【坂東三十三観音を解説】”争いの世を治めたい”頼朝から始まった関東のお遍路

坂東三十三観音とは、1都6県をめぐる関東エリアのお遍路のことです。

そしてお遍路とは、願いを叶えるための巡礼。叶えたい願いを胸におこし、願いとともにお寺をめぐり、巡礼することで願いが叶うとされる、お坊さんによる修行のことです。

お遍路文化ができあがったのは近畿地方ですので、現代社会のような交通インフラがない世界では、今よりも断然時間がかかったことだとおもいます。

ここでは関東エリアでできるお遍路「坂東三十三観音」について深掘りしていきます!

坂東三十三観音の巡り方

発願印が頂ける杉本寺

坂東三十三観音は、まずは願いを起こすことから始まります。一番最初に願いを起こすことを発願〈ほつがん〉といい、33ヶ所の巡礼を終えて願いがかなうことを結願〈けちがん〉といいます。

巡礼する正しい順番が一応あるのですが、どこで願いを起こしてもよく、どこで願いをかなえてもいいようです。

坂東三十三観音専用の納経帳があるのですが、1ページ目に発願印・最後のページに結願印を押したいなら、1ヶ所目に「杉本寺」・33ヶ所目に「那古寺」となるような参拝プランをたてましょう。

ちなみに、33ヶ所全ての巡礼を終えている場合のみ、那古寺に御朱印帳を郵送することで、結願印をいただけるそうです。

  • 那古寺:〒294-0055 千葉県館山市那古1125

澤村巡礼ルートは基本自由!始まりと終わりのお寺は要チェックです## 坂東三十三観音の一覧と地図

始まりは鎌倉の杉本寺、終わりは千葉県の那古寺!

1. 杉本寺 〈すぎもとでら〉 :神奈川県鎌倉市二階堂903【発願印】 2. 岩殿寺 〈がんでんじ〉 :神奈川県逗子市久木5-7-11〉 3. 安養院田代寺 〈あんよういんたしろじ〉:神奈川県鎌倉市大町3-1-22〉 4. 長谷寺 〈はせでら〉 :神奈川県鎌倉市長谷3-11-2〉 5. 勝福寺 〈しょうふくじ〉 :神奈川県小田原市飯泉116〉 6. 長谷寺 〈はせでら〉 :神奈川県厚木市飯山5605〉 7. 光明寺 〈こうみょうじ〉 :神奈川県平塚市南金目896〉 8. 星谷寺 〈しょうこくじ〉 :神奈川県座間市入谷3-3583-1〉 9. 慈光寺 〈じこうじ〉 :埼玉県比企郡ときがわ町西平386〉 10. 正法寺 〈しょうぼうじ〉 :埼玉県東松山市岩殿1229〉 11. 安楽寺 〈あんらくじ〉 :埼玉県比企郡吉見町御所374〉 12. 慈恩寺 〈じおんじ〉 :埼玉県さいたま市岩槻区慈恩寺139〉 13. 浅草寺 〈せんそうじ〉 :東京都台東区浅草2-3-1〉 14. 弘明寺 〈ぐみょうじ〉 :神奈川県横浜市南区弘明寺町267〉 15. 長谷寺 〈ちょうこくじ〉 :群馬県高崎町白岩町448〉 16. 水澤寺 〈みずさわでら〉 :群馬県渋川市伊香保町水沢214〉 17. 満願寺 〈まんがんじ〉 :栃木県栃木市出流町288〉 18. 中禅寺 〈ちゅうぜんじ〉 :栃木県日光市中善寺歌ヶ浜2578〉 19. 大谷寺 〈おおやじ〉 :栃木県宇都宮市大谷町1198〉 20. 西明寺 〈さいみょうじ〉 :栃木県芳賀益子町益子4469 21. 日輪寺 〈にちりんじ〉 :茨城県久慈郡大子町上野宮字真名板倉2134 22. 佐竹寺 〈さたけじ〉 :茨城県常陸太田市天神林町2404 23. 正福寺 〈しょうふくじ〉 :茨城県笠間市笠間1056-1 24. 楽法寺 〈らくほうじ〉 :茨城県桜川市本木1 25. 大御堂 〈おおみどう〉 :茨城県つくば市筑波748 26. 清瀧寺 〈きよたきじ〉 :茨城県土浦市大字小野1151 27. 円福寺 〈えんぷくじ〉 :千葉県銚子市馬場町293 28. 龍正院 〈りゅうしょういん〉 :千葉県成田市滑川1196 29. 千葉寺 〈せんようじ〉 :千葉県千葉市中央区千葉寺町161 30. 高蔵寺 〈こうぞうじ〉 :千葉県木更津氏矢那1245 31. 笠森寺 〈かさもりでら〉 :千葉県長生郡長南町笠森302 32. 清水寺 〈きよみずでら〉 :千葉県いすみ市岬町鴨根1270 33. 那古寺 〈なごじ〉 :千葉県館山市那古1125【結願印】

澤村鎌倉には杉本寺、安養院田代寺、長谷寺の3つがあります!

