじめ川遊びやプールなど、夏は水辺のレジャーを子どもと一緒に楽しみたいですよね。とはいえ、水辺のトラブルは重大事故につながりやすく、子どもの水難事故は河川で多発すると聞きます。あらゆるシーンを想定して、事前に計画&準備をしておくと安心です。そこで、親が知っておくべき注意点を挙げます。

水難につながりやすい危険な場所に注意! ~ 海編 ~

離岸流が発生している場所は危険!

離岸流(りがんりゅう)とは、海岸から沖に向かう強い潮の流れのことで、海岸に打ち寄せた波が沖に戻ろうとして発生します。この離岸流に巻き込まれると、あっという間に沖に流されてしまいます。

離岸流は海水浴場でも発生し、海水浴場における溺水事故の約50%(2013~2019年平均)が離岸流によるものです。

参考:日本ライフセービング協会 e-Lifesaving <事前学習> 海編

河口付近や堤防、岩場付近は危険!

河口は川と海の流れが交じりあう場所なので、複雑な水の流れが発生しています。また、河口付近の海底も複雑で常に変化していて大変危険です。岩場や堤防などの構造物付近も同様に潮の流れが複雑で、海底が波で削られ水深が急に深くなる場所もあります。

海に入らなくても、これらの場所には近づかないほうがよいでしょう。濡れていて滑りやすく、海に落ちると登れない場合もあります。

また、河口付近や堤防、岩場も離岸流が発生しやすい場所です。これらのある場所の海には入らないようにしましょう。

水難につながりやすい危険な場所に注意! ~ 川編 ~

川がカーブしている場所の外側は危険!

川の地形は複雑で、危険な場所を断定できません。右岸と左岸でも川の流れが違っていたり、緩やかな流れに見える浅瀬でも急に深くなったり、大人でも立っていられないほど流れが強くなったりすることもあります。

一般的に、川がカーブしている場所では川の外側(淵側)が深く、流れが早くなっているため、川がカーブしている場所では外側へは近寄らず、内側(岸側)だけで遊ぶようにしましょう。

水辺の人工物付近は危険!

テトラポットや堰堤(えんてい)などの人工物付近には深い落ち込みがあり、強い水流をともなう渦ができていることがあります。特に堰堤の下ではライフジャケットを着けていても脱出できないような特殊な水流が発生しています。水中や水辺にある人工物は、周囲の水の流れや川底の状態を大きく変化させているので近づかないようにしましょう。

中州は危険!

日本の川は急勾配で流れが早く、雨が降ると一気に水かさが増える傾向にあります。増水で中洲から岸に戻れなくなってしまうだけでなく、中洲自体が水没してしまうこともあります。画像のような植物が生えていない中洲は、そこがしょっちゅう冠水しているという証拠です。中洲では常に水の流れや水位に注意を払い、雨が降ったらすぐに離れるようにしましょう。

そもそも川は危険!

日本中どこにでもある身近な存在の「川」ですが、実は危険がいっぱいです。穏やかそうに見える川でも、流れの速い場所や急な深みがあったり、水温が冷たかったり……と、あちこちに危険が潜んでいます。

そんな川の危険性とライフジャケットの重要性について、岐阜県のサイトが大変詳しく参考になります。また、河川財団のハンドブックもとても参考になります。川に遊びに行く予定のある方はぜひ一読を。

川の危険性について(Q&A)/ 岐阜県

水難事故等に関するQ&A(よくある質問)/ 岐阜県

水辺の安全ハンドブック/河川財団

参考:川遊びは危険がいっぱい!親が絶対に知っておくべき注意点をまとめて紹介!/Greenfield

日本ライフセービング協会 e-Lifesaving <事前学習> 川編

短くて流れが急な日本の川/国土技術研究センター

危険な生き物に注意! ~ 海編 ~

カツオノエボシ

海の餃子と呼ばれるクラゲの一種。海岸に打ち上げられた姿はまるでプラスチックごみの様。毒のある触手をうっかり触ったり踏んでしまうと、電気ショックを受けたような激痛が。炎症を起こした患部にはミミズ腫れが生じ、刺された痛みが数時間続きます。

アンドンクラゲ・アカクラゲ

一度刺されても大事に至るほどではありませんが、複数回に渡って刺されるとアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があります。万が一刺されてしまった場合は、刺された所を擦らずに海水で洗い流すこと。真水をかけると悪化するのでNG。

イソギンチャク

イソギンチャクは触手に刺胞と呼ばれる毒針を持っています。ほとんどの種類のイソギンチャクは人間にとって大きな影響を与えない程度の毒しか持っていませんが、一部に強い毒を持つ種類もあるため、むやみに触らないようにしましょう。

