台風被害で藻場消え、漁獲量が激減…小田原の漁師とダイバー、復活へ挑戦続く

早熟カジメの苗を藻場礁にくくりつける漁業関係者ら=小田原市の江之浦漁港

 2019年の台風19号で被害を受け、小田原の海から姿を消した藻場を復活させようと始まった地元漁業者とダイバーの取り組みが2年目を迎えた。「命のゆりかご」と呼ばれる藻場が消えたことで魚などが減りつつある中、今月21日には江之浦漁港(小田原市江之浦)付近の海底に人工の藻場礁を設置した。昨年設置した藻場礁からは胞子が飛散した形跡はあるものの、新たな海藻の芽が出ることはなく、関係者は「すぐに結果は出ない。地道に取り組んでいく」と気持ちを新たにする。

 海藻が群生して「海の森」とも呼ばれる藻場は魚や貝類の隠れ家にもなるが、近年は温暖化の影響から藻場が消失する「磯焼け」が相模湾一帯で深刻化している。小田原の海も18、19年の台風被害で大量の海藻が流され、藻場が完全に消えた江之浦漁港ではアワビの漁獲量が激減した。

 豊かな海を取り戻すために結成されたのが、ダイバーと漁師たちによる「小田原藻場再生活動組織」。県水産技術センター(三浦市)で培養した早熟カジメを植え付けた藻場礁4基を昨年6月、江之浦漁港周辺の海底に設置した。

 成長の早い早熟カジメは半年程度で繁殖が可能となり、設置3カ月後の同9月には葉の一部が変色し、繁殖に必要な子嚢斑(しのうはん)ができているのが確認された。子嚢斑から遊走子と呼ばれる胞子が放出され、近くの岩盤で芽を出す見込みだったが、今年2月時点では発芽が確認できなかったという。

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