県内39カ所、土地規制法の指定へ 8月中旬に施行 罰則伴う「機能阻害行為」曖昧なまま

 内閣府は30日、「土地利用規制法」の対象区域を審議する「土地等利用状況審議会」の5回目の会合で石垣、宮古、与那国など沖縄県内39カ所を含む161カ所を指定する案を了承した。新たな指定区域は7月中旬に官報に掲載され、8月中旬から施行されることも決まった。

 会合では「注視区域」「特別注視区域」の区域指定に関して関係自治体に実施した意見聴取の内容を公表した。自治体からは地元住民に向けたパブリック・コメントや説明会を求める意見も挙がっていたが、内閣府はいずれも実施しない方針。一方で区域指定を加速させる姿勢は鮮明にしており、拙速な対応への懸念の声が強まりそうだ。

 「住民の経済活動を含め、さらなる負担を強いるものだ」。会合後、内閣府幹部による記者説明で明らかにされた自治体からの意見の一部だ。自治体名は明らかにされなかったが多くが沖縄県が提出した意見とみられる。

 法律で示された、罰則を伴う「機能阻害行為」についても「明確でない」と定義の曖昧さに懸念も示す意見もあった。

 意見の中で目立ったのは、パブリック・コメントや説明会など、地元住民に十分な説明の機会を設けるよう求める声だ。

 しかし、内閣府は、「個別の問い合わせについては、コールセンターで、それぞれの質問に対応できるようにしている」と回答。内閣府幹部は「分かりやすく広報するために動画配信も考えている」とも説明したが、パブリック・コメント、説明会ともに実施しない方針を明確にした。

 内閣府は記者説明で、パブリック・コメントを実施しない法的根拠については「行政手続法の定めるパブリック・コメントの適用除外規定に該当する」と説明。しかし、除外規定はあるものの、実施の判断は裁量次第であることも記者団とのやりとりで明らかになった。この点について指摘されると、「(法律が)安全保障にかかるものだ」などとし、決定に政府内の恣意(しい)的な判断があったことを示唆した。

 内閣府は、今後、全国約600カ所に指定区域を拡大するとし、2024年度中としていた区域指定の完了時期を23年度中に前倒しする考えも示している。8月以降には、沖縄本島の米軍・自衛隊基地や領土から12カイリ(約22キロ)の領海設定の基準点となる「領海基線」を指定対象とする見込みで、対象となり得る地域の住民には不安が広がりかねない。

 県関係者は、今回の結果について「県内には極めて強い反対意見があり、また県の意見が十分にくみ取っていただいたとは言いがたい」と指摘し、引き続き丁寧な説明を求めた。注視区域の指定などにより、社会経済活動への支障や県民の基本的人権が侵害されることは「決してあってはならない」とも強調し、引き続き法の運用を注視する考えを示した。

(安里洋輔、知念征尚)
 

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