ガンガゼ

磯遊びをしていると潮溜まりのなかにいるウニに気が付かず、踏んだり触れてしまうことが。ガンガゼというウニの長いトゲには毒があり、細くて折れやすいので取り除くときにも注意が必要。

オコゼ

ハオコゼは磯で多く見られる小型のカサゴの仲間。赤みを帯びた体色が愛らしく触ってみたくなりますが、背びれのトゲに毒があり、刺されると激しく痛みます。また、沖縄方面に行くと極めて強い毒をもつオニダルマオコゼという大型種もいます。岩に似た見た目でうっかり踏んでしまう事故が多く、死亡例もあります。

そのほかにも、毒をもつアカエイやヒョウモンダコ、ゴンズイなど、海には危険な生き物が身近なところにいます。それぞれの地域や季節によって危険生物も違うため、事前によく調べておくようにしましょう。

参考:海水浴・磯遊びで見かける危険な生き物の対策と対処法/浜松市エネフィブログ

【PDF】海の危険な生き物/葉山町

危険な生き物に注意! ~ 川編 ~

ヘビ

本州の河原で出会う毒蛇はマムシとヤマカガシです。どちらも基本は臆病なので踏みつけたり捕まえたりしなければ噛んでくることは少ないでしょう。

スズメバチ

6月から10月は多くの働きバチが活動する時期。もしスズメバチを見かけたら、手で払ったりすると逆に攻撃をあおることになるため、走って逃げたりせずに落ち着いてやり過ごすのが適切。

参考:川遊びの注意点!リスクを知って親子で安全に楽しもう!/身近な自然の楽しみ方

天候の変化に注意!

夏場は山間部で天気が急変して大雨が降ることがあります。天気予報で「大気が不安定」、「上空に寒気が入っている」と見聞きするときは川のレジャーは控えましょう。たとえ自分たちがいる場所の天気が良くても、上流域で雨が降っていると急に川の水かさが増すなどの恐れがあります。前日に大雨が降ったときなども要注意です。

熱中症に注意!

夏のアウトドアで一番注意が必要な熱中症。定期的な水分補給で予防してください。水分補給のポイントは「のどが渇く前に飲む」こと。30分から1時間おきに水やイオン飲料を飲みましょう。

海や川に限らず、小さな子どもは体調の異変をうまく伝えられないということを知っておきましょう。顔が赤くなっていたり、ボーッとしていると気づいたら熱中症を疑い、すぐに涼しい場所へ移動させ、体を冷やしたり、水分補給の対処を。

強い紫外線による日焼けに注意!

海辺や川での紫外線は、水面への照り返しの影響で強力です。子どものデリケートな肌を守るために、紫外線対策をしっかりと行いましょう。

マスクをつけたままに注意!

熱中症リスクが高まるとされるだけでなく、もし、マスクを着用したまま水に落ちると、マスクをしていないときより溺れて命を落とす危険性が高まります。これはマスクが濡れると水を吸収して顔と密着するため。どんなに水深が浅くても、水に入って遊ぶときは必ずマスクを外しましょう。

参考:熱中症リスクだけじゃない ~水辺でのマスクは危険 その理由は/NHK事件記者取材note

浮き輪やフロートに注意!

主に海で使う浮き輪やフロートなどの大きな浮き具は、思っている以上に風の影響を受けやすいため、手を離さないように。対象年齢が合っているものを選ぶことも大切です。海上保安庁によると、平成 30年中の事故の中には陸からの風(オフショア)によって、フロートに乗った子どもが沖へ流された事例が複数見られ、4歳児が溺れて中等症(生命の危険はないが入院を要するもの)になった事故も発生しています。フロートに乗って子どもが流されてしまうと自力で帰還することは難しく、大変危険です。

参考:フロートで楽しく遊ぶために/海上保安庁

海・川のレジャーのリスクは、こうして防ごう!

服装や水着の色でリスク回避

水着は、万が一水に沈んでしまった時に備え、水中で目立つ色がおすすめです。調査によると、蛍光イエローやオレンジなどのネオンカラーが一番良いとされています。水の中で見えずらくなる青色系や、影に見えてしまう暗い色などは避けるとよいでしょう。

また、日焼けや水中での冷え対策やケガ防止の為、帽子、長袖のラッシュガードの着用もおすすめします。

参考:「子どもに青の水着は買わないで」危険を避けるために知っておきたい水着の色の重要性/HUFFPOST

しっかり装備でリスク回避

水際での遊びの後は体が冷えていることがあるため、着替えに長袖の服も入れておくのが◎。サンダルは歩きにくく、流されたり、岩や石で足をケガする恐れがあるため、マリンシューズがあると便利です。また、水辺で遊ぶ際にライフジャケットを着用することで安全性が飛躍的に高まります。子供が溺れるときは、意外と静か……これが溺水反応です。漫画『SPY×FAMILY』にこの溺水反応が出てくるシーンがありましたが、近くにいても全く気づけないということもあり得るため、ライフジャケットを着用しているかが生死を分ける要素になります。ライフジャケットを無料で貸し出すレンタルステーションを実施している海水浴場もあるので、調べてみるといいでしょう。

