“サプリ感覚”脳の状態とマッチしたeスポーツで認知症予防を目指す 産学連携

脳波を読み取る帽子型ウェアラブル端末=30日、東京都江東区の東京ビッグサイト

ビデオゲームをスポーツとしてとらえた「eスポーツ」と脳波データを高齢者の認知症予防に役立てるプロジェクトをNOK(エヌオーケー)とリトルソフトウェアが発表した。簡易的な装置で脳波を測り、脳の状態に合ったゲームを提案することで認知機能の低下を食い止めたいという。今後は実証実験を重ねて、脳科学に詳しい九州産業大学准教授の萩原悟一氏と、西日本工業大学講師の古門良亮氏らが効果検証などに協力する産学連携の体制で実現を目指す。

高齢者の認知症予防にシリアスゲーム(医療や教育など娯楽以外の目的で作られたゲーム)が効果的だとする研究は、eスポーツがブームになる前から行われてきた。レースゲームでは、画面を見ながらコントローラーを操作し、さらに先の展開を予測するマルチタスクの能力が求められる。そのため、普段の生活よりも脳の活動が活発になり、認知機能の低下を防ぐと考えられている。

しかし、NOKで高齢者向けeスポーツのプロジェクトを推進する加藤博巳氏は、eスポーツと認知症予防の関係をサプリメントと健康管理に例えてこう指摘する。

「もし身体にビタミンDが足りていなかったら、ビタミンDのサプリメントを摂取するのが効率的でしょう。eスポーツが認知症予防につながると期待されているからといって、ゲームのジャンルやタイトルを吟味せずに高齢者に遊んでもらうことは、常にマルチビタミンのサプリを飲むようなものです」

NOKとリトルソフトウェアは2~3月、大阪府東大阪市で高齢者向けにeスポーツの実証実験を実施。リズムゲーム、スポーツゲーム、レースゲームで遊んでもらい、帽子型のウェアラブル端末で脳波を測ったところ、ゲームの種類によって右脳と左脳が異なる反応を示す傾向があることが分かった。例えばスポーツゲームでは、他のメンバーとの一体感が生まれるゲームを使用したことから、計算や論理的思考力を司る左脳よりも感情にかかわる右脳の活動が活発になったと考えられるという。

こうした結果をもとにNOKとリトルソフトウェアは、脳波データから衰えていると思われる脳機能を見つけ出して、ピンポイントで活性化させるようなeスポーツを提案することで高齢者の認知症を予防するプロジェクトに着手した。帽子型のウェアラブル端末を装着するのに「5秒」、計測完了まで「3分」で、参加するハードルを低くしたのが特徴だ。

同じゲームで遊んでも、右脳と左脳の反応が個人ごとに異なることもあり、今はより多くの脳波データを集めて研究することが課題だという。NOKの木村泰介氏は「今後も自治体に協力を呼びかけていく」と話した。

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