有機米普及は給食から 転換掲げる自治体相次ぐ 面積拡大へJAと連携

給食向けに栽培する稲の生育を確認する鈴木所長(左)ら(茨城県常陸大宮市で)

学校給食に地元産の有機栽培米を導入する動きが、全国の自治体に広がっている。国は将来的に有機農業を大幅に拡大する目標を掲げる。有機農業を推進する自治体も増えており、その核となる目標として給食への提供を掲げている。JAが全面的に協力する例もある。

茨城県の常陸大宮市はJA常陸と協力して2027年度から、小・中学校15校の給食の米を全て有機米にする方針。23年度はJAの子会社、JA常陸アグリサポートと農家1人が3・9ヘクタールで有機栽培。10月下旬から9トンを供給する予定だ。

市内15校の米の使用量は年間約37トン。15ヘクタールでの有機栽培で実現する。将来的に給食向けの全面積で有機JAS認証を取得する予定だ。同社の鈴木康成大宮営業所長は「有機栽培は難しい部分もあるが、子どもたちのために取り組みたい」と話す。

鈴木定幸市長とJAの秋山豊組合長が子どもたちにより良い食材を提供したいと考え、主導する。22年度はジャガイモやニンジンなど6品目計4トンを有機栽培して提供した。

兵庫県豊岡市はJAたじまと連携し、27年度までに市内の全小・中学校で給食の米を全量有機栽培米にする方針だ。23年度は3学期の給食で有機栽培米を提供する。同市は有機農産物の栽培面積・戸数の拡大を掲げ、有機農業を推進している。

京都府亀岡市は、23年度、学校給食向け有機栽培米の確保に向け、生産者から対象の米を精米30キロ当たり2万4000円で買い取る。27年度までに、全小学校の給食の米の半分を有機栽培米とすることを目指す。給食への提供で有機農業の拡大をてこ入れしたい考えだ。

有機農業を推進する千葉県木更津市では22年度、市内30校の小・中学校給食での有機米の割合を53%に高めた。19年に農家5戸やJA木更津市などとプロジェクトを発足。23年度は14戸25ヘクタールに広がる。年4回の栽培研修を行い、所得向上や新規参入を後押しする。市は26年度に提供率100%を掲げ「達成後は市外にも売り込みたい」(農林水産課)と話す。

全国組織が発足

有機農産物の学校給食を広めようと6月に全国組織も発足した。全国32市町村とJAや生協などが参加する「全国オーガニック給食協議会」だ。

事務局を務める、千葉県いすみ市は「給食への提供を起点として有機農業を広げることができる」(農林課)と意義を強調。「教育や農業振興、移住促進などへの波及効果が大きく、地方創生にもつながる」と広がりに期待する。 小林千哲、志水隆治、北坂公紀

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