用意しておくとよいもの:タオル/マリンシューズ/グローブ(軍手)/ライフジャケット/飲料水やスポーツドリンク日焼け止め/消毒薬と絆創膏/虫除けスプレー/テントやサンシェード、レジャーシート/防水パック入り携帯電話/保険証

参考:“静かに”溺れる?夏休みの水遊びに潜むリスク/NHK

海水浴場利用でリスク回避

海水浴場以外の海には入らない。これが海でのリスクを回避する一番のポイントです。海水浴場は遊泳区域が設定され、監視員やライフセーバーが配置されるなど、安全対策がなされている場所です。

反対に海水浴場以外の海は、水深が急に深くなっている場所、岸から沖への強い流れ(離岸流)が発生しやすい場所などがあり大変危険です。また、監視員やライフセーバーが不在なため、万が一事故が発生しても、救助までに時間がかかる可能性があります。少しでも海に入るのであれば、ライフセーバーや監視員等がいる海水浴場を利用しましょう。

「危険を示す掲示板」があるところは避けてリスク回避

海や川などの水辺には「危険を示す掲示板」が設置されている場所があります。一見、危険は無さそうに見える場所でも、何らかの理由があって「危険を示す掲示板」が設置されています。そうした警告のある場所では、絶対に水に近寄ってはいけません。

天気・気象情報の事前チェックでリスク回避

遊びに行く場所の天気予報は必ずチェックしましょう。天気に加え、海ならば風の強さや波の状況(波の高さや干潮、満潮の時間帯など)、川なら上流の天気予報も調べておくとよいでしょう。釣りやサーフィンをする人向けの天気情報サイトが情報がまとまっていて便利ですよ。

参考:海天気.jp

アウトドア天気.jp

また、リアルタイムの雨雲や雷などの状況は気象庁の雨雲レーダーで確認することができます。海の場合は洋上に台風がないか、波の高さに「うねり」というワードがないかもチェック。このような条件にあるときは、海のレジャーは控えたほうがよいでしょう。

川遊びは雨・ダムに注意してリスク回避

前述しましたが、日本の川は雨が降ると一気に水かさが増す傾向にあります。河原一帯が水没することもあるため、雨が降ってきたらすぐに川から離れるようにしましょう。

また、上流にダムがある川の場合、ダムからの放流によって川が増水することがあります。事前にダムの存在を知っておくことが水難事故の予防につながります。ダムは放流の前に放流を知らせるサイレンが必ず鳴ります。このサイレンが鳴ったらすぐに水から離れ、高所に移動しましょう。

入念な準備&無理のない計画でリスク回避

夏は天候が急変することがよくあります。また、急な怪我などのアクシデントが発生する可能性もあります。その点を考慮して、トイレの場所や避難施設がどこにあるのかなど事前によく調べ、余裕のあるスケジュールを立てましょう。

子どもと一緒に遊んでリスク回避

子どもは危険が近づいていても察知することができないので、小さな波や川の流れでも思いがけず足をすくわれ、溺れることがあります。大事なのは「目を離さない」ではなく「一緒に遊ぶ」こと。目の届く範囲にいるからと安心してスマホをいじったりしていると溺れていても気付きません。子どもと寄り添って一緒に遊ぶことで事故を防ぐことができます。

「e-Lifesaving」をチェックしてリスク回避

日本ライフセービング協会が開設する特設サイト e-Lifesaving は、水の事故から身を守る方法について、イラストやクイズで子どもにもわかりやすく紹介しています。動画でライフジャケットの正しい着用方法や、水のなかで仰向けに浮いて救助を待つ方法なども紹介しています。海や川など水辺に遊びに行く前にはぜひチェックしてみてくださいね。

参考:野外レジャーに潜む災害リスク!海、山、川別押さえておきたいポイント/防災ニッポン

子どもと一緒に夏のレジャーを楽しむ!気をつけておきたい海・川・山に潜む危険/NHK

外出先での子どもの水の事故にご注意ください!/神奈川県

【STOP!水難事故】海・川で安全に遊ぶための6つのポイント/Gakkenキッズネット

まとめ

梅雨が明けて夏が近づいてくると、水辺のレジャーが楽しい季節到来です。しかし、毎年水難事故に関するニュースを目にすることも確か。必要以上に水辺で遊ぶことを怖がる必要はありませんが、事前に知っておくべき注意点をお出かけ前に、しっかり頭に入れておいて、思いっきり楽しい夏の思い出を作りたいですね。 文/Ai Kano

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