那須雪崩事故、県の賠償判決確定へ 高体連、遺族も控訴せず

記者会見で控訴しないことを明らかにした阿久澤教育長(左端)=30日午後4時40分、県庁

 栃木県那須町で2017年3月、登山講習会中だった大田原高山岳部の生徒7人と教諭1人が死亡した雪崩事故を巡り、5遺族が県や県高校体育連盟(高体連)、講習会の責任者だった教諭ら3人に損害賠償を求めた訴訟で、県と県高体連は30日、計約2億9千万円の賠償を命じた宇都宮地裁判決について控訴しない方針を表明した。遺族側も控訴しない考えで、地裁判決が確定する見通しとなった。

 阿久澤真理(あくさわしんり)県教育長は30日、県庁で記者会見し、「判決内容を厳粛に受け止め、控訴しないことが適当であると総合的に判断した」と表明。「3教諭の過失で県が賠償責任を負うとされた判断を重く受け止める」と述べた。

 29日に教育委員会の臨時会を開いて意見をとりまとめ、30日午前に福田富一(ふくだとみかず)知事と協議し、控訴見送りを決めたという。遺族側が判決直後に控訴しない方針を明らかにしたことも、判断材料になったとした。

 教諭ら3人に賠償金の負担を求めることについては、「判決でも触れられておらず、現時点では考えていない」とした。

 県などは訴訟で、死亡した引率教諭は自身の生命を守る判断ができたはずとして過失相殺の適用を主張したが、判決で退けられた。一方で3人に「重い過失があった」とする遺族側の主張への言及もなかった。阿久澤氏は「われわれの主張はおおむね認められた」との見解を示し、判決を「妥当と判断した」と説明した。

 今回の民事訴訟に関わらなかった遺族への賠償に関しては、「大きな課題だと思っている。意向を確認して対応を考えていく」と述べた。

 福田知事と県高体連の吉成卓(よしなりたかし)会長は同日、それぞれ「重く受け止める」などとするコメントを発表。犠牲者や遺族らに謝罪したほか、事故の再発防止などに取り組む考えを示した。

 28日の地裁判決は県と県高体連の過失を認め賠償を命じた一方、教諭ら3人については国家賠償法の規定に基づき請求を棄却した。

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