https://kamakura-life.net/hasedera/

坂東三十三観音の豆知識

坂東三十三観音などに使われている「三十三」とは、観音さまが人の悩みに応じた数です。

“33カ所の観音様が安置されている場所を巡るから”と間違いやすいですがそういうことではなく、人々の悩みに応じた観音様のお姿からきています。

すなわち、人々の悩みに対して、33の体裁で応じてきたのです。観世音菩薩が、けっこういい奴だとうかがえます。

【全国の「三十三」巡り】

  • 西国三十三所 〈大阪・京都・岐阜・滋賀・兵庫・奈良・和歌山〉
  • 坂東三十三観音〈千葉・茨城・東京・神奈川・埼玉・群馬・栃木〉
  • 秩父三十四観音〈秩父市・横瀬町・小鹿野町・皆野町〉
  • 四国八十八ヶ所〈香川・徳島・高知・愛媛〉
  • 知多八十八ヶ所〈愛知県の知多半島〉

坂東三十三観音の服装

澤村坂東三十三観音には、決められた衣装と専用の御朱印帳があります。それぞれ見ていきましょう。

引用:坂東三十三観音公式サイト

坂東三十三観音にチャレンジするにあたって、10点の衣装が決められています。巡礼するうえで必要となるアイテムばかりなのですが、現在は「輪袈裟」と「数珠」の2つを最低装備として推奨しています。

1. 管笠 2. 輪袈裟 3. 白衣 4. 手甲 5. 数珠 6. 杖袋 7. 金剛杖 8. 鈴 9. 絆 10. 白地下足袋

杉本寺では首からかける半袈裟も販売しています。

坂東三十三観音の御朱印帳とご朱印帳

引用:坂東三十三観音公式サイト

坂東三十三観音にチャレンジするということは、巡礼場所で写経をしたうえで御朱印をいただくことになります。専用の御朱印帳があるので、事前にネットで購入するか、巡礼地で購入しましょう。

発願印がいただける杉本寺でも「坂東三十三観音」の御朱印帳が販売されています。杉本寺は「鎌倉三十三観音」や「鎌倉二十四地蔵尊」などの巡礼地にもなっていますが、こちらは専用のご朱印帳はなく基本的には巡礼者の自由となっています。

朱印、納経の料金

納経帳(重印含)500円
紙朱印500円
おいずる・白衣朱印のみ 300円
朱印・納経 500円
掛軸(絹紙共)500円
御影100円

杉本寺では御影様のあります。

杉本寺では、発願成就守りの販売も

坂東三十三観音の歴史

源頼朝が平和の祈りをこめて、関東版お遍路誕生

源頼朝は、鎌倉に中央政権を築いた人物です。源頼朝が鎌倉幕府を開いたのを期に、貴族社会から武家社会に変わっていきました。

現在の日本のような中央政府によるコントロールに近いわけですが、当時の貴族社会はエリアごとの権力者がオリジナルの政治を各々展開していたわけです。

鎌倉に幕府という統率を測る機能を置くことで、武家社会は縮小していきました。

源平合戦以降、源氏や平氏といった区分けをせず、人としての供養や平和への願いをこめて、関東版〈当時は坂東〉のお遍路として誕生したのが坂東三十三観音です。

モデルは西国三十三所?

すでに近畿地方にあった「西国三十三所」がモデルという意見から、坂東〈当時の関東〉三十三観音と親しまれ、坂東三十三観音がつくられてから近畿地方のお遍路と似て非なる区別とするため、「西国」と後から付けられたという意見もあるそうです。

西国三十三所が生まれたのが718年ごろ。坂東三十三観音は源頼朝が鎌倉幕府を開いてからですので、坂東三十三観音は鎌倉時代初期につくられたといわれています。

観音さま巡りのルーツ

観音さま巡りのルーツは、1300年前にさかのぼります。

「西国三十三所〈さいごくさんじゅうさんしょ〉」という2府5県〈大阪・京都・兵庫・滋賀・和歌山〉をまたぐ関西の観音さまめぐりがあるのですが、おとぎ話のようなエピソードがあります。

奈良県にある長谷寺〈はせでら〉を建立した、徳道上人〈とくどうしょうにん〉という日本の仏教信仰を広めたお坊さんがいるのですが、病気が原因で仮死状態になってしまった時のこと。死後の世界を仏教では「冥土」といいますが、徳道上人は冥土で閻魔大王さまからの判定をくだされます。

「世の中は罪人が多すぎるから、観音さま巡りで人々を改心させなさい!」このとき、閻魔大王さまからいただいた「宝印」と「起請文」を証拠として、観音信仰を広めていったというものです。

「2府5県の観音さま巡りで改心しよう!」と、パッケージしたものが「西国三十三所」のルーツとされています。

しっかりまとめられてはいますが、よく考えてみるとアニメのような物語です。真実はいかに?といった体裁ですが、『寺門高僧記〈じもんこうそうき〉』という三井寺に伝わる書物によるルーツもあります。

「滋賀県の三井寺〈みついでら〉出身の覚忠〈かくちゅう〉というお坊さんは、75日で33ヶ所の観音さまを巡礼した。」

この寺門高僧記という書物が三井寺出身のお坊さんによる伝記集であることから、当時の観音さま巡りは修行中のお坊さんが33ヶ所巡礼したからいえます。

気になる方はぜひ坂東三十三観音を体験してみてくださいね